京セラコミュニケーションシステム(KCCS)は11月9日、フランスのSIGFOX(シグフォックス)社が提供するIoT向けネットワーク「SIGFOX」を、2017年2月から日本で展開することを発表しました。KCCSは基地局などを整備し、IoT向けのネットワークを提供する通信キャリア事業を行うことになります。
現在、私たちはスマートフォンやPCなどの通信機器を使ってインターネットにアクセスしています。しかし、これからは、家電製品や車、さまざまなセンサーなど、いままで通信機能を持たなかったデバイスが個々に通信機能を持って、インターネットに接続したり互いにデータのやりとりを行うIoT(Internet of Thhings、モノのインターネット)の時代がやってきます。総務省の試算では、2020年までに世界で約530億のデバイスがインターネットにつながると予想されています。
しかし、IoT機器、特にセンサーなどが送るデータは非常に小さいもので、スマホやPCが使っているLTEのような高速大容量通信は必要ありません。例えば、水道や電気、ガスメーターの場合は月1回、検針データを送信するだけですし、異常を知らせるときだけ通信するようなセンサーもあります。こうしたメーターやセンサーが送信するデータ量は本当にごくわずかで、今あるモバイル通信料金の価格設定はマッチしません。また、農業などで活用される場合は、電源のない場所で使えなくてはいけません。つまり、IoT向けの無線通信は、低価格で省電力、さらに広域をカバーできなくてはなりません。そこで注目されているのが「LPWA(Low Power Wide Area)」です。
KCCSが展開するSIGFOXは、低価格、省電力、長距離伝送を特長とするLPWAで、すでに欧米を中心に24カ国で導入されています。日本では免許が不要な920MHz帯を利用し、100bpsの速度で通信します(送信のみ)。伝送距離は最大数十キロメートル。通信デバイスは安価で、電池で5年運用できるように作られています。しかも1デバイス(回線)年額100円からという超格安コストです。速度は遅いものの、エリアが広くコストが安いSIGFOXは、主にセンサー類を中心に利用される見込みです。
なお、LPWAにはLTEの「Cat-M」や「NB-IoT(Narrow-Band IoT)」といった規格もあります。こちらはSIGFOXよりも高速ですが、免許が必要な無線方式で、ドコモやKDDIといった携帯電話事業者が展開を検討しています。KCCSの代表取締役社長 黒瀬善仁氏は、SIGFOXはこれらの無線方式よりも「単純化されていて、コスト的にも優位」とアピールしていました。ただ、非常にローコストなので、利益を出すには多くのデバイスで使われる必要があります。黒瀬氏は「数百万台以上のレベルで使われる必要がある」という認識を示していました。
KCCSは本年度、120局程度の基地局を整備して国内のSIGFOXのネットワークを構築し、エンドユーザー向けの具体的なサービスはIoTサービスプロバイダが提供します。2017年2月に東京23区からサービスを開始し、3月には川崎市、横浜氏、大阪市にエリアを拡大。2018年3月までに、政令指定都市を含む主要都市でサービスを展開する予定です。
あらゆるものがネットにつながるIoT時代の到来により、快適で安全な社会になることが期待されています。KCCSが展開するLPWAのネットワークにも注目が集まりそうです。