一眼動画は、一般のビデオカメラでは望めない大きなボケ表現や質の高い描写などが得られると、最近注目を集めている。加えて、4K動画撮影に対応する機材も増えてきた。そこで本稿では、一眼動画を楽しむための機材選びやカメラ設定、専門用語などについて詳細に解説。前編となる今回は、動画撮影に適したカメラやレンズ、用品を中心に解説。普段使用している一眼カメラで動画撮影を楽しむための基礎をマスターしよう!
【動画撮影に向く一眼】AFが速く可動式モニター付きの機種が便利
動画撮影に向く一眼カメラは、ライブビュー撮影時(動画撮影時)のAFが高速かつ正確なことが重要だ。動画撮影のプロはMFでピント合わせを行うことも多いが、映画や番組制作以外では、事前のピント確認やピント送りのチェックなどは難しく、AF撮影が基本となるためだ。次にマイク端子やイヤホン端子を備えていること。動画の場合は、映像だけでなく音も重要。外部マイクを使用し、音を確認して撮影できるとうれしい。可動式モニターやタッチパネルを備え、4K動画対応だと、より好ましい。
動画撮影向き一眼のチェックポイント① ライブビューでもAFが高速
一眼動画はライブビュー撮影が基本となるが、一般的なコントラストAF(※1)はAFが遅めだ。そのため、像面位相差AF(※2)対応カメラが好ましい。下図のように高速な位相差AFを撮像面で行えるカメラは、動画撮影時もストレスなくAFを利用可能だ。
※1:被写体のコントラストの高低を利用してピントを合わせるAF方式。AF精度は高いが、ピント位置までの光の角度や量の差異からピントを合わせる位相差AFに比べると速度はやや遅い
※2:位相差AFとコントラストAFを併用することにより、AF精度と速さを両立する新しいAF方式
動画撮影向き一眼のチェックポイント② 背面モニターが可動式
カメラの背面モニターは可動式のものが好ましい。無理のない姿勢で撮影でき、撮影アングルの自由度も高い。可動方式はバリアングル式が使いやすいが、動画の場合は基本的に縦位置で撮ることはないので、チルト式でもOKだ。
動画撮影向き一眼のチェックポイント③ マイクやヘッドフォン端子を装備
動画では音も重要な要素。よりクリアな音を得るため、外付けマイクの使用がオススメだ。ヘッドフォン端子が装備されていれば、撮影中に記録している音を確認しながら撮ることが可能。マイクの配線ミスなども気付きやすい。
動画撮影向き一眼のチェックポイント④ 4KやフルHD/60pに対応
最近のトレンドである4K動画対応のカメラを用意したいが、再生環境や編集環境を整えるとかなり高価。扱いやすさなどを考慮すると、フルHD/60pで撮れるものでも十分だ。フルHDなら、テレビでの観賞なども行いやすい。
動画撮影向き一眼のチェックポイント⑤ タッチ操作に対応
最近は一眼カメラでもタッチパネル搭載モデルが増えている。動画撮影においても、タッチパネルを用いることでカメラ設定が素早く行えるほか、タッチAFで素早く好みの位置にピントが合わせられるなどの大きなメリットがある。
動画撮影オススメ一眼① キヤノン EOS 80D
動画撮影オススメ一眼② パナソニック ルミックス GH5
動画撮影オススメ一眼③ ソニー α6500
【動画に向く交換レンズ】AFが静かで画角変化のないものを選ぶ
動画撮影に用いるレンズは、まずAF時のモーター音が静かなことが重要。次にAFの反応がよく、動きが素早いものが好ましい。具体的には、ステッピングモーターを使用したものだと条件を満たしており安心だ。超音波モーター仕様のレンズも反応がよく、動画に適したものが増えている。ズームレンズでは、高倍率ズームが1本あるとさまざまなシーンに素早く対応できて便利だが、注意したいのがピント位置による画角の変化。この変化が大きいものは、ピント合わせの度に画面が揺れるような写りになる。
動画向きレンズのチェックポイント① AFの反応がいい
モーター音の大きなレンズは、撮影中に音が記録されてしまうため適さない。ステッピングモーターや超音波モーターを用いた静かなレンズを用意しよう。特にステッピングモーター仕様のレンズは、AFの反応が良く、精度も高いので動画撮影に適している。
動画向きレンズのチェックポイント② ズームレンジが広く1本で広角〜望遠まで撮れるレンズが便利
28~200mm相当程度の高倍率ズームが1本あると、さまざまな撮影シーンに対応しやすくて便利だ。ただし10倍以上など、あまり倍率の高いレンズだと、ピント合わせ時の画角変化が大きくなりがちなので注意。5~7倍程度のものを使用するのがオススメだ。
動画向きレンズのチェックポイント③ ピント合わせによる画角変化に注意
古めのレンズや一部のズームレンズは、ピント合わせ時の画角変化が大きいものが多く、動画撮影時は画面が揺れて写る。最近のレンズは、比較的画角変化が少なく設計されたものが増えている。
動画向きレンズのチェックポイント④ 広角ズームは写真用より少しワイドなものがオススメ
動画撮影時は画面比が16:9となり、撮像素子の上下をトリミングした状態での撮影となる。そのため、同じ焦点距離でも実質的な画角は狭くなってしまう。広角で動画撮影を行う場合は、想定しているより少し画角の広いレンズを用意するのがオススメだ。
動画撮影用オススメ交換レンズ① キヤノン EF-S 18~135mm F3.5-5.6 IS USM
動画撮影用オススメ交換レンズ② ソニー E PZ 18〜105mm F4 G OSS
動画撮影用オススメ交換レンズ③ パナソニック ルミックス G バリオ 14〜140mm F3.5-5.6 ASPH. /POWER O.I.S.
【動画撮影用アクセサリー】高速なカードやビデオ三脚などが必要
動画のデータは写真に比べると大きく、高速で大容量のメモリーカードが必要。フルHDの場合は、「スピードクラス10」以上、4Kの場合は、「U3」対応のものが推奨だ。三脚もビデオ用のものを用意したい。写真用三脚を持っている場合は、雲台をビデオ用のものに変えるだけでもOK。また、動画撮影では、シャッター速度をあまり速くしないほうがスムーズな動画にできるため、NDフィルターを使用する。濃度可変型のNDフィルターがあれば、露出調整が容易だ。このほか、マイクや照明などもほしい。
【メモリーカード】4K動画撮影には「U3」対応カードが必要
SDカードでフルHD撮影の場合は、スピードクラス10(最低10MB/ 秒の書き込みが可能)のもので32GB以上の容量のものを用意したい。4Kはさらにスピードと容量が必要になり、U3(UHSスピードクラス3、最低30MB/秒の書き込みが可能)対応で64GB以上の容量がオススメ。できるだけ高速で容量の大きなものを用意しておこう。
【三脚】 ビデオ用三脚や雲台を用意しよう
ビデオ用三脚や雲台は、油圧を使うことで上下左右にカメラを振る場合、スムーズな動きにできる。単純にカメラを固定するだけなら、写真用三脚でもOKだが、動く被写体を追いかけたり、広い風景の全体をカメラを振って写したりしたいといった場合には、ビデオ用三脚や写真用三脚に取り付けられるビデオ用雲台を用意しよう。
【NDフィルター】高価だが濃度可変型のNDが便利
動画撮影で被写体の動きをスムーズに写したい場合は、フレームレートに合わせた1/30秒以下や1/60秒以下という遅めのシャッター速度で撮影する必要がある。そのため、明るい日中などは、NDフィルターで減光する必要が出てくる。通常のNDフィルターも使用できるが、便利なのが濃度可変型のNDフィルターだ。フィルター前枠を回転させて濃度を変えることで簡単に露出調整ができる。
【外付けマイク】クリアに録音したいなら用意しよう
マイクはカメラ本体に内蔵されているが、内蔵マイクだと露出調整などの作動音が録音されやすく、音がこもってしまう場合も多い。そのため、アクセサリーシューなどに装着して使う外付けマイクを用意したい。これを用いることで、音がクリアになり、余計な作動音なども録音されにくくなる。指向性の高いものなども用意されているので、撮影条件に応じて使い分けるのが理想だ。
【LEDライト】室内撮影を行う場合には用意したい
暗い室内などで写真を撮る場合は、フラッシュを使用するが、動画の場合はフラッシュだと対応できない。そのため、動画撮影用の照明機材が必要になる。最近は電力消費や発熱が少なめのLED照明が増えてきた。専用のものは、色温度が5000K程度で安定しており、写真撮影にも使用できる。
【モニターフード】屋外で撮影する場合にあると便利
動画撮影はモニターを見ながらの撮影になるので、日差しの強い環境などでは、画面が見づらくなる。そのため、簡易的なものでもいいので、モニターフードを用意しておきたい。モニターに固定できるタイプのものなら、手持ち撮影時にも使用できて便利だ。数多くのメーカーから製品が発売されているので、使用する機材に最適なものを用意しよう。
(後編に続く)