1993年の登場以来、数あるランニングシューズの中でも最も歴史の長いロングセラーモデルとして、日本はもちろん、世界のランナーから愛され続けているアシックスの「GEL-KAYANO(ゲルカヤノ)」。これまでにない大幅な進化を遂げたシリーズ30代目の「GEL-KAYANO 30(ゲルカヤノ 30)」の開発の経緯が、発売直前の「GEL-KAYANO 30 Launch Forum in Japan」イベントで熱く語られました。
アシックス「ゲルカヤノ 30」がいよいよ発売開始!
1993年に登場した「ゲルカヤノ トレーナー」を起点に、毎年、様々な進化を続けている「ゲルカヤノ」シリーズは初心者ランナーからベテランランナーまで幅広い層に愛され、その進化もつねに注目されてきました。
そして今回のシリーズ30年の節目を迎えたゲルカヤノ 30は、シリーズ最大級のアップデートが行われました。その開発の過程を、パフォーマンスランニングフットウエア統括部開発部の中村浩基氏、同デザイン部の三宅大希氏、スポーツ工学研究所プロダクト機能研究部の高増翔氏が、それぞれの部門での苦労と、「ゲルカヤノ」への熱い思いを語ってくれました。
ゲルカヤノ30の進化は「4Dガイダンスシステム」にあり
「大幅なアップデートを果たしたのは『ゲルカヤノ』が30周年を迎えるからでしょうか? もちろんそれもありました。しかし今回の本質は、改めてランナーのことを考え、ランニング時にずっと寄り添い続けられるシューズ。その機能こそが、シューズとしてランナーをサポートすることだと再定義したため。『ゲルカヤノ 30』は、それを体現することを目指したシューズです」(中村氏)
ゲルカヤノシリーズは、アシックスを代表する長距離ランニング用の高性能モデルとして、長時間走行してもスムーズな足運びができるようサポート力を高め、足元のぐらつきを抑えるなど、安定性を高めることで多くのランナーをフルマラソン完走に導いてきました。
その歴史の中で、様々な機能改善と知見の蓄積がなされ、これまでは安定性を継承しながら新しい素材や機能を取り入れられてきました。しかし今回は、基軸の安定性とは相反する快適性の両立が開発のコンセプトとなりました。
「安定性を追求する場合、硬い素材で足の倒れを防ぐ、足を固めるアプローチが主流でした。今回の『ゲルカヤノ 30』では、長時間走行におけるランニングフォームの変化に着目し、安定性と快適性の両立を目指しました。その結果として、新たに開発した『4Dガイダンスシステム』の搭載につながっていきます」(中村氏)
「4Dガイダンスシステム」とは、走行距離とともに変化するランナーの動きを研究し開発した複合的な機能構造で、①広がりを持たせたミッドソール、②アーチ部の高反発のフォーム材、③かかと部の適切な傾斜角度、④接地面積を広げたアウトソール。この4つの特徴を組み合わせることで、走行時の変化に適応した安定性と優れた快適性を実現しました。
この「4Dガイダンスシステム」の開発に欠かせなかったのが、同社のスポーツ工学研究所内で実施された走行テストでした。
「今回は硬いゲルをどこにも使っていません。それを実現したのが、長距離を分析してランニングフォームの変化を分析して一つひとつ形状を変えたこと。社外の方にも10km走っていただいたところ『走る前よりも走った後の方が快適性を感じる』と、コメントをいただきました。コンセプトを説明していない方にそう言われて、すごく自信につながった」(高増氏)
デザインも同様に、これまでの「ゲルカヤノ」と比べると、柔らかそうな印象を受けます。
「『カヤノシリーズ』は歴史がありゆえに『カヤノ』らしさをキープしたい声と、機能を大幅にチェンジするのでデザインを変えようという意見があり、1回目のサンプルはどっちなのみたいなデザインになってしまった。私たちとしては『カヤノ』は先進的でベストな素材、ベストなデザインで作っていきたい。機能の大幅なアップに合わせてデザインも大幅にチェンジしていくよう1回ゼロに戻してブラッシュアップしました」(三宅氏)
開発部の中村氏は先々代「ゲルカヤノ 28」から開発を担当。なので、30周年を迎える「ゲルカヤノ」は2ndサンプルまで作り、機能性だけでなくデザインにもこだわりました。
「ゲルカヤノ」シリーズはサステナビリティに関する透明性のある取り組みを行っており、今回のゲルカヤノ 30では温室効果ガス排出量を業界平均より14%軽減しました。製品ライフサイクルにおける(材料調達4.7、製造4.7、輸送0.4、使用0.03、廃棄0.8)10.7kgの温室効果ガス排出量を示すカーボンフィットプリントをアシックスのシューズでは初めて表示することで環境負荷に対する透明性を高めています。
野口みずきさんもゲルカヤノ30の安定性に感動!
今回は特別ゲストに、女子マラソン日本記録・アジア記録保持者で、アテネオリンピック金メダリストの野口みずきさんも登壇。7年前に現役を引退後も、毎日10kmほど走っていたそうですが、ゲルカヤノ 30を履いてからは最低でも13kmから15kmは走っているとのこと。
「安定感がすごいですね。クッション性もすごくいいので、長時間走っても疲れない。7年前に現役を引退した理由が、長年苦しんでいた足の抜け感なんです。抜け感が出てくると、回内(プロネーション)をしてしまいトレーニングを中断、質の高い練習ができなかった。
なので、机の引き出しを開けてこのシューズを持ってタイムスリップして、7年前の自分に『これいいよ。ゲルカヤノ 30!』って。これを履いていたら現役をもうちょっと長く走れていたかもしれない」と笑いも誘ってくれた野口さん。
実はトップアスリートでもクセがあり、「ぬけぬけ病」で苦しんでいる選手も結構いるそうで、野口さんは「そういう選手がジョグの時に矯正用として履くのもありかな」と提案します。
「この安定感、それからクッション性は、やはり手に取って外に出て、走って感じてほしい。履いたら、私たちが言っていたことがすごく分かると思う。楽しいランニングライフをこの『ゲルカヤノ 30』とともに楽しんでいただきたい」とメッセージも送ります。
発売から30年。まさにランニングシューズのトップを走り続けている「ゲルカヤノ」シリーズは、その時代に応じた最新の材料、最新のアシックステクノロジーを持って進化を続けていたアシックスのフラッグシップモデル。シリーズ史上最大級の進化を遂げたゲルカヤノ 30の進化の歴史の新たな1ページを、ぜひ、あなたの目で、手で、そして履いてその進化を実感してください。
撮影/編集部
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