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2024/11/4 22:00

蛍光マーカーへの全不満を解決!パイロット「KIRE-NA(キレーナ)」の革新的な構造・インクを徹底解説

あちこちで話を聞く限り、蛍光マーカーをうまく使えない、という人は本当に多い。そしてもちろん、筆者もド下手である。まっすぐに線を引けない、線を引いているうちに太さが変わってしまう、インクが乾く前にこすって紙面と手が汚れるなどなど……とにかく、蛍光マーカーには失敗する要素が多すぎるのだ。そう考えると、そもそも蛍光マーカーできちんと線が引ける方がレアなんじゃないだろうか?

↑だいたいにおいて、蛍光マーカーの線はまっすぐにならない

 

そこへ、パイロットから「太さが変わらない線をまっすぐ引きやすく、手も紙面も汚れない新しい蛍光マーカー」が登場した、という。話半分にしても興味はあるし、もし事実だとしたら、それは間違いなく蛍光マーカーの歴史を変える製品である。どこまで本当なのかを実際に試してみたい。

 

革新的な新・蛍光マーカー「KIRE-NA」

パイロットから2024年10月に発売された「KIRE-NA」(キレーナ)が、そのウワサの“もしかしたら歴史を変えるかもしれない蛍光マーカー”である。カラーラインナップは、定番の蛍光ベーシックカラー5色と、目に優しい淡いペールトーンカラー5色の全10色。 

 

外見は、最近のパイロット製品に多い、単色軸にカラーパーツをあしらったシンプルな作りで、第一印象もザ・普通という感じ。見た限り、そこまで凄いギミックが仕込まれているようには思えない。

パイロット
KIRE-NA 全10色
各120円(税別

 

↑太・細のツインマーカータイプだが、太側チップに微妙な違和感が?

 

ラインを引く“太”・文字書きもできる“細”のツインチップ仕様ということで、まずは太い側のキャップを開けると、なにやら見慣れない雰囲気だ。その原因は、チップを挟むように両脇から生えている半透明のパーツ。これが、線の太さを変えずまっすぐ引きやすくするための秘密装備「キチントガイド」とのこと。

↑チップを挟むようにして備わった半透明の「キチントガイド」が、まっすぐ線を引くためのポイント

 

↑使う際には、カラーパーツに親指を乗せるとガイドの水平が取れて、線が引きやすい

 

本当に、誰でもまっすぐ引けるのか?

では、実際に線を引いてみよう。 

 

ペン先を紙に当てると、まずソフトなチップがフニャッとしなるようにして紙に触れ、その直後にキチントガイドが突き当たる。ガイドが両側とも紙に当たっている状態でマーカーを水平に動かすと、なるほど、確かに太さが一定の線がスーッと引けている。

 

何度繰り返しても、常に一定の太さでスーッと引けて、まったく失敗しない。……えっ、これ凄いんじゃない!?

 

↑太さが変わらず安定した線が簡単に引ける!

 

蛍光マーカーの線の太さが変わってしまうのは、ほとんどのマーカーで採用されている斧型チップ(先端が斜めにカットされた、硬いペン先)で書き始める際に、斧の刃にあたる部分が紙に傾いて触れているのが原因だ。

 

だから、書き始めは線が細く、書いているうちに刃先の全域が紙に当たるようになって線が太くなってしまう。最初からチップをまっすぐ紙に当てれば問題ないのだが、とはいえ常にベストな角度で書き始めるのは、地味に難度が高い技術なのだ。

↑従来の蛍光マーカーは、チップが偏って紙に当たると線の太さが変わってしまう。“線が上手に引けない問題”最大の要因がこれ

 

従来にも、チップの傾きを解消するために弾力のあるソフトチップを採用した製品は、いくつか発売されている。この場合、紙にむぎゅっと押し当てることでチップ全域が紙に当たるため、傾きは発生しなくなる。しかし、引く際の筆圧を一定化させないと、結局のところ線は太くなったり細くなったりで安定しないのだ。

 

そこで、その筆圧を安定させるのがキチントガイドの仕事である。

↑ソフトチップがまんべんなく紙に密着し、かつ、必要以上に密着しないようにキチントガイドが支えている

 

↑ガイドを意識すればまず失敗しないので、蛍光マーカーが下手な人でも常に安定した線が引ける。これはかなりすごいことだ

 

どれだけソフトチップへ筆圧をかけても、ガイドの高さまでしか紙に押しつけることはできない。逆に、ガイドが当たるところまで押し付ければ、チップの筆圧は常に同じということになる。 その結果、どれだけ線を引いても常に同じ太さになる、という仕組みなのだ。 

 

↑曲面にフィットするソフトチップは、初回特典のやわらか定規と合わせることで、分厚いテキストにもきれいに線が引ける

 

ソフトチップは曲面に強いという性質も持っている。例えば分厚いテキストなどを開くと紙面がカモメの羽のように曲がって広がるが、柔らかく弾力のあるチップなら、その曲がりに沿って動くため、チップが紙面から外れずに安定して線が引き続けられるのだ

 

ちなみに「KIRE-NA」5色セットには初回限定で、曲面にフィットする塩ビ製のやわらか定規が付いてくる。

↑ガイドのおかげでチップが定規に触れないので、フチのインク汚れを拭き取る手間もない

 

もうひとつ。従来の蛍光マーカーは、チップを紙に押し当てるとダクダクとインクが出て紙に染みをつくってしまうため、どうしても焦って線を引きがち。ところが「KIRE-NA」は、不要な筆圧がかからないため、インクの流量もほどよくセーブされる。だから多少ゆっくりと引いても、インク染みができにくいのである。

 

つまり、チップの傾き・筆圧・インク染みという3つのトラブル要素を気にしなくて良くなったことで、線を落ち着いてまっすぐ引くだけの余裕が生まれるのだ。

 

速乾インクで紙面の汚れをセーブ

「KIRE-NA」のもうひとつのポイントが、新しいインク。

 

新開発の速乾顔料インクは、書いて数秒もしないうちにサラッと乾いてしまい、以降は指でこすってもインク汚れが広がらない。乾くまでの所要時間は紙にもよるが、普通のノートやコピー用紙なら1〜2秒、教科書のようなツルツルしたコート紙でも6〜7秒あれば大丈夫だろう。

↑従来インク(上)との比較。書いて1秒後にこすると、擦れ汚れにハッキリと差が出た 

 

パイロットの速乾インクといえば、超速乾筆ペン「瞬筆」を思い出す方もおられるかもしれないが、これは紙への吸収速度を高めて乾燥スピードを上げたタイプ。

 

対して「KIRE-NA」のインクは裏抜けを防ぐため、そこまで激しく紙に吸い込まれるようにはできていない。メーカー曰く、紙に吸わせつつ紙表面での乾燥効率もアップさせた、いわばバランス型の速乾インクなのだそう。そのため正直、乾燥スピードは「瞬筆」よりもやや遅い感じである。それでも従来の蛍光マーカーと比較するとかなり速いのだが。

↑ボールペン筆記にマーキングしてみたところ。従来蛍光マーカー(上)はゲル・水性ともにじんだのに対して、「KIRE-NA」は水性で多少にじんだ程度 

 

乾燥スピードが速いということは、ボールペンの筆跡の上からマーキングした際に、元の筆跡のインクがにじみにくいという効果も得られる。ゲルインクなどは、いったん乾いたとしても、上からさらに水分(この場合は蛍光インク)が乗ると、じわっと浮き出してしまう。ところが浮き出す前にすかさず蛍光インクが乾いてしまえば、にじんでくるヒマもないというわけ。加えて、にじんできたボールペンのインクでチップ先端が汚れる心配も少ないのも、ありがたいところだ。

 

とはいえ、そもそもにじみやすい水性インクの場合はやはりある程度のにじみはあったので、万全に信頼するのは難しいかもしれない。

↑カラーサンプル。画像上ではペールカラー系がかすれて見えるが、実際はわりときれいな発色をしている

 

細チップも速乾インク採用で利便性アップ

太チップがあまりにも革新的すぎてつい存在を忘れそうになるが、細チップも速乾インクを共有しているため、擦れ汚れの心配なく書けるのはメリットだ。実際、蛍光マーカーは「マーキング+コメント書き込み」という使い方でツインタイプを愛用している人も多いので、やはり細チップはついていると嬉しいのである。

↑マーキングと同色でコメントを記入すると、関係性が分かりやすく、あとから読み返しやすい

 

結論

筆者は資料のチェックなどで蛍光マーカーを多用するが、ひとまず3日ほど使った時点で、今まで使っていた蛍光マーカーから「KIRE-NA」へ完全に乗り換えることを決めた。

 

とにかく優秀なのはソフトチップ+キチントガイドのコンビで、筆者ほど不器用を極めた人間でもフリーハンドでまっすぐな線が引けたのは、最高としか言いようがない。特に、インク染みが広がる心配もなくゆっくりとマーキングできるのが、ここまで使いやすいとは思わなかった。

 

個人的にはすでに蛍光マーカーの歴史は変わったということで、以後のマーキングには「KIRE-NA」を使い倒していくつもりだ。みなさんにも早めの乗り換えをおすすめする。