省エネ関連のソリューションを開発しているパナソニック エレクトリックワーク社は、燃料電池を開発する企業・研究機関に向けた「超音波式水素流量濃度計」の受注を開始しました。
脱炭素社会に貢献するひとつのツールとして開発が進む燃料電池ですが、発電の効率アップや耐久性を上昇させるためには、まだまだ課題があるといいます。超音波式水素流量濃度計は、その課題解決に貢献する商品です。
そもそも燃料電池とは?
燃料電池は水素と空気中の酸素を化学反応させて、電気エネルギーや熱エネルギーを発生させる装置です。燃料電池における発電の過程で発生する物質は水だけなので、環境負荷をかけることなく、電気を得ることができます。
なお燃料電池は、家庭用にも「エネファーム」という形で普及しています。エネファームの場合、空気中の酸素と各家庭に供給されているガスに含まれる水素を反応させて、電気や熱を作っています。この熱は湯沸かしに使えるので、電気に加え、温水も得られるのがエネファームの利点です。
燃料電池開発における課題を解決
現在、より高効率な燃料電池の開発に向け、様々な企業や研究機関が取り組んでいる最中です。そのなかで、ひとつの課題があります。それは、燃料電池中の水素の状態把握が難しいことです。
燃料電池内部で水素と酸素を化学反応させたとき、一度にすべての水素が酸素と反応してくれるわけではありません。つまり、一部の水素が余ってしまうのです。そのため、余った水素を循環させ、再び発電に使用するようになっています。
燃料電池の高効率化を実現するためには、この循環を繰り返すことで余りの水素を減らす必要があります。しかしこれまでは、どれくらいの水素が余っているのかを測る手段が乏しく、ある程度は推測に頼らざるを得なかったため、設計を行うのが難しい状況にありました。
今回パナソニックが開発した超音波式水素流量濃度計は、水素の流量・濃度を高精度で測ることができます。循環部を流れる気体は高温・高湿になっていますが、超音波式水素流量濃度計はそんな環境を苦にしません。しかも、流量・濃度に加えて、温度・湿度・圧力も同時にモニタリング可能です。流量と濃度の同時計測、高湿度環境での計測に対応した商品は、業界初。同社によれば、超音波式ガスメータの開発で培ったノウハウを、本品に活かしているといいます。
これを燃料電池開発に導入することで、動作状況をより具体的に把握できるようになります。いまより高効率な発電をするための、キーになり得る存在です。
多数の企業・研究機関からの問い合わせが集まる
今回発表されたのは、超音波式水素流量濃度計の“受注”ですが、これの開発自体は、2020年に既に発表されていました。その発表時点ですでに、燃料電池メーカー、燃料電池自動車メーカーなどを中心に多くの問い合わせが寄せられていたといいます。そして発表された製品には、その問い合わせから汲み取った要望も活かされているそうです。
燃料電池の普及に向けた課題は少なくありません。本品が、それらの課題を解決する一助となることを期待しましょう。