今年も11月になり、「秋のヘッドフォン祭2019」が11月2日、3日の2日間にわたって中野サンプラザで開催されました。200ブランド以上のヘッドホン、イヤホン、DAP(デジタルオーディオプレーヤー)などが展示されるだけでなく、新製品発表会や世界初披露の製品なども登場して、国際的なイベントに成長しています。今回は「フォスター電機コラボ企画 自作イヤホン・ヘッドホンコンテスト」の試聴、投票、表彰式に加えて、オーディオテクニカのヘッドホン発売45周年記念の特別展示もありました。
今回は、これから発売される新製品を中心に、実際に音を聞いて気になった製品をピックアップ。記事は2部構成で、今回はDAP、DAC、ヘッドホンアンプ編をお届け。2部はBluetoothと完全独立型、平面型を含むヘッドホンとイヤホン編となります。
AKMの最新兄弟DACを搭載したライバル機が火花を散らす
Astell&Kernが発表した新製品DAPは「AK120」のDNAを受け継いだ「SA700」(実売予想価格約16万円)です。同社の第一世代である「AK100」、「AK120」の片手で持って使いやすいデザインと弦楽器をモチーフにしたホイールガードなどを取り入れ、デュアルDACのフルバランス構成も受け継いでいます。もちろん、2.5mmのバランス接続対応で、3.5mm用端子もあります。
特に今回、注目なのはDAPに初搭載された「AKM AK4492ECB」DACチップをデュアルで搭載したことです。4492はハイエンドオーディオ用のAK4497の高音質技術を受け継ぎ、低消費電力を実現したチップで、連続再生時間を延ばしてくれます。ちなみに本機の連続再生時間は約8.5時間です。
非常に解像度の高い音で、特に低域の音の分離に優れ、その実力は上級機を上回っている部分がありました。「SP1000」に迫る厚みのある中低域に繊細な高域はまさにAstell&Kernシリーズ7周年記念に相応しいモデルと言えます。カラーバリエーションは2色で、どちらもボディの素材はステンレス合金ですが試聴してみると、シルバーの方が引き締まったタイトな音に聞こえました。ブラックは低域に馬力があってシルバーよりも響きが豊かでした。
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Lotoo「PAW 6000」は4.4mmバランス対応、芯が太く高解像度な音
Lotooから発売されたばかりの「PAW 6000」(実売予想価格16万5000円)は、同社のハイエンド「PAW Gold TOUCH」の高音質を引き継ぎながら軽量化とハイコスパを実現した兄弟モデルです。タッチパネルを採用、専用OSを搭載して起動時間2秒、100万曲までの曲情報表示、USB/DAC機能、USBオーディオ機能なども備えています。DACチップにAKM AK4493EQを採用して、連続再生16時間を実現しました。また、DSD256ネイティブ再生対応、4.4mmバランス出力、3.5mmアンバランス出力に対応しました。フロア・ノイズは測定機の限界に達する−120dBで、S/N感の良さが際立ちます。
PAWシリーズは中低域に厚みがある音が特徴で、Astell&Kernとは対照的な音作りというイメージがありましたが、「PAW 6000」は音に厚みがあるだけでなく、輪郭がクッキリしたクリアな音で、楽曲の細部の表現まで良く分かる解像度の高さが光ります。4.4mmのバランス接続では空間感や奥行き感がさらに広がります。重さ225gで連続再生時間16時間を実現しているのも魅力で、Astell&Kern「SA700」の最大にライバル出現といったところでしょうか。
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Lotooの隠し球となったコンパクトサイズのUSB DAC世界初公開!
Lotooの発表会でサプライズ登場したのが「PAW S1」です。21×65×13mmのスリムな筐体でDSD128(PCM変換)、PCM384kHz/32bit対応のポータブルDACで重さは25gしかありません。
イヤホン端子のないiPhoneのようなスマートフォンに接続して、通常のアナログ接続のイヤホンやヘッドホンを使うための機器です。出力端子は4.4mmバランス対応、3.5mmのアンバランス用端子も装備。デジタル入力側はUSBタイプC端子対応、Androidだけでなく変換ケーブルでiOSとMacにも対応。発売は2020年初頭を予定しています。
ストリーミングとMQAに対応した未来派思考のFiiO「M11 PRO」
AKMつながりでは、FiiO「M11 PRO」の方には「AKM AK4497」がデュアルで搭載されました。こちらの押しも押されもせぬハイエンドDACチップで、Astell&Kern「SP1000」も採用しています。バランス出力は4.4mmと2.5mmの両方に対応、アンバランスは3.5mmです。サイズは130mm×70.5mm×15.5mmで重さ220g、バッテリー容量を増やして連続再生は13時間以上になりました。DSD256のネイティブ再生、PCM384kHz/32bitに対応します。
シャープでエッジが立った音で、解像度重視のFiiOらしさを受け継いでいます。低域はタイトで中高域をマスクしません。ワイドレンジで情報量が多く、音の分離がよく音場感も出ます。まさにハイレゾ音源向きのプレーヤーですが、女性ボーカルに癒されたいという用途に向かないかもしれません。BluetoothはaptX HDとLDACの両方に対応、MQAにも対応した最新スペックをハイコスパで使えるモデルだけあり、試聴には長蛇の列ができその注目度の高さを実感しました。
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ハイコスパ高音質ヘッドホンアンプの決定版iFi Audio「ZEN DAC」
低価格で高音質、高性能を実現するイギリスのiFi Audioから登場する「ZEN DAC」(1万8000円)はU2万円で驚異のハイスペックを叩き出した。DACチップは同社の得意とするBarBrownを使いDSD256ネイティブ再生、PCMは384kHz/24bitまでをサポートします。またMQAのデコード機能も備えました。
アナログ回路にはゲイン切り替えがあり、イヤホンやヘッドホンの種類によって最適の音量が得られます。また、DSPを使った独自の低域の増強回路TrueBassは中高域に干渉することなく深く沈み込む低音を実現します。そしてバランス出力対応。これも画期的です。出力端子は4.4mmですが、純正アクセサリーでXLR変換ケーブルが発売される予定です。
スマホやDAP用に高音質なイヤホンやヘッドホンを入手した人は、次にこのヘッドホンアンプを導入すれば、さらなる高音質を使用中のイヤホンから引き出すだせるに違いありません。ボリュームが付いているのでDACプリとして、またボリュームを固定してUSB/DACとしても使えます。
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漆黒の闇から音が浮かび上がるOJI Special「BDI-DC44B-R EX Limited」
ヘッドフォン祭には、普段は聞く機会のないハイエンドモデルに出会える楽しみがあります。特に注文生産に近いモデルは、店舗に展示されることもほとんどありません。今回は純国産のハイエンドヘッドホンアンプメーカーOJI Specialのブースで「BDI-DC44B-R EX Limited」を試聴することができました。
同社は以前からバランス駆動にこだわりS/N感の良さを追求してきましたが、その結果、LR独立電源を発展させたHL独立電源を搭載したモデルに到達しました。高周波チューニングを施したBモデルをベースにして、スパイクとインシュレーターをカスタマイズするSilBフル装備、さらに特別選別したアンプと基板、内部シールド配線を見直し、フルテック製ロジウムメッキACアウトレットを装備しています。
バランス接続のbeyerdynamic「T1 2nd Generation」で試聴すると何もない空間から女性ボーカルがポッと浮かび上がるように歌ってくれます。音像定位が非常にシャープで頭の中の奥深い1点から密度の濃いボーカルが定位して、その周囲に楽器が配置されたように聞こえます。
トータルの試聴システムは数百万円になってしまいますが、手持ちのDAPやスマホ用にステレオミニケーブルも接続されていて、普段、使っている機器と楽曲でのアンプ試聴もできます。これはOJI Specialの自信の表れで、確かにDAPからのライン出力でも同社の音の良さは実感できました。新製品でなく愛用のヘッドホンでも、まだ音が良くなる可能性を教えてくれるヘッドホンアンプです。
次回は、秋のヘッドフォン祭2019で見つけた注目のイヤホン&ヘッドホンを紹介しますので、お楽しみに!
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