パナソニックは、6年ぶりのフルモデルチェンジとなる有機ELビエラの新フラッグシップモデル「Z95Bシリーズ」をはじめ、レイアウトフリーテレビやゲーミングネックスピーカー新モデルの体験セッションを実施しました。

会場で発表されたテレビシリーズは、有機ELテレビ2シリーズと液晶テレビ3シリーズの計5シリーズ。ラインナップと発売時期は以下の通りです(価格はすべて税込)。
フラッグシップ 4K有機ELビエラ「Z95Bシリーズ」 6月下旬発売予定
・TV-65Z95B(65V型)……53万円前後
・TV-55Z95B(55V型)……38万円前後
ハイグレード 4K有機ELビエラ「Z90Bシリーズ」 6月下旬発売予定
・TV-65Z90B(65V型)……41万円前後
・TV-55Z90B(55V型)……29万円前後
・TV-48Z90B(48V型)……27万円前後
・TV-42Z90B(42V型)……26万円前後
Mini LED 4K液晶ビエラ「W95Bシリーズ」 6月下旬発売予定
・TV-75W95B(75V型)……38万円前後
・TV-65W95B(65V型)……30万円前後
・TV-55W95B(55V型)……24万円前後
ハイグレード 4K液晶ビエラ「W90Bシリーズ」 6月下旬発売予定
・TV-65W90B(65V型)……24万円前後
・TV-55W90B(55V型)……20万円前後
・TV-50W90B(50V型)……17万円前後
・TV-43W90B(43V型)……16万円前後
スタンダード 4K液晶ビエラ「W80Bシリーズ」 6月下旬発売予定
・TV-50W80B(50V型)……15万円前後
・TV-43W80B(43V型)……13万円前後
新パネルの搭載などで高画質化、Prime Video向けのユニーク機能も
2024年モデルからの位置付けとしては、有機ELテレビでは「Z95A」の後継機がZ95B、「Z90A」および「Z85A」が統合されてZ90Bになります。液晶テレビは「W95A」からW95B、「W90A」からW90B、「W80A」からW80Bへとそれぞれ世代交代する格好です。
このなかで注目すべきは、やはりCES 2025で発表された有機ELテレビのフラッグシップ、Z95Bでしょう。今回、2019年から2024年モデルまで踏襲してきたデザインを一新、6年ぶりのフルモデルチェンジを果たしていますが、これは画質と音質の進化に必要な「意味のあるフォルム」であるとアピールされています。
まずは画質面での進化ポイントをチェックすると、新世代の有機ELパネル「プライマリーRGBタンデム」が挙げられます。
従来の有機ELパネルでは発光層を青/黄(赤+黄+緑)/青の3層構造としていたのに対し、プライマリーRGBタンデムでは赤/濃青/緑/濃青の4層構造を採用し、光の波長を最適化。これによって発光効率が40%向上し、輝度がアップしました。さらに青/緑/赤の光の純度が高まり、広色域化を実現したとのことです。
続いてのポイントが、放熱構造の進化です。
パネルからの放熱を効率よく逃がすことが、発光性能を引き出すうえでは欠かせません。Z95Bでは、独自の筐体・内部構造としてパネル空冷技術「サーマルフロー」を投入することで、放熱性能を高めました。
サーマルフローでは、レーシングカーの設計でも活用される、空気の流れをコントロールする「エアロダイナミクス」技術を応用。空気の流れを見える化する流体シミュレーションを駆使して、何度も施策・検証を繰り返して空気の流れを最適化することに成功したそうです。従来は放熱にあたり空気の乱流が発生してしまっていたところ、通気口の位置と内部構造物の配置を見直すことでスムーズな気流を実現し、その結果として有機ELセルの発光性能が向上しています。

AI映像エンジンは2024年モデルに搭載された「HCX Pro AI Processor MK IIプロセッサ」をベースとしながら最適な画質チューニングを行なうとともに、新たに高画質機能「ダイナミックディテールエンハンサー」を搭載しました。この機能では、独自の映像処理アルゴリズムによって、映像のガンマを微細なエリアごとに調整し、解像感の高い映像を実現します。
さらにパネル制御においても、パネルの発光性能を最大限に引き出す「Bright Booster」を新搭載しました(Z95BおよびZ90Bの65V型/55V型のみ)。仕組みとしては、3次元映像信号解析と温度センサーにより、パネルの発光状態を画素ごとに管理。これを新開発された熱解析シミュレーションの結果をリアルタイムで参照・反映し、独自の電流制御アルゴリズムで有機ELパネルを駆動、高コントラスト化を実現するというものです。
おもしろいところでは、映像モードに「Prime Videoキャリブレーションモード」が追加されました。これは「クリエイターの意図を忠実に再現する、Amazon Prime Videoの視聴に最適なモード」と説明されており、実際にPrime Videoの映像チームが監修したとのこと。映画はもちろん、ライブ、スポーツといったビデオコンテンツに最適な画質に自動調整してくれるので、国内での利用者も多いPrime Videoユーザーには朗報といえそうです。
ゲーム向け機能も充実しており、4K/144Hz VRRやDolby Vision 144Hz対応で、激しい動きもちらつきの少ない滑らかな映像で再現することが可能です。
スピーカー構成は前モデルと同じものの、新デザインで広がりある音場を実現
音質面の進化もトピックです。ラインアレイスピーカー/ワイドスピーカー/イネーブルドスピーカー/ウーファー+パッシブラジエーターという構成はZ90Aと同じですが、Z95Bは新デザインによってこれまで配置できなかった場所にスピーカーを配置することができるようになりました。イネーブルドスピーカーは従来の約2倍となる左右間隔が確保でき、より広がりのある音場を実現しています。

またスピーカーユニットが刷新され、ウーファーは20Wから30Wへと出力アップ&パッシブラジエーターの数を2個から4個(対向配置)とすることで低音を強化しています。
こうしたスピーカーユニットの搭載も相まってか、近年のテレビとしては超薄型ではありませんが、レイヤー構造によって薄く見えるフルフラット薄型デザインとなっています。そのおかげで、テレビを斜めから見ても厚みは気になりませんでした。テレビスタンドはパナソニックが得意とする転倒防止設計で、安心して使用できるのもポイントです。

高次元の映像描写、サウンドは驚くほどの進化を遂げた
実際にZ95Bを視聴することができたのですが、Z95Aと比較しても明るさが向上し、黒が引き締まっていることがわかります。また、色彩が豊かで、グラデーションも鮮やかなのも進化点として見て取ることができました。
高画質なデモ映像だけでなく、地上波放送の映像でも明るさや解像感の向上が感じられます。メジャーリーグの中継では、Mini LEDの液晶テレビにも匹敵するような明るさを実感できました。一方で、暗い映像になると有機ELテレビらしさが表れます。液晶テレビでは暗部が潰れてなにも見えなくなってしまうようなシーンでも、Z95Bではディテールをしっかり描き出してくれました。明暗の表現を高い次元で両立したモデルといえそうです。
もちろん高いレベル同士での比較であり、単独で見ればZ95Aでも満足のいく画質ですが、比べると違いがあることは間違いありません。
そして音質については、画質以上の進化を実感しました。Z95Bは中低域に量感があり、とてもクリアなサウンドに仕上げられています。またサラウンド感も向上しており、画面サイズを超えた広がりある音場を体験できました。これならオーディオシステムを追加しなくても、テレビ単体で十分に楽しめるはずです。
有機ELテレビのハイグレードモデルは前向き設置のスピーカーで高音質に
有機ELビエラのハイグレードモデルとなるZ90Bシリーズでは、最新世代の高輝度有機ELパネルが採用されました(65V型/55V型のみ)。パネル内部の配線構造を見直し、発光性能を向上することで高コントラスト化を実現しています。そして上述のAIエンジンによる画質最適化、ダイナミックディテールエンハンサーの搭載はZ90Bにおいても共通の進化点となっています。

またZ90Aではメインスピーカーが下向きに設置されていたのに対して、Z90Bでは前向きにスピーカーを設置する「フロントパワースピーカー」構造を採用。これにより音が床やテレビ台に反射せず、ダイレクトにユーザーの耳に届くようになりました。さらに、低音を強化すべくウーファー出力を20Wから30Wにアップ、パッシブラジエーターも2個から4個(対向配置)へと増加しています。
Z90AとZ90Bを見比べてみると、コントラストが向上してパキッとした映像になっている印象を受けます。また、こちらも音質の進化が大きく、重心の低いリッチなサウンドが楽しめました。
Mini LED液晶ビエラはエリア分割の細分化で高コントラスト化
4K液晶テレビの新フラッグシップは、Mini LEDバックライトを搭載したW95Bシリーズです。

最大のポイントとして、バックライトエリア制御と信号処理によるコントラスト制御を行なう「Wエリア制御」の進化が挙げられます。W95Bでは、Mini LEDバックライトのエリア分割数を最大で約2.5倍に細分化しており(従来比、画面サイズで異なる)、これまで以上に光らせたい範囲だけを光らせることができるようになりました。コントラストが高まり、コンテンツが意図していた光の表現により近い再現が可能です。

そして、広色域バックライトシステムの性能を最大限に引き出すために、独自アルゴリズムで把握したパネルの色温度を、パネル制御にリアルタイムに反映する「リアルタイム色チューニングシステム」を導入。これによりバックライトの色温度に左右されない、正確な色表現を実現するとしています。
また、パナソニックのMini LEDバックライト搭載4K液晶テレビはこれまで65V型のみのサイズ展開でしたが、W95Bでは75V型と55V型が加わりました。ビエラ最大サイズとなる75V型、そして需要の高い55V型がラインナップされるのは、サイズが原因で液晶テレビを選択肢から外していた消費者にとって喜ばしい拡充といえるでしょう。
W90BおよびW80Bシリーズにおいても、映像エンジンによる画質の最適化、ダイナミックディテールエンハンサーの搭載、そしてPrime Videoキャリブレーションモードへの対応と、2025年モデルとして変更が加えられました。


くらしスタイルシリーズが配線レスでますます設置自由度アップ
体験セッションの会場では、4月20日に発表されたレイアウトフリーテレビやウォールフィットテレビの新モデルも展示されました。


くらしスタイルシリーズとして展開される両シリーズは、アンテナ線とつなぐボックス型チューナーとディスプレイが分かれていて、それぞれをワイヤレス接続する仕様を採用しています。そのため、アンテナ線の位置に縛られない設置が可能となり、これまでのテレビとは異なるライフスタイルを実現できるとして好評を得ているとのこと。
一方で、チューナーにHDMI端子がないため、レコーダーやゲーム機を接続すると結局は設置位置が限定されることや、レイアウトフリーテレビは色が白しか選べないこと、ウォールフィットテレビは65V型の大画面サイズがないことなどが要望点として寄せられていたそうです。
そこで両シリーズの新モデルでは、チューナー部にHDMI入力を搭載して、接続機器の映像・音声をディスプレイにワイヤレス伝送する新機能「Wireless Connect」を搭載しました。これによりディスプレイ側には追加で配線をすることなく、幅広いコンテンツを楽しむことができるようになりました。

また近年、グレー系インテリアの人気が上昇しており、家電のカラートレンドとしてダーク系の品揃えが増加しているという背景を受け、レイアウトフリーテレビの新色としてマットダークグレーを追加。株式会社アクタス 店舗事業本部 プランナーの山本さら氏は、「ライフスタイルの変化にともない、テレビの位置を変えたり、追加したりする場合があります。そんなとき、レイアウトフリーテレビであれば位置を自由に動かせるため、生活にフィットした使い方ができます。最近は家具や内装材にグレーが使われることが増えてきたように感じますが、マットダークグレーの登場で、インテリアにマッチしやすくなったと思います」とビデオメッセージを寄せました。
ラインナップは「TH-43LF2」(21万円前後/税込)、「TH-43LF2L」(17万円前後/税込)、そしてマットダークグレーの「TH-43LF2L-H」(18万円前後/税込)の3モデル。LF2はチューナー部に2TBのHDDを内蔵し、HDMI入力をディスプレイ×2、チューナー部×3で搭載。LF2LおよびLF2L-HはHDDを内蔵せず、HDMI入力はディスプレイ×2、チューナー部×1で搭載しています。
そしてウォールフィットテレビには、従来の55V型に加えて、65V型が新たにラインナップされました。サイズはアップしましたが、これまで通り大掛かりな工事は必要なく、自身で設置が可能。専用金具を固定するピンの数を2本増やすことで、落下しないように支える設計となっています。

ラインナップは65V型の「TH-65LW2」(48万円前後/税込)、55V型の「TH-55LW2」(38万円前後/税込)と「TH-55LW2L」(32万円前後/税込)。LW2はチューナー部に2TBのHDDを内蔵し、HDMI入力をディスプレイ×2、チューナー部×3で搭載。LW2LはHDDを内蔵せず、HDMI入力はディスプレイ×2、チューナー部×1で搭載しました。
ゲーミングネックスピーカー新モデルは映画視聴にも使いやすい
首掛けスタイルで使用するゲーミングネックスピーカー「SOUND SLAYERシリーズ」にも、新モデルが追加されました。

現行モデル「SC-GNW10」は、ヘッドホンやイヤホンと違って耳をふさがず、臨場感のあるサウンドが楽しめるなどユーザー評価も上々。その独自性がウケてヒットを飛ばすことができたそうです。しかし、ゲームの低遅延性を重視するあまり、接続をUSBのみに限定したことで、パソコンやゲーム機でしか使えないことが課題となりました。
同社の調べによると、サラウンドネックスピーカーの使用用途として「ゲーム以外で使わない」という人は1%しかいなかったとのこと。大多数は映画や音楽ライブ、アニメにドラマなど、「ゲーム以外のコンテンツも楽しみたい」というニーズが圧倒的に高かったそうです。
そこで新モデルの「SC-GNW30」(4万円前後/税込)では、映像コンテンツ全般を楽しめるデバイスとしてゲーマーにアプローチ。新たに送信部にHDMI入力を2系統(うち1つはARC対応)装備しました。さらにBluetooth接続にも対応し、テレビやスマートフォンとの接続が可能となりました。
ネックスピーカーのハード設計は従来モデルの仕様を踏襲しており、4つのスピーカーによる4chサラウンド環境を構築できます。たとえば音声信号が5.1chのものであれば、4chのリアルサラウンドで再生します。またテレビなどから2chの音声信号が入力された場合は、アップコンバートによる疑似サラウンドで再生が可能。こちらはオン/オフを切り替えることもできます。
イコライジングアプリ「SOUNDSLAYER Engine」も強化されました。これまではWindowsでのみ使用可能でしたが、macOS、Android、iOSにも新たに対応し、簡単に操作することができるようになりました。サウンドモードもグレードアップしているので、よりさまざまなコンテンツにマッチしそうです。

さらに、シアター向けネックスピーカーとしてニーズある2台目接続にも対応しています。これまで送信機とネックスピーカーは1対1の接続でしたが、SC-GNW30では1対2の接続が可能となりました。従来モデルのSC-GNW10を同時接続して、2人で映画を楽しむといった使い方ができるわけです。
なお、SC-GNW10の後継機種として「SC-GNW10S」(3万円前後/税込)もアナウンスされています。従来モデルからの変更点は、SOUNDSLAYER EngineアプリをmacOSでも利用可能(スマートフォンは非対応)なこと、サウンドモードが強化されていることです。発売はともに6月中旬を予定しています。
会場ではSC-GNW30を体験できました。2chからの疑似サラウンドだと、音に包みこまれるとまではいきませんが、位置感がしっかり表現されています。セリフがクリアで聞き取りやすく、低音も十分に迫力があります。同じような迫力をテレビのスピーカーで再現しようとすると、近所迷惑になるようなボリュームが必要になることでしょう。
ゲームで4chのリアルサラウンドを聴くと、立体感が大きく向上しました。どの方向から音がしているかが掴みやすくなり、リアリティが増すため、より世界観に没頭できそうです。

ライフスタイルの変化を見定め、ソリューション提案を向上していく
新製品の紹介のほか、会場では「テレビ市場のトレンド」の分析と、それを踏まえた今後の対応について語られました。まず、AV機器やカメラなどを取り扱うパナソニック エンターテインメント&コミュニケーション株式会社では、4月より「テレビ事業部」が誕生。「エンターテインメントの力で人々に新しい『感動と安らぎ』を提供することを目指していく」と表明されました。

コロナ禍は多くの業界に影響を与えましたが、テレビ市場においては外出自粛にともない「おうちエンタメ」の需要が高まり、特に50V型以上の大画面テレビの出荷台数が増える結果に。その後は安定化しましたが、2024年で見ると出荷台数は約450万台、そのうち50V型以上が約4割を占めています。
同時に映像配信サービスも浸透し、その利用率は現在も増加傾向にあります。コンテンツが多様化すると同時に、再生デバイスもスマートフォンやタブレットが比率を高めるなかで、テレビには新しい価値が求められるようになりました。
そんななかで、パナソニックではFire TVの導入、くらしスタイルシリーズの展開、お部屋ジャンプリンク機能の提供といったソリューションを提案。コンテンツや視聴場所、視聴デバイスの多様化に対応してきました。
アマゾンジャパン合同会社 Amazonデバイス Fire TV事業部の西端明彦事業部長は、「2024年は大きな節目の年になりました」と振り返ります。「日本初となるFire TV搭載有機ELテレビをはじめ、パナソニック製の高品質なモデルを届けることができました。また、パナソニックの専門店を含む8500の販路に流通が拡大。テレビの視聴時間が増えたという意見もいただいています」と、手応えを得ている旨をコメント。
今後の方向性としては、さまざまなコンテンツと出会いやすいようにUIを改善するなどしてユーザーエクスペリエンスを高めるほか、品揃え強化に向けて動いているそう。2025年もパナソニックとアマゾンジャパンの協業に期待できそうです。
そして、パナソニックとしては新たな価値にばかり目を向けず、根本的なクオリティを提供することも疎かにしません。テレビの大画面化にともない増加するテレビ転倒のリスクに備えて、耐震技術を高めるなど「安心してテレビが楽しめる」ことに真摯に向き合う姿勢が改めて語られました。
そのうえで、「高画質・高音質・使いやすさといった本質機能を追求する」「新たなくらし空間を提案する」「コンテンツソリューションを連携させる」という3つを軸に取り組んでいくとして、これらを具体化した上述の新製品群を発表しました。
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