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2019/10/9 21:00

ソニー「α9 II」発表! 約2年半前、衝撃を与えた超高速フルサイズミラーレスがブラッシュアップ

ソニーは、フルサイズミラーレスカメラの新モデル「α9 II」を発表。10月9日より、予約販売の受付を開始しました。革新的な高速撮影性能で大きな話題となった「α9」の後継モデルということもあって早速注目を集めていますが、本稿では従来モデルからの進化点を中心に紹介していきます。

↑11月1日発売予定のα9 II。ソニーストアでの価格は税別54万5000円(ボディ)

 

α9登場当時の衝撃を振り返る

α9 IIについて見ていく前に、まずは従来モデルα9について簡単にご紹介しましょう。

 

α9は2017年5月に発売されたソニーのフルサイズミラーレスカメラ。その最大の特徴は、「電子式シャッター使用時に約20コマ/秒」という連写性能に代表される圧倒的なスピード性能にあります。

 

いまでこそ昨年のフルサイズミラーレスの盛り上がりもあってミラーレスカメラが市場の中心となりつつありますが、プロ・ハイアマ層を中心に当時はまだまだ一眼レフが優勢でした。その大きな理由が、「ミラーレスカメラは動きモノに弱い」というもの。ミラーレスカメラの特徴でもある電子ビューファインダー(EVF)は、年々進化しつつあるとはいえ、一眼レフの光学ファインダーに比べると若干の表示タイムラグが存在するからです。

 

しかし、α9は圧倒的な高速連写と高速AFでそのイメージを一新。本格スポーツ撮影にも使用できるミラーレスカメラとして、大きな衝撃を与えました。その意味で、近年のミラーレスカメラ躍進のきっかけの1つにもなったエポックメイキングな存在と言えます。過去記事を見返すと、GetNavi webでも複数回にわたってレビューを行っており、当時の盛り上がりぶりがうかがえます。

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進化したのは“使い勝手”

そんなα9の後継機ということで、α9 IIでも真っ先にスピード性能に目がいってしまいそうになりますが、実は撮影性能については多くの点でα9を踏襲しています。もちろん、メカシャッターでの10コマ/秒の高速連写(α9は5コマ/秒)やフリッカーレス撮影への対応、AFの改善、手ブレ補正の進化(従来の5.0段から5.5段へ)など進化している部分もありますが、核となるイメージセンサーや画像処理エンジン、最高約20コマ/秒の高速連写(電子式シャッター使用時)、AF測距点数などはα9と同等です。

 

では、今回の新モデルでの大きな変更点は何かというと、“使い勝手”の向上です。具体的には、「高速通信性能の進化」と「操作性の向上」2点。

 

まず、高速通信性能については、最高1Gbpsの高い転送速度を実現する規格「1000BASE-T」に対応したLAN端子を内蔵し、リモート撮影やデータ納品時の高速データ転送を実現。デスクトップアプリケーション「Remote Camera Tool」(リモートカメラツール)を用いた快適なPCリモート(テザー)撮影にも対応します。本体内の無線LAN機能は「IEEE 802.11ac」規格に対応し、α9同様の2.4GHzに加え、5GHz帯域での高速なデータ転送も可能になりました。

↑α9にはなかったUSB Type-C(USB3.2Gen 1対応)の端子も新設されています

 

また、新たな機能として、「音声メモ機能」を搭載。撮影現場にて撮影シーンや位置などの情報を音声データとして画像に付与し、納品時に活用することができます。こうしたワークフローの高速化や利便性の向上は、現場のプロからの声を踏まえた改善とのこと。スポーツや報道撮影での使用を想定したα9 IIらしい進化と言えます。

 

次に、操作性の向上について。α9 IIには、2019年9月に発売されたばかりの「α7R IV」で採用されたデザインが生かされており、グローブ着用時でも操作しやすいようにダイヤル・ボタンの形状や位置が工夫されていたり、グリップの形状が変わって握りやすくなったりしています。

↑グリップのくぼみが深くなり、ホールド感が向上。また、シャッターボタンは右手側へ傾斜がつけられ、より押しやすくなっています

 

↑ボディ上面。α7R IVのデザインとほぼ同じですが、左側にドライブモードダイヤルを備えているのがα9シリーズの特徴。α9から後ダイヤルの位置・形状が変更になっているほか、露出モードダイヤルにロックボタンが追加されています

 

↑ボディ背面。モニターはタッチ対応のチルト可動式。マルチセレクター(Fnボタンの上)の表面が滑りにくいような形状に変更されています

 

ここでは説明しきれない細かな変更(地味だけど重要!)も多いので、詳しくは以下のインプレッション記事を参照していただければと思います。

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カメラとしての成熟度が増した

今回の発表内容を見ると、撮影性能に目玉の変更がないぶん、一見すると地味な新製品に思えてしまうかもしれません。それだけ初代α9のインパクトが大きすぎた、というのもあるでしょう。

 

しかし、プロの声に応える撮影ワークフローの進化や、課題だった操作性の改善などを見て、個人的には「α9で切り込んだ市場をより拡大するための戦略モデル」という印象を受けました。昨年後半~今年にかけての新規参入ラッシュで登場した他社フルサイズミラーレスカメラに比べ、高速撮影性能で一歩先を進んでいるぶん、それ以外の部分をブラッシュアップすることで今の地位を盤石にしようという狙いがあるようにも感じます。

 

成熟度の増した「α9」、それが「α9 II」だとすると、プロフェッショナル層を中心に、買い替えを悩んでいた人にとっては十分な購入動機になるのではないでしょうか。