春は青豆のおいしい季節です。スナップエンドウ、そら豆、絹さやなど数ある青豆の中では、“青臭い”“パサつく”などと苦手に感じる人も多いのがグリーンピース。ところが、スープからおつまみまで幅広い調理ができるほか、色鮮やかなグリーンが料理のアクセントになる上、たんぱく質やビタミンB1、食物繊維など栄養価も豊富と、実は優秀な野菜なのです。
今回は、グリーンピースを使う料理も多いフレンチ仕込みのレシピを紹介しましょう。教えてくださったのは、フランス料理の料理教室を主宰する西丸かおりさん。これでグリーンピースが大好物に一変するかもしれません。
この記事でわかること
豆と野菜の良いとこ取り!
実はすごいグリーンピースの栄養価
西丸さんによると、フランスでは、グリーンピースは欠かすことのできない食材だそう。
「フランス人は、グリーンピースが大好き。私がフランス留学時のホームステイ先でよく食べたのは、大量のグリーンピースをベーコンで炒めただけの付け合わせでした。それがとってもおいしいのです。フランスのグリーンピースは『プティ・ポワ』といって、豆が小さく皮が薄いのが特徴です。日本でも同様に、旬の時期に食べるグリーンピースは甘味が強くほっくりしていて、とてもおいしいですよ」(料理家・西丸かおりさん、以下同)
また、栄養も豊富だといいます。
「グリーンピースに含まれるたんぱく質と食物繊維、ビタミンB1は、野菜の中でもトップクラス。ほかにも、β-カロテンやカリウム、鉄分などが含まれ、緑黄色野菜に負けない栄養価があります。ぜひ、楽しんでいただきたい春の味覚です」
生・冷凍・缶詰
グリーンピースの活用方法は?
グリーンピースの旬は、3〜5月です。
「旬の時期にだけ、生のグリーンピースが販売されます。最近では、鞘(さや)から豆だけを取り出した実だけのグリーンピースが手に入ることも。鞘から取り出す手間が省けますが、劣化が早いためすぐ使用する場合のみ購入しましょう。鞘に入っていても鮮度劣化は早いので、早めに食べることが大切です」
旬以外には、冷凍や缶詰でならいつでも手に入ります。
「冷凍グリーンピースは、グリーンピースをたっぷり使用したいとき、缶詰は水切りすればすぐ使用できるので、トッピングに使用したい時におすすめです」
では、苦手な人にとって気になる“青臭さ”の対策は?
「グリーンピースの青臭さの原因となる成分は揮発性。たっぷりのお湯でしっかり茹でると、青臭みを軽減できます。茹でた後は、すぐにザルに空けてしまうとシワになりやすいので、茹でた鍋のまま流しに移し、蛇口から水を少しずつ出しながら冷ますとシワがなく、色鮮やかに仕上がりますよ」
苦手な人も好きになる!
グリーンピースの絶品レシピ3
「グリーンピースの旬のおいしさは、豆ならではの風味とほっくり感や甘み、色鮮やかさ。そして、皮のプチっとした食感です。それらを活かした春らしいレシピを紹介しましょう」
1.「グリーンピースのフムス」
2.「グリーンピースとベーコンと麦のスープ」
3.「グリーンピースのコンフィ」
ミントとクミンがアクセントに! 色合いも春らしい「グリーンピースのフムス」
「『フムス』とは、主にひよこ豆を材料にした中東の伝統料理です。ひよこ豆の代わりに、グリーンピースを使ってアレンジしました。ポイントはクミンシードとミント。もったりとクリーミーなフムスに、クミンやごま、グリーンピースのプチっとした食感とハーブの香りが食べる度に広がり、後を引くおいしさです。山盛りにたっぷり塗って食べましょう」
【材料(4人分)】
・グリーンピース(冷凍) ……200g
〈A〉
・白練りごま……大さじ2
・オリーブオイル……30〜40cc
・塩こしょう……適量
・にんにく……小さじ1
・レモン汁……30cc(1/2個分)
・茹で卵……1個
・白ごま・黒ごま……適量
・クミンシード……適量
・ミント……適量
・バゲット等……4枚
【作り方】
1.冷凍のグリーンピースを沸騰したお湯に入れ、表示通りに茹でて、水気を拭く。
「グリーンピースをたっぷり使うレシピなので、冷凍のグリーンピースを使用するとよいでしょう。青臭さを取り除くには、記載された時間を守って茹でるのがおすすめ。水気は、ぼんやりとした味付けの原因となるため、しっかり取り除きましょう」
2.トッピング用のグリーンピースを少し残し、 1とAをミキサーで撹拌する。
「ミキサーでフムスをすくい上げて、もったりとして落ちない程度まで攪拌しましょう。硬さを見ながらオリーブオイルの量を調節します」
3.バゲット等に塗り、茹で卵を崩したもの、グリーンピース、クミン、ミント、白ごま・黒ごまを盛り付ける。
「フムスはたっぷりと塗り、トッピングの盛り付けにもこだわれば、黄色と鮮やかな緑色の掛け合わせで、見た目にも春を感じるオープンサンドに。卵に塩気が欲しい場合には、塩を振るのもよいでしょう」
4.皿にのせてオリーブオイルをふりかける。
「ぜひ、おいしいオリーブオイルをかけていただきたいです。オリーブオイルも種類がいろいろありますが、通常の料理で使うオリーブオイルではなく、ワンランク上の少し贅沢なオリーブオイルを使うのがおすすめです」
ほっとする、滋味深い味わい!「グリーンピースとベーコンと麦のスープ」
「このレシピは、食べるとほっとする、我が家の定番スープがベースになっています。麦の甘味ととろみが素材のおいしさを引き立てます。押し麦とグリーンピースのプチっと食感も大切にしたいので、食べる時間を計算し、10分前に加えましょう」
【材料(4〜8人分)】
・グリーンピース……100g
・人参……100g
・水……800cc
・玉ねぎ……150g
・鶏顆粒だし……水800cc分の量
・ベーコン……50g
・加熱処理した麦……50g ※ない場合は、麦を茹でたもの
・バター……20g
・ディル……適量
・サラダオイル……大さじ1
【作り方】
1.人参、玉ねぎ、ベーコンを5mm角に切る。
「グリーンピースのサイズに食材をカットすることで、すべての食材を一口で食べることができ、火の通りも均一になりおいしく仕上がります」
2.1と鶏だしを入れて炒め、水を入れて沸かす。
「野菜を油でコーティングし、野菜の水分流出を防ぐことで素材の甘味を引き出します。インスタントのだしは水に直接溶かすのではなく、一度炒めると角がとれまろやかな味わいになります」
3.食べる10分前に麦とグリーンピースを入れて煮る。
「麦は時間が経つと水分を吸ってやわらかくなってしまいます。くたっとした麦もそれはそれでおいしいのですが、まずは麦とグリーンピースのプチプチ感も楽しんで欲しいので食べる10分前に加えましょう。今回はすでに加熱された麦を使用しています。生麦を使用する場合には、事前に茹でておくとよいでしょう」
4.塩コショウで味を整え、ディルを加える。
「さわやかな香りをもつディルは、春のスープにぴったり。スープの湯気とともに、ハーブの香りがふんわり広がり、料理のアクセントになります。具材たっぷり、やさしい味のスープをお楽しみください」
オイルは3回に分けて加える! 失敗しない「グリーンピースのコンフィ」
「高温の油によって短時間で仕上げる『アヒージョ』に対して、低温の油でじっくりと煮る『コンフィ』。入れる素材によって煮る時間が異なるので、油を入れるタイミングを3回に分けましょう。そうすることで油の温度が上がりすぎるのを防ぎ、食材の焦げ付きを防ぎます。にんにくの香ばしさ、グリーンピ—スのホクホクとした食感とやさしい甘味が楽しめます」
【材料(2人分)】
・グリーンピース……50g
・にんにく……薄切り3枚
・オリーブオイル……大さじ1×2回・小さじ1
・アンチョビ……大1/2尾
・塩……ひとつまみ
・レモン……薄切り1枚
【作り方】
1.ミニスキレットにオリーブオイル大さじ1とにんにくを入れて弱火にかけ、うっすらと色づける。
「にんにくの焦げ付きを防ぐため、少し厚みを持たせた1〜2mmほどにスライスします。にんにくの芽は、焦げの原因になるので必ず取り除きます。素材が焦げ付いてしまうと、オイルに臭みが移ってしまいます」
2.オリーブオイル大さじ1と塩、アンチョビのみじん切りを加えて1分ほど煮る。
「アンチョビを加えることで、オイルに塩味と旨みを加えます。オリーブオイルを分けて入れることで、オイルの温度を維持します」
3.オリーブオイル小さじ1とグリーンピースを加えて温める。
「グリーンピースのほっくりさと皮のプチっと感も楽しみたいので、グリーンピースは最後に入れましょう」
4.レモン薄切りを8等分に切り、バゲットなどと一緒にいただく。
「レモンを加えることで、旨みがありながらも爽やかな味わいの春にぴったりのコンフィに仕上がります。コンフィは大人数で食べるとあっという間になくなってしまうので、各自でゆっくり食べられるミニスキレットがおすすめ。今回使用したのは、10cmほどのかわいらしいサイズです」
色鮮やかで、栄養価も高いグリーンピース。とくに旬のグリーンピースのおいしさは、メインディッシュとして食べたくなるほど格別です。レモンや卵など、春らしい色合いの食材と淡い緑のグリーンピースを組み合わせて、見た目にも気持ちが浮き立つような春の食卓を、ぜひ楽しんでください。
Profile
西丸料理教室 主宰 / 西丸かおり
シンプルでクラシックなフランスの家庭料理を学べる料理教室を、東京都世田谷区と横浜市都筑区の2拠点で主宰。慶応義塾大学仏文科在学中に留学したパリのホームステイ先で食べたマダム家庭料理に魅せられ、フランス料理に興味をもつ。その後、広告代理店で勤務しながら服部料理学園アカデミー・デュ・ヴァンで、退社後はル・コルドンブルー東京校にて仏料理菓子を本格的に学ぶ。渡米後、NYピーターカンプス、パーソンズ及びカリフォルニアにて各国料理を学び、N.Yでも料理教室の講師やレシピ開発などを積極的に行う。フードコーディネーター、ソムリエとしてレシピ開発にも多数携わる。
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