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2022/10/14 11:15

最先端はいいぞ! 使ってわかったApple Watch Series 8を「選ぶ理由」とは

Apple Watchは2015年の登場以来、毎年着実なステップアップを続けてきました。その最新モデルである「Apple Watch Series 8」が今秋に発売。Series 7から進化したポイントなどに触れながら、最新のApple Watch Series 8を使った筆者のインプレッションを報告します。

↑定番モデルの最新製品、Apple Watch Series 8を検証しました

 

Apple Watch Series 8は軽くてコンパクトなのが魅力

アップルは今年、新しいタフネス仕様のスマートウォッチとして「Apple Watch Ultra」も発売しています。Ultraと比較した場合、Apple Watch Series 8の魅力はやはり軽くてコンパクトであり、発売から7年の間にスマートウォッチとしての「使い心地」が徹底的に洗練されていることだと筆者は思います。

 

使い心地についてはこの後に触れる機能の紹介に譲りますが、Apple Watch Series 8のケースはサイズが45mmと41mmの2種類。重量はケースの素材や通信機能によって若干異なりますが、45mmが38.8g~、41mmが31.9g~です。

 

ケース素材はアルミニウムのほか、少し高値になりますがステンレススチールも選べます。ケースのカラーはアルミニウム、ステンレススチールともに4色。ステンレススチールのモデルをベースにしたApple Watch Hermèsもあります。なお、今回は45mmアルミニウムケース、ミッドナイトカラーのモデルを使用しました。

 

通信機能はGPS単体、またはGPSとCellularの両方に対応するモデルを選べます。41mmアルミニウムケースのGPSモデルを選ぶと価格は5万9800円(税込)です。

↑広いスクリーンの隅々にまで文字盤の表示が展開します

 

充電の手間が軽減、直接的なメリットがある「低電力モード」

筆者も長くApple Watchを使っているユーザーです。2021年は発売からほぼ毎日、眠る間もApple Watch Series 7を身に着けていました。Apple Watchと四六時中一緒に過ごしている筆者が、Apple Watch Series 8を使い始めてまず感じたのは、充電まわりの手間が軽減されることによるメリットです。

 

通常使用の場合は「最大18時間」というバッテリー持ちはSeries 7と変わらないのですが、Apple Watch Series 8には新しく「低電力モード」という機能があります。こちらをオンにすると、通常運転の約2倍となる「最大36時間」のバッテリー持ちを実現します。

 

低電力モードはApple Watch本体の「設定」、またはホーム画面を下から上にスワイプすると表示されるバッテリーのメニューをタップしてトグルをオンにすると利用できます。

↑コントロールセンターからバッテリーのメニューをタップ。低電力モードをオンにすると表示が黄色に変わり、画面のトップに小さな黄色い円が表示されます

 

低電力モードの使用中は、Apple Watch Series 8の特徴であるディスプレイの常時表示機能が使えなくなります。低電力モードをオンにしたときに最大駆動時間が大きく伸びる背景には、このディスプレイの常時表示機能まわりで消費されるバッテリーが低く抑えられることに起因しているようです(もちろんそれだけではないと思いますが)。第2世代のApple Watch SEにも低電力モードは搭載されていますが、駆動時間が倍に伸びるほどのインパクトが得られない理由もここにあります。

 

なお、バッテリー残量が10%を切ると、低電力モードをオンにするようにすすめる通知が届きます。再びバッテリー残量が80%まで回復すると低電力モードは自動でオフになります。

 

また、80%以上のバッテリーが回復した後も、最大3日間まで低電力モードをオンにしたままにできる機能もあります。なるべくいつも低電力モードを活用して、充電回数を減らしたい方には本機能が便利に感じられるでしょう。ただ、こちらは「最大3日間までバッテリーを持たせる機能ではない」ので注意してください。

↑低電力モードをオンにする期間は1日・2日・3日から選べます

 

もうひとつ注意したいのは、低電力モードをオンにしている間は心拍数や血中酸素ウェルネスのバックグラウンド測定、ワークアウト開始時のリマインダーが使えなくなることです。またiPhoneが近くにないと通話の着信がApple Watchに届きません。数々の制約が生まれることも踏まえて、たとえば旅行時に充電用のケーブルを忘れてしまったなど、適切なタイミングで低電力モードを使い分けましょう。

 

さまざまな用途への展開が期待できる皮膚温センサー

Apple Watch Series 8には新しく皮膚温センサーが内蔵されました。夜間にウォッチを身に着けている間、センサーがユーザーの手首体温を記録します。

 

データは手首に装着して5日間続けて睡眠を取ったあとから、iPhoneの「ヘルスケア」アプリに記録されます。記録はユーザーの手首体温の「ベースライン(基準値)」から変動した数値のプラスマイナスと、折れ線グラフによる推移で見られます。

 

ただし、「体温」としての計測値は表示されません。体温を正確に測ることができるリストバンド型ウェアラブルデバイス向けのセンサーがまだ市場にないという理由から、アップルは「手首体温」を正確に計測して、いま実現できる最良のユーザー体験を採ったというわけです。

↑iPhoneの「ヘルスケア」アプリに手首体温の変遷がグラフに記録されます

 

基準値から1度以内の手首体温は日常的に想定される変動範囲ですが、これを超えるほど上下した場合は、自身の健康状態に何らかの変化が起きていると推測されます。女性の場合は月経周期の把握にも、手首体温のデータを役立てられるとアップルは説明しています。

 

ちなみに、アップルのデバイスが取得するユーザーの健康やフィットネスに関するデータは、大前提として「ユーザーの許可」が必要。許可が得られた後に、ユーザーのプライバシーが厳重に保護された状態で、アプリやサービスの開発・運用に活用できる、アップルのHealthKitというフレームワークがあります。

 

HealthKitが提供するAPI(ソフトウェアどうしをつなぐインターフェース)を足がかりに、今後はアップル以外の外部デベロッパーも、Apple Watchの皮膚温センサーが取得するデータをセキュアに活用して、ユーザーのために役立つアプリやサービスの開発に力を入れるかもしれません。どのようなサービスが出てくるかまではわかりませんが、今後の展開に期待したいところです。

 

3つのモデルがそろったApple Watch。どれを選ぶ?

これから自分用に“初めてのApple Watch”を買うことを検討している方は、同日に発売された第2世代のApple Watch SEではなく、少し予算を奮発してApple Watch Series 8を選ぶべきだと筆者は思います。その理由は、先に触れた皮膚温センサーのほか、心電図アプリ、血中酸素ウェルネスなど、Apple Watch SEにはない機能を持っているからです。

 

心電図アプリはご存じの方もいるとは思いますが、心臓の鼓動と心拍リズムを記録し、その記録内容から、不整脈の一種である心房細動が起きていないかどうかを調べることができます。海外では重篤な病気からApple Watchのおかげで救われた事例もあるなど、重要な機能といえるでしょう。血中酸素ウェルネスもまた、血中に取り込まれた酸素のレベルを測定して、健康状態を把握できます。

↑Apple Watch Series 8(左)とApple Watch SE(右)

 

また、筆者はwatchOS 9からの新機能である「日本語キーボード」も便利に使っています。これまでもQWERTYキーボードによるアルファベット入力で、スマホを出すまでもないちょっとしたメッセージの返答やスマホが手元にない場合の連絡も可能でしたが、日本語キーボードのおかげでよりスムーズになるのはうれしいはず。これもApple Watch Series 8とUltra、そしてSeries 7でしか使えないハードウェアに依存する機能です。

↑便利な日本語キーボードも新しいSEでは使えない、Apple Watch Series 8の特徴的な機能です

 

Apple Watch Ultraについては先に報告したレビューもぜひ参考にしてください。Ultraの魅力は腕時計としての存在感がApple Watch Series 8よりも格段に強く感じられること。最新機能はソフトウェアアップデートで楽しみながら、何年も愛用したい人におすすめです。

 

対するApple Watch Series 8は、もちろんエレガントなデザインのスマートウォッチとして魅力的なのですが、Ultraと比較すると、コンパクトな本体にアップルの最新機能が入っているという点で、デジタルガジェットとしての色彩が強いデバイスなのだと筆者は感じました。

 

Apple Watchのメインストリームであるナンバリングシリーズは、毎年新しい機種に買い換えて、いつも最先端のスマートウォッチ体験を味わいたいという人もいるはず。今年は特に低電力モードによるバッテリー駆動時間の伸びや、日本語キーボード対応など、待ち望んでいた機能の採用が多く、さらには女性にとっては大切であり、今後への期待もかかる皮膚温センサーの搭載と、最先端を感じられます。その点においても、今年もApple Watch Series 8を選ぶのが正解だと筆者は思います。

 

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