冬のキャベツは、ぎゅっと密集した厚みのある葉が特徴。煮崩れしにくいので、加熱する料理に向いています。ロールキャベツやお好み焼きなど、キャベツが活躍するレシピはたくさんありますが、丸ごと一個買ってしまうと、なかなか消費できないもの。野菜の価格が高騰している今、せっかくのキャベツを余すことなく使いきれるキャベツレシピを、料理家の吉川愛歩さんに教えていただきました。
捨てるところがない! キャベツの有効活用法
キャベツには食物繊維やビタミンC、カリウムが豊富で、1玉食べてもおよそご飯一膳分のカロリーしかない、とても低カロリーな野菜です。また、芯には葉の1.5倍もの食物繊維が含まれているので、芯も捨てずに食べたいところ。
「キャベツの外葉は硬くてしっかりしているので、煮込み料理やザワークラウトのような漬物を作るのに適しています。芯は削ぎ切りにして炒め物に使うか、ロールキャベツのときにはみじん切りにして肉だねに入れるといいですよ」(料理家・吉川愛歩さん、以下同)
保存は乾燥に注意! 長期保存なら “冷凍” がおすすめ
キャベツを丸ごと1個買ったら、使う分だけ切り分け、残りは乾燥しないように気をつけて野菜室で保存しておきます。水分は切り口から抜けていってしまうので、はじめに全部切ってしまうのはやめましょう。また、葉っぱを一枚ずつ剥がして使う方が長持ちします。毎日少しずつ使うなら、剥がして使うのがおすすめ。
「保存するときは、厚手のキッチンペーパーやさらしを濡らしてきつく絞り、キャベツ全体にぴったりと包んでからビニール袋に入れて、野菜室に入れておきましょう。栄養素が逃げないようすぐに食べるのが望ましいのですが、食べきれないときはざく切りにして生のまま冷凍しておけば炒め物にパッと使えて便利です。千切りにしてあるものやカットしたキャベツも売っているので、切るのが面倒な人はこちらをチョイスしてもいいですね」
ではここからはキャベツを1/3量ずつ消費できる3つのレシピを紹介していただきましょう。
カサを減らしていっぱい食べる無限レシピ「キャベツのペペロンチーノ」
1/3のキャベツをフライパンでじっくり炒めていくと、甘みが引き出されてカサがぎゅっと減り、たくさん食べられます。パスタと同じように、にんにくとオリーブオイルで炒めるだけなので、覚えやすいレシピです。
「1/3のキャベツをフライパンに入れたときはけっこうなボリュームなのですが、しんなりしていくと、ぺろりと食べ切れるくらいの量になります。こってり味のおかずにしたいときは、にんにくを少し増やしてもいいですし、お酒と合わせたいときは唐辛子を増やしてピリ辛にするなど、シンプルな材料と作り方でも、味にバリエーションを出せます。お好みに合わせて作ってみてください」
【材料(2人分)】
キャベツ……1/3個(400g)
オリーブオイル……大さじ2
にんにく……1かけ
唐辛子(種を取る)……1/2本
塩……小さじ1/2〜
イタリアンパセリ……適宜
【作り方】
1.キャベツは太めに切る。
「太さはお好みで構いません。千切りにすると前菜にぴったりで、太く切ると食べごたえが出ておかず向きです。芯は先に取っておき、あとで削ぎ切りにします」
2.フライパンにオリーブオイルをひき、スライスしたにんにくと輪切りにした唐辛子を入れて、中火にかける。
「ここでしっかりにんにくの香りが出るまで待ちます。シンプルな料理だからこそ、この一瞬をきちんと待つと、キャベツがにんにくの旨みと香りをしっかり吸って、おいしくなりますよ」
3.フライパンにキャベツを入れ、しんなりするまでしっかり炒める。
「焦げ目がつかないように箸で動かしながら、まんべんなく炒めます」
4.葉全体にオイルがまわったら、塩を加えて炒める。
「塩が入ると水分が出て、そこからまたボリュームが減っていくので、混ぜながらよく炒めます。芯の部分もしんなりと柔らかくなったらできあがりです」
5.イタリアンパセリをざく切りにしてのせる。
「我が家では、メインのおかずがなかなか出せないとき、『先にこれ食べてて!』という最初のおかずにしたり、お肉料理の箸休め的に作ったりしています。オリーブオイルのコクとにんにくの香りが食欲をそそり、キャベツだけなのに満足できる味で、もりもり食べられますよ」
チンして作れるメインのおかず「千切りキャベツの味噌だれ肉巻き」
千切りにしたキャベツに豚バラ肉を巻いて、電子レンジで加熱調理するレシピです。しっかりとした味の味噌だれをつけていただきましょう。
「キャベツを千切りにするのがちょっと面倒ですが、千切りにすると食感がよくておいしいので、ぜひやってみください。たっぷりの野菜を食べている! という感じがするので、ボリュームのわりに罪悪感のないお料理です。キャベツはそれだけだと淡白な味の野菜ですが、お肉の脂と合わせると、途端においしさが倍増します。豚バラをベーコンに変えたり、鶏ささみを薄く広げて巻いたりするのもおすすめです。電子レンジがないご家庭では、お皿ごと蒸し器に入れて蒸してくださいね」
【材料(2人分)】
キャベツ……1/3個(400g)
豚バラ肉(薄切り)……10枚(300g)
味噌……大さじ1と1/2
みりん……大さじ1
酢……大さじ1
ごま……大さじ1/2
【作り方】
1.キャベツを千切りにする。
「キャベツは葉を何枚かにわけ、くるくると巻いてから切ります。面倒でもわけながら切ると、トンカツのときの千切りキャベツもじょうずにできますよ。お肉で巻くとき、キャベツの方向が揃っていた方がやりやすいので、切ったあとはバラバラにせず、そのまま揃えて置いておきます」
2.豚バラでキャベツを巻き、耐熱皿に並べる。
「豚バラにキャベツをどっさり置いて巻いていきます。ぼろぼろと出てしまっても、間に挟んで巻いてしまえば大丈夫。加熱するとお肉が縮まるので、食べるときにはぼろぼろしません」
3.ラップをしっかりして、電子レンジ(600w)で7〜8分加熱する。
「豚バラ肉の厚みによって、加熱時間が変わります。巻いたところをちょっと箸で広げてみて、お肉に赤みがないか確認してみましょう」
4.キャベツから出た水分と調味料を鍋に入れて加熱し、肉巻きにかける。
「できあがると、豚肉とキャベツから出た水分がお皿の底に溜まるので、それをお鍋に入れて、調味料と混ぜて加熱します。ふつふつして、みりんのアルコールが飛んだら火を止めます。お弁当に入れるときは、肉巻きに味噌だれをしっかり絡めて入れるといいですよ」
バブル・アンド・スクイーク風にアレンジ! 「キャベツたっぷりキッシュ」
バブル・アンド・スクイーク(Bubble and squeak)とは、残り物をまとめて焼いたイギリスのいわば “お好み焼き” 。マッシュポテトとキャベツが入るのが特徴です。今回はバブル・アンド・スクイークをパイ生地に入れ、キッシュにしました。
「調味料は塩だけなのですが、たっぷり入れた野菜とチーズやベーコンで、まるでグラタンのような旨みのあるキッシュに仕上がります。型がなければ、丸く伸ばしてその上に具材を乗せて焼いてもいいですし、プリンカップやマフィン型のような小さなもので焼いてもかわいいですよ。熱々でサクサクのパイがおいしいので、冷めたらトースターでリベイクしてみてください。手土産にしたり、お祝いの食卓に乗せたりするのもおすすめです」
【材料(18cmのパイ型)】
キャベツ……1/3個(400g)
じゃがいも……1個(150g)
玉ねぎ……1/2個
ベーコン…2〜3枚(40g)
牛乳……50ml
冷凍パイシート……1枚
シュレッドチーズ……40g
【作り方】
※はじめる前に、オーブンを180℃に予熱しておきましょう。
1.キャベツはざく切りにする。
「炒めてしまうので、キャベツはどんな切り方でも大丈夫です」
2.じゃがいもは一口大に切り、電子レンジ(600w)で6分ほど加熱し、潰す。
「じゃがいもは箸がスッと通るまで柔らかく加熱し、熱いうちにしっかり潰します」
3.フライパンを熱し、キャベツと細切りにした玉ねぎ、ベーコンを炒める。
「フライパンがテフロンなら、油はひかずに炒めましょう。鉄のフライパンであれば、ちょっとバターをひくとおいしいですよ」
4.火を止め、潰したじゃがいもと牛乳を加えて、練るようにまとめる。
「野菜がしんなりして十分に柔らかくなったら、じゃがいもと牛乳を加えます。このふたつがホワイトソースのような役割をしてくれて、全体が一気にお好み焼きのようにまとまります」
5.型にパイシートを敷く。
「野菜の粗熱を取るほどの時間は置かなくて大丈夫なのですが、一呼吸置いてから入れたいので、ここでパイシートを型に敷きます」
6.型に野菜を入れる。
「型からはみ出るほどのボリュームですが、ぎゅっと押して詰め込みます。空洞がない方が食べたときにもおいしいので、しっかり詰めていきましょう」
7.チーズをのせ、180℃に予熱したオーブンで30分焼く。
「チーズはあってもなくてもお好みで」
「こちらが焼き上がりです。オーブンによって焼き色のつき方が違うので、25分を過ぎたらいったん扉を開け、焼き色に偏りがないかチェックしてみます。焼き色にむらがあったら、180℃回転させてから、もう5分焼きましょう。中身には火が通っていますから、色がきれいにつけば完成です」
この3レシピで使い切れる! とわかったら、キャベツを丸ごと一個買う勇気が出るでしょうか。これから寒くなってくると、キャベツの糖度が上がり、ますます甘くておいしくなっていくので、チャレンジしてみてください。
プロフィール
料理家 / 吉川愛歩
出版社に勤務後、ライターとして独立。雑誌や書籍の出版に携わりながら茶懐石を学び、料理家・フードコーディネーターとして活動をはじめる。企業広告や雑誌等でレシピを制作するほか、趣味が高じて『メスティン自動BOOK』(山と渓谷社)や『キャンプでしたい100のこと』(西東社)などでアウトドア料理のレシピを考案。また、誰にとっても読みやすいバリアフリーレシピの書き方を研究中で、編集者・ライターとしても幅広く活動している。『1年生からのらくらくレシピ』(文研出版)や『糖質オフのやさしいお菓子』(ワン・パブリッシング)の制作に携わり、『日本一おいしいソロキャンプ』(KADOKAWA)では執筆とともに調理も担当している。