今回は、知っておけば役立つ77の寓話が掲載された『座右の寓話』(戸田智弘・著/ディスカヴァー・トゥエンティワン・刊)をご紹介します。寓話とは、イソップ物語のような教訓を教えてくれるたとえ話のこと。「そういえば、こんな話って知っています?」とちょっとした間を埋めてくれたり、子どもに大切な話をする時に使ったり、部下や上司を説得する時に使ったり、自分のモチベーションを上げてくれたり、さまざまなシーンで活用できる寓話を学ぶことができますよ。
それって本当にやるべきこと? を教えてくれる『がんばる木こり』
『座右の寓話』には、THE教訓と思えるようなお話から『太陽と北風』のように一度は聞いたことがあるお話までたくさん掲載されています。その中で私が一番ハッとした寓話は、『がんばる木こり』という話でした。
このお話は、やる気に満ちた木こりが初日に18本の木を倒し、親方にめちゃくちゃ褒められるところから始まります。次の日も早起きをして木を切り始めますが、疲労もあり切れたのは15本。そこから数日間いくら頑張っても初日の18本を超えることができず、最終日には2本も切れなくなってしまうというお話です。最後には、以下のように綴られています。
何といわれるだろうとびくびくしながらも、木こりは親方に正直に報告した。「これでも力のかぎりやっているのです」。親方は彼にこう尋ねた。「最後に斧を研いだのはいつだ?」
男は答えた。「斧を研ぐ? 研いでいる時間はありませんでした。何せ木を切るのに精一杯でしたから」
(『座右の寓話』より引用)
ここからどんなことを感じるでしょうか? 私もついつい目の前の仕事に躍起になって、パフォーマンスがどんどん下がっていくのを体験したことがあります。「この木こりさんと同じ状況だ!」と客観的に見ればわかりますが、頑張っている最中って余裕はなくなりますよね。『座右の寓話』には、解説文も掲載されています。寓話と解説文を読むことでより理解を深めることができますよ。
思わず「最低〜っ!」と声が出た『夫婦と三つの餅』
『がんばる木こり』のようなビジネスに使えるものだけでなく、もっと日常生活の教訓になる寓話もあります。
『夫婦と三つの餅』は、令和ならインスタでコミック化されそうなお話でした。とある夫婦がご近所さんから3つの餅をもらって、1つずつ食べるのですが、残りの1つは「一言でも先に喋ったほうが負け。黙り続けたほうが最後の餅を食べる」とルールを決めます。ある程度はこのゲームを楽しんでいましたが、その日の夜、家に盗賊が入ってきて、さぁ大変! 盗賊は奥さんに乱暴し、家の財をすべて持ち去ろうとしても旦那さんは黙ったままです。たまらずに「餅のために黙っているつもり!?」と叫ぶと、旦那さんは「餅は俺のもの〜」と言って喜んだというのです。
ただ単にこの話を聞いたら「この最低な夫めぇ〜」とか「なんで残り1つを半分にしないのよ!」と思ってしまいますが(笑)、この寓話の解説を読むと新たな視点をもらえます。
この寓話は、過去にしばられず、今ここで正しく決断することの大切さを解いているようにも思える。夫は過去の約束事にとらわれ、大事なものを失うところだった。
過去に決めたことにとらわれてはいけない。
(『座右の寓話』より引用)
この話を覚えておけば、きっと同じことは繰り返さないはず! 餅に限らず、過去に決めていたルールはその都度、最適なものにできるようにしたいです。我が家でも、家事分担など決めているルールがありますが、お互いに守ろうと頑固になっている部分もあるので、これを機に見直してみようと思いました。
どれも2分程度で読める話なので、1日少しずつ読むのにもおすすめ
『座右の寓話』には、他にも『悪者ぞろいの家』や『三年寝太郎』、『子どもをしかる父親』などちょっとした話が77話掲載されています。順番に一気読みしても楽しいですが、2分ほどで読める簡単な寓話なので、1日1話ずつ読み進めるのにもおすすめです。また、寓話はすべて現代語訳されているので、寓話だけをお子さんに読み聞かせするのも◎。一家に一冊あれば、大人から子どもまで楽しめること間違いなしです。
今後、人と直接会う機会も増え、雑談やちょっとした小話のネタが必要になってくる人も多いかもしれません。そんな時には、ぜひ『座右の寓話』を活用してみてください。きっと役に立つ話があるはずですよ!
【書籍紹介】
ものの見方が変わる 座右の寓話
著者:戸田 智弘
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
学べる、使える、寓話は大人の課題図書。古今東西語り継がれる人生の教え77。