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2023/4/14 19:30

3メートル半の勝負!実演販売のレジェンド吉村泰助の超絶テクニックに玉袋筋太郎が迫る!!

〜玉袋筋太郎の万事往来
第25回コパ・コーポレーション代表取締役・吉村泰助

 

全日本スナック連盟会長を務める“玉ちゃん”こと玉袋筋太郎が、新旧の日本文化の担い手に話を聞きに行く連載企画。第25回目のゲストは、実演販売のエキスパートを多数擁し、2020年6月24日には東証グロース市場への上場も果たした「コパ・コーポレーション」の代表取締役・吉村泰助さん。客の心を捉えて離さない実演販売のテクニックに玉ちゃんが迫る。

【公式サイト:https://www.copa.co.jp/

 

【玉袋筋太郎の万事往来】記事アーカイブ

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:猪口貴裕)

お客さんの足を止めるには頭の中にはてなを作らなきゃいけない

玉袋 社長が実演販売と出会ったきっかけから教えてもらえますか?

 

吉村 大学で演劇研究会に入ったんですけど、サークル内で代々引き継いでいく伝統的なアルバイトってあるじゃないですか。それが実演販売で、アキハバラデパートでブースを出しているメーカーの営業の方が、うちらの先輩だったんですよ。それでプロの実演販売士の方を手伝うアルバイトをやったのがきっかけです。それで大学4年生の時に、自分から「歩合でやらせてもらえませんか」と頼んでプロになりました。プロになると基本給はないんですけど、完全歩合制になるんですよね。

 

玉袋 俺も今日の対談をするにあたって、まず頭に浮かんだのがアキハバラデパートだったんですよね。総本山じゃないですか。

 

吉村 あの当時は、大体5つぐらいブースが並んでいて、いかがわしい雰囲気を漂わせていました(笑)。デパートって名前が付いてるのに、屋根が付いてないんですよね。今はアトレになりましたけど。

 

玉袋 勤務時間は決まってたんですか?

 

吉村 時代もだいぶ変わってきてるんですけど、僕がアキハバラデパートで実演販売をやっていた時は10時から19時でした。もちろん、お客さんがいない時はしゃべらないので、ずっと働いている訳じゃないですけどね。

 

玉袋 俺は実演販売が終わって、リラックスタイムに入ってるところを見るのも好きだったな。歩合ってのはどれぐらいの割合だったんですか?

 

吉村 当時はお代の20%です。外交員報酬という名目で、5万円売ると1万円みたいな。直接雇用ではなく、業務委託に近かったので、タレントさんと一緒です。

 

――誰でもなれるものなんですか?

 

吉村 そもそも、やりたい人がいないじゃないですか(笑)。よっぽど自信がないとできないですよ。

 

玉袋 口上と実演を両方やるんだから、すごい技術ですよね

 

吉村 最初は先輩の実演口上を現地で学ばせてもらいました。僕は2人の師匠につきましたけど、1人は大卓の大野という人で、30人ぐらいを相手に派手にやる。もう1人はコマシの松という人で、1人ひとり芋づる式にコツコツやるんです。対照的な売り方でしたね。

 

玉袋 いちいち通り名がかっこいいね。独立しての一発目はどうだったんですか。

 

吉村 浅草の松屋百貨店で、催事場のアイディアバザールというところでデビューしました。だいたい1週間で100万円売ると、一人前だねって言われるんですが、デビューは67万円だったのを覚えていますね。

 

――演劇やってる人って他にもいたんですか?

 

吉村 多かったですよ。芸人崩れとか、役者崩れとか、音楽崩れとかが実演販売の道に入るっていうパターンが多かったです。その当時は小劇場が流行っていましたし、大野さんも劇団を持っていました。お芝居をやっていると、人前でしゃべるのも全然恥ずかしくないですしね。

 

玉袋 訪問セールスというのもあるけど、実演販売はこっちからお客さんを拾ってかなきゃいけないから大変ですよね。

 

吉村 お客さんを追いかける訳にはいかないですから、落語家と同じようなものですよね。

 

玉袋 口上を始める前に掴みもあるんですか?

 

吉村 我々は「空卓(からたく)」って呼んでいるんですけど、お客さんはいないけど、実演販売を始めちゃう。実演販売の隠語が「卓を打つ」なんですが、昔はバナナの叩き売りが口上を言いながらハリセンを叩いていたから、そこからきていると思います。それでお客さんがいないで実演販売を始めることを空卓って言うんです。お客さんと言っても単なる通行人ですから、最初は誰もいません。まずは空卓で足を止めなくちゃいけないので、「何をやってんだ?」と頭の中に「はてな」を作らなきゃいけない。あと人間の五感には、鼻や耳など、抵抗できない器官があるじゃないですか。だから音でまず振り向かせて、それで足を止める。そこからがスタートですが、お客さんはいつでも逃げられるように大体3メートル半くらい離れているんです。

 

玉袋 すごい心理戦だ!

 

吉村 空卓では、「何でこうなるのかな?」という疑問を持たせたいんです。後ほど実演販売させていただく商品「超電水すいすい水」を例に出すと、「水なのに汚れが取れる。不思議でしょう?」と。この「なのに」が大事なんですよ。人って疑問が湧いたら絶対に解決したいので、「そこには恐るべき秘密が隠されてる。その秘密を解消するために前のほうに寄ってください」ということを、我々はよくやるんです。

 

――早くに結論を見せないってことですか?

 

吉村 見せないですね。いきなり結論を出したら逃げちゃいますから(笑)。

 

玉袋 どれだけ引っ張って寄せるかってことですよね。

 

吉村 ガマの油売りの人って面白いなと思うんですけど、「切るぞ切るぞ」と言いながら、最後まで切らないんですよね(笑)。それと同じことです。

 

自己重要感を与えることによって、お客さんが与えてくれる可能性も高くなる

――売る商品は自分で選べたんですか?

 

吉村 アルバイト時代は選べなかったですけど、独立したら自分で選べました。

 

――一口に実演販売と言っても、商品にとって得手不得手もありそうな気がします。

 

吉村 顔の人相ってあるんですよ。僕は理科の先生みたいな顔をしているから、洗剤系やクリーナー系になりましたけど、人によっては何となく美味しそうな顔の人もいるじゃないですか。そういう人はキッチン系をやったほうが売れますよね。「非言語メッセージ」って言ってるんですけど、そういうので大体決まると思います。あんまり人の顔って変わらないから、そうすると必然的に得意分野も決まりますよね。

 

玉袋 サクラを使ったり、泣き売(なきばい)をやったりはしないんですよね。

 

吉村 僕もアルバイトを始めるまではサクラを使うんだろうなと思っていましたけど、それはなかったですね。泣き売って、いわゆる泣き落としですよね?

 

玉袋 そうです。「会社が潰れたから」とか「借金を焦がしちゃった」とか。

 

吉村 「娘が小さいので何とか買ってください」とかですよね(笑)。それはしなかったですが、我々の基本は「熱売(ねつばい)」と言って、汗を流しながら一生懸命売ることなんです。

 

玉袋 汗が小道具になってるんですね。

 

吉村 だから、わざと青いシャツを着る人もいるんです。すごく汗をかいて気持ちが悪いと思われる反面、一生懸命頑張ってるんだねというアピールにもなります。

 

玉袋 人間の心理をつくんだね。

 

吉村 あとは「チャラ売(ちゃらばい)」と言って、チャラチャラ冗談しか言わないで売るというテクニックもあります。笑いが起きると財布の紐も緩みますから。ただチャラ売って難しくて、本当にいい人じゃないとダメなんです。

 

――芸人さんは向いていそうですけどね。

 

吉村 芸人さんにも悪い人はいますから(笑)。

 

玉袋 「毒蝮三太夫のミュージックプレゼント」なんてチャラ売の最たるものだよ。物を売る訳じゃないけど、マムシさんはチャラ売の天才だよな。

 

吉村 観衆の方々をいじりまくってますもんね。毒蝮さんのすごいところは悪口を言いながら褒めてるんですよね。だから、いじられるほうも喜ぶんですよね。お客さんも同じです。意外とお客さんって孤独ですから、上手くいじるとサクラになってくれるんです。

 

玉袋 なるほどね。お客さんもいじられて、ちょっと応援してあげようっていう気持ちになって、いつもより首の角度も深くなっていく。それにつられて人も集まってくるもんな。関東と関西ってスタイルは違うものなんですか?

 

吉村 関西は「はげとるやないかい!」みたいな(笑)。

 

玉袋 いきなり、そこから行くんだ。距離の取り方が近いんですね。

 

吉村 それで周りはキャッキャ笑ってますから。同じことを東京でやったら出入り禁止です(笑)。逆に関東では「さすがお客様、お目が高い」と歯が浮くぐらい褒めるんです。

 

玉袋 気持ち良くさせるんだな。話の上手い板長がいるお寿司屋さんのカウンターで食べてるみたいな感じですよね。会話なしでドンって寿司を出されるよりも、対面でしゃべって食べたほうが美味しかったりしますもんね。

 

吉村 我々は「自己重要感」って言うんですけど、誰もが自分をVIPだと思っていますから、自己重要感を与えることによって、逆にお客さんが与えてくれる可能性も高くなるんです。

 

玉袋 社長は昔から、そういう売り方を体系的に考えていたんですか?

 

吉村 コパ・コーポレーション自体は、ちゃんとしたノウハウを作り上げていますけど、会社を始めるまでは感覚というか、無意識でやっていました。売れてる人を見てると、大体共通項があるんですよ。それに注目するとノウハウになっていくんです。2012年に出した『アキバ発! 売(バイ)の極意』という本にも、その一部を書きましたが、育成セミナーでも使っているノウハウです。

 

玉袋 それって実演販売だけじゃなく、何にでも通用すると思うな。

 

吉村 結局、“売る”というのは“伝える”ことなので、芸人さんでも実演販売士でも他の職業でも、人前で何かを伝えたいというのは同じですよね。人間の脳みそって昔からそんなに変わってないですから。

 

インパクトのある芸名を付けるのは掴みが欲しいから

玉袋 会社を立ち上げようと思ったきっかけは何だったんですか?

 

吉村 実演販売士を育成したかったんです。実演販売士自身が会社を立ち上げたら、どうしても「社長が来てください」と言われるじゃないですか。それだと会社も大きくならないですし、ちゃんと育成した人材を送らなくちゃいけない。

 

――それまで実演販売士が多数在籍する会社はあったんですか?

 

吉村 あったにはあったんですけど属人的なワンマン会社でしたね。ちゃんとした組織で、うちみたいに一部上場している会社は今も他にないと思います。そうやって組織的に育成をかけていくには、どうしても育成ノウハウが必要になってくるんです。

 

玉袋 社長が現役時代、ドカーン! と売った記録はどれぐらいですか?

 

吉村 今は弟子に抜かれていますけど、東急ハンズさんで1本1200円のエアコンクリーナーを、手売りで1日100万円売りました。

 

玉袋 すごいなぁ!

 

吉村 テレビ通販だとスチームクリーナーを1日に7000万円ぐらい。

 

玉袋 7000万円!

 

吉村 でも手売りで1日400万円、テレビ通販で1日2億円を売った弟子もいますからね。僕は自分のことよりも、弟子が結果を出したほうがうれしいんですよ。そこにいるヨリー・フジオカは、最近、1日で1億円を売りましたから、もう社長を抜きました。

 

玉袋 すげーな。確かにヨリー・フジオカさんは信頼できる、応援したくなる笑顔だ!

 

吉村 うちの経営理念に「やさしさと感動を売って笑顔と感謝を稼ぎ、みんなのための糧とします」というのがあります。新しい商品を出すにあたって、お客さんがいっぱい買っていただけるような値段にしなくちゃいけないし、驚きや感動もないといけません。我々は、お客さんの目指す目標や、困ってることを埋めてあげる道具を売っているので、笑顔と感謝を稼げれば一番いいんですよね。

 

玉袋 売り逃げじゃないってことですよね。

 

吉村 もうそんな時代じゃないですから。実演販売を始めたころ、僕が売っていたのは真面目な商品でしたけど、周りを見たら「うわぁ……」というのも賞品も結構ありました。覚えているのはアルミ製で四角くて両面で焼けますっていうフライパンがあったんです。それを実演販売のおじさんから買ったお客さんが後日戻って来て、「ここで買ったんだけど、すぐに曲がっちゃたよ」って苦情を言ったんです。それに対しておじさんが言ったのは「叩けば直るんだよ」と(笑)。そんなことを言われたら、もう諦めるしかない。そういうのを我々は「厄ネタ」と言ってるんですけど、売れば売るほど不幸をまき散らす商品です。

 

玉袋 実際、昔の実演販売ってそういうイメージもあったよね。それが、コパ・コーポレーションさんのように会社組織にして、オープンにすることによって、安かろう悪かろうみたいなものが淘汰されている気がしますね。

 

――いつごろから実演販売業界はクリーンになった印象ですか?

 

吉村 やっぱりコパ・コーポレーションのおかげじゃないですか(笑)。その自負はありますし、経済の水準が上がると同時に我々の水準も上がってきたんでしょうね。

 

玉袋 ダメなところは振り落とされて、強いところは残っていく。

 

吉村 厄ネタばっかり売ってるところはなくなりましたしね。

 

――実演販売士の方は何人ぐらい在籍しているんですか?

 

吉村 業務委託と社員も含めて30人ぐらいです。

 

玉袋 実演販売士の名前は誰が考えているんですか?

 

吉村 基本的に僕です。たとえばヨリー・フジオカは本名が頼藤なんですけど、ちょっと覚えにくいということで、名前を二つに割って、ディーン・フジオカさんを文字ったんです。中には納得してない弟子もいるかもしれない(笑)。

 

玉袋 いやいや、俺なんて玉袋筋太郎って名前でどうにか今までやってるんですよ。最初は抵抗があっても、ハンディキャップをひっくり返してやろうという気持ちになるかもしれないしね。

 

吉村 自己申告する弟子もいますけど、ちょっとそれを僕が揉むんです。インパクトのある名前だと、「なんで、そんな芸名なんですか?」って絶対に聞かれるじゃないですか。その時に一掴みしたいんですよね。

 

玉袋 俺の芸名も他に「蟻の門渡り哲也」と「シロマティ」が残っていたんだけど、蟻の門渡り哲也だったら石原軍団から文句をつけられるだろうし、シロマティだったら「カルピス」みたいに揉めるから絶対にダメだと。じゃあ玉袋筋太郎をいただきますって流れだったんだけど、その話で一つの掴みになるもんね。

 

距離を詰められない人は絶対に売れない

玉袋 コパ・コーポレーションさんは自社商品の開発もしているんですよね。

 

吉村 そうです。商品は売れないと価値を見出せないでしょう。ところが日本は技術大国ということで、最初に技術を作る力はあるんですけど、その先にある売ることを考えてないんですよ。我々の考え方は逆で、まず売ることを最初に考えるんです。うちの商品開発で最初に作るのは何かというと、こういう商品だったら実践販売できるねということで、仮の実演トークなんです。その時点で、その商品は実演トークを考えた人の頭の中にしかないし、間違いなく競争相手もいません。そこからメーカーさんを探して、商品はないけど実演販売をして、売れると思ったらサンプルを作っていただいて、それに基づいて実演道具を揃えるんです。

あとは過去の商品で、時代に乗り遅れちゃった商品ってあるじゃないですか。そういうのをブラッシュアップするということもやります。未来志向的商品開発と過去ベースの両方があるんです。

 

玉袋 いやぁ、勉強になるな。自分自身が商品で、自分をどういう風に売っていくかってことだもんね。

 

吉村 芸人さんと一緒で、うちもコンテンツ商売なんですよ。漫才と一緒で、実演販売のトークもコンテンツですから。

 

――商品を売り込みに来る会社もあるんですか?

 

吉村 売り込みに来るところは、大体断ります。やっぱり売れない商品を持ってきますから、それをうちに持ってこられてもという話で。その中でも売れる商品があることはあるんですけど、基本的には「売れないからやめたほうがいいですよ」と言うのも我々の役目なんです。「在庫がいっぱいあるんでしょうけど、それは捨ててください」と。なぜなら売れる商品を我々の力で2倍3倍と売ることはできますけど、もともと売れない商品を売るのは無理ですよと。だから、なるべく分散するようにはしていますけど、長くお付き合いするメーカーさんが多いですね。

 

――商品販売士を名乗れる基準ってあるんですか?

 

吉村 一人前と認めるには明確な基準があって、手売りで1日20万円売ることです。コロナ禍において20万円を売るのはたいしたものですし、なかなか達成できない額なんですよね。僕も若いころ、「どうして20万円なんですか?」って先輩に聞いたんですよ。そしたら、「10万円までは売った人の顔を覚えているけど、20万円になると売った人の顔を覚えていない。そのぐらいじゃないとダメだよ」って言われて、なるほどと思ったんです。

 

玉袋 深いな~。

 

吉村 わざわざ恥を晒して売ってる訳だから、歩合で1日1万円を稼いで喜んでる場合じゃないんです。それに20万円売ると、絶対的な快感があるんですよ。

 

玉袋 中には実演販売に向いてない人もいるでしょう。そういう時は、はっきり向いてないって言うんですか?

 

吉村 こちらから向いてないとは言わないですね。そういう人は食えないから自分で辞めていきます。でも不思議なもので、辛い仕事ですけど意外と辞めないんですよね。

 

玉袋 こういう実感のある仕事は、辛いけど楽しさも大きいんだよね。

 

吉村 僕は地獄をちゃんと見させるんですよ。泥水を飲ませるんですが、地獄がないと天国がないですから。辛い分、売れた時の快感は絶大なんです。

 

玉袋 先ほど芸人崩れもいるって仰っていましたけど、若手芸人のライブで500円ぐらいしかもらえないんだったら、同じ労力を考えると、こっちの商売で勝負したほうがいいよね。

 

吉村 そう考える人もいますよね。うちもオーディションをやるんですが、某お笑い事務所の芸人さんばかり集まったことがありました。でも全員落しました。なぜかと言うと、売れない芸人さんって、スベッているのに、ずっと続けるとか、変な癖を持っているんですよ。

 

玉袋 分かるな。俯瞰で見れないというか、空気を読めないというか。可愛げがあるとか、上の人に取り入るのが上手いとか、そういう技術がないのにやってる奴は、やっぱダメなんだよね。

 

吉村 あと売れてる人ってみんないい人なんですよ。

 

玉袋 それは本当にそう。悪い奴なんて一人もいないよ。

 

吉村 うちの実演販売士も変わってる人はいっぱいいますけど、悪い人はいないんですよね。

 

玉袋 そうじゃないとお客さんからも支持されないんだよね。

 

吉村 見ている人って、すごく敏感なんですよね。実演販売はお客さんも警戒心を持って見ているじゃないですか。お客さんって絶対に人の目を見ないで、爪の汚れ具合とか、髪の毛の跳ね具合とか周辺を見るんです。それで、この人は信用して良いのかどうかを見極めるんですよね。そこで判断したことって意外と正解だったりするんです。

面白いもので、こっち側も騙してやろうと思っちゃうと、なんか顔に出るんですよ。自然と顔が怖くなっちゃうんです。そういう邪な気持ちがなくてやっている人は、スーッとお客さんがついたりする。見えないものなんですけど、感じるものがあるんでしょうね。

うちは「お客様を大切にし、お客様と共に清く正しく美しく成長します」という経営理念も掲げているんですが、実際には清く正しく美しい人間なんていないんですよ。でも成長を諦めた人って顔に出るんです。清く正しく美しくなろうと思ってる人って、やっぱり努力もするし、顔に出ます。そういう人が、お客さんの信頼を勝ち取って売れるようになっていくんです。

 

玉袋 売ってる側もお客さんから見たら福の神に見えるし、買う側も売ってる人から見たら福の神に見えるし、ちょうどウィンウィンになった時が手ごたえを感じる瞬間なんじゃないかな。

 

吉村 仰る通りです。福の神っていい表現で、めでたい人であるべきなんです。めでたくなさそうな人から商品は買わないですよね。

 

玉袋 確かに競輪場とか行っても、嫌なババアの窓口で買いたくないもんな。宝くじで大型賞金を当てた人も言ってたけど、宝くじ売場に行った時は、ふくよかでニコニコしてる人から買うらしいんだ。自分の半径3メートル半にいる人をハッピーにできない奴のところには、人も寄ってこないよね。ちゃんとやっている奴は自然とオーラも出るし、人の輪もできるからね。

 

吉村 我々は「陣寄せ」って言ってるんですけど、売れている人って距離を詰められるんです。これができない人は絶対に売れないんですよ。3メートル半ぐらいの遠巻きから見るのって、いつでも逃げることができるから、檻の中のゴリラを見ているのと一緒なんですよ。だから実演販売士がしゃべっていても言葉じゃないんです。輪の中に入って来て初めて言葉が通じるんです。大道芸の人や猿廻しの人を、たまに観察するんですけど、必ず陣寄せをやってます。そのタイミングって、芸人さんだったら間ですし、句読点を打つところなんですよね。

 

玉袋 本当に社長の話は面白いし勉強になるね! もうなんか言われたら、ここで何か買いますよ。完全に俺は3メートル半以内に入っちゃったね。

 

 

玉袋筋太郎

生年月日:1967年6月22日
出身地:東京都
1987年に「浅草キッド」として水道橋博士とコンビを結成。
以来、テレビ、ラジオなどのメディアや著書の執筆など幅広く活躍中

一般社団法人全日本スナック連盟会長
スナック玉ちゃん赤坂店オーナー(港区赤坂4-2-3 ディアシティ赤坂地下1階)

<出演・連載>

TBSラジオ「たまむすび」
TOKYO MX「バラいろダンディ」
BS-TBS「町中華で飲ろうぜ」
CS「玉袋筋太郎のレトロパチンコ☆DX」
夕刊フジ「スナック酔虎伝」
KAMINOGE「プロレス変態座談会」