AV
2019/5/1 19:00

オーディオファン必見! 最新技術採用モデルが結集した「春のヘッドフォン祭2019」

4月27、28日に東京・中野で開催された「春のヘッドフォン祭 2019」では、国内外から多くのメーカーが集結。新製品の発表会、声優やミュージシャンが登場するイベントなどが開催されました。会場では、人気のポータブル機器や新製品だけでなく、参考展示された試作機の試聴もあります。海外メーカーのCEOやエンジニアも来日しており、展示ブースで直接会話するチャンスがあるかもしれません。しかも入場無料とオーディオ好きには見逃せないイベントになっています。今回はユニークな機構や素材を使った参考展示と新製品を中心に紹介していきます。

 

振動板は医療グレードの高分子化合物「Acoustune」

アユートが取扱を開始した香港のイヤホンメーカー「Acoustune」から、2モデルが参考出展されました。同社の特徴は音響チャンバーとハウジング部分を完全に分離したモジュラー構造を採用したことで、それぞれを異なる素材で作ることで音質をチューニングしています。また、振動板に医療グレードのポリマーバイオマテリアルを使ったミリンクスドライバーを搭載しています。

 

ポリマーとは高分子化合物のことで、身近なところではスーパーのレジ袋などに使われています。これだと有り難みが薄れますが、バイオマテリアルなので生体移植向けの医療用グレードなんです。そこから生まれた振動板は、高分解能で、ワイドレンジ、ダイナミックレンジも広いそうです。

 

参考展示されたのは音響チャンバーに真鍮をハウジングに銅を使った「HS1655CU White」と、音響チャンバーがチタン製でハウジングがアルミ合金の「1695Ti Gold」です。MMCX端子のリケーブル対応で、どちらもシルバーコート銅線とOFCのハイブリッドケーブルが付属します。音響チャンバーとハウジングにステンレス合金を使った「HS1670SS」、OFCケーブルを採用した「HS1551CU」というモデルもあります。

↑「HS1650CU White」はメカニカルなデザインと白い塗装が目をひく

 

↑「HS1655CU White」と「1695Ti Gold」を参考出展

 

iPhone専用の「AZLA ORTA Lightning」を参考出展

AZLAは同軸ハイブリッドドライバーで有名になったイヤホンメーカーですが、その最新機種「ORTA」は8mm径のアルミ合金振動板を使ったダイナミック型ドライバー搭載モデルです。同社独自のインナーチャンバーとアウターハウジングを使った構造で不要な振動を抑え、ALCテクノロジーと呼ばれる技術で音波の直進性を妨げず鼓膜までダイレクトに音を届けます。

↑ALCテクノロジーを使ったコンパクトなハウジングは装着しやすい

 

参考展示されていたのは、これにLightning端子が付いたiPhone対応モデル。ケーブルはMMCX端子を使った純正品で、通常ケーブルのORTAの実勢価格が約1万6000円なので、これに数千円が上乗せされた価格で登場しそうです。実際に「iPhone7Plus」で試聴しましたが、これがiPhoneの音かと驚かされました。普段はBluetoothイヤホンを使っていますが、本機が発売されたら有線に戻すかも知れないと思わせる高音質でした。

↑LightningケーブルはシルバーコートOFCとOFCのハイブリッド4芯構造を採用

 

↑その隣にはアユート扱いになったULTRASONEのEditonシリーズの試聴機が並ぶ

 

DAPは4.4mmバランス対応モデルが増加中

アユートブースには、Astell&Kernから発表された「KANN CUBE」が展示され、初日から試聴希望者の行列が出来ていました。ESS社のDAC、ES9038PROをデュアルで搭載して、バランス出力12Vrmsを実現した超ド級モデルで、重さは493gもあります。オプションの変換ケーブルを使ってXLRバランス接続にも対応予定。同社が採用するバランス接続端子は2.5mmと細いですが、ソニーが推しているのが4.4mmの太いバランス接続端子です。最近のDAPでは、4.4mmを採用するモデルも増えています。

↑ゴツゴツとした武骨なデザインでズシリと重い「KANN CUBE」

 

エミライに参考展示されたFiiO「M11」は5万6000円で5月末発売予定。価格からするとFiiOシリーズのなかではミドルクラスに位置しますが、DACには旭化成エレクトロニクスの「AK4493EQ」をデュアルで搭載。オペアンプには「OPA926」を使うなど贅沢な部品構成を誇ります。豊富な機能とサクサク動くインターフェイスを備えたハイコスなパモデルといえそう。最大の特徴として、2.5mmと4.4mmのバランス接続対応、さらに3.5mmのシングルエンドも使えてすべて同じアンプから出力されるため、イヤホンの音質比較にも最適のモデルなのです。

↑FiiO「M11」は32GBのメモリーを内蔵、マイクロSDXCカードを2枚挿せる

 

↑底部には4.4mm、2.5mm、3.5mmのイヤホンジャックが並ぶ

 

HIFIMANにはフラッグシップモデルの技術を継承した「R2R2000 RED」も展示されました。発売時期、価格ともに未定ですが試聴は可能でした。DACをPCM1704KからPCM1702のデュアル構成に変更して、カスタム設計のデジタルフィルターをFPGAに搭載しています。こちらも3.5mmに加えて、4.4mmのバランス接続に対応しています。

↑「R2R2000」はコンパクトなボディにハイスペックを搭載

広大な音場感を実現したリボン式のヘッドフォン「requisite SR1a」

エミライに参考展示されたのが平面駆動型ヘッドフォンの新種、RAAL「requisite SR1a」。いままでの平面駆動型はダイナミック型か静電型でしたが、今回はリボン型です。リボン型も駆動原理はダイナミック型と同じなのですが、振動板が通電性のある薄い金属膜でボイスコイルの役割を兼用して、ハイスピードで情報量の多い音を再現可能。その反面、振動板の前後の両側から音が出るため通常のエンクロージャーに収められない、電流が流れ過ぎてインピーダンスがすごく低いなどの弱点があります。スピーカーでは主にツイーターに使われています。

↑ドライカーボンなどが使われたハウジングは軽く、装着感も極めて軽い

 

RAAL社はもともとスピーカー用リボンツイーターを作っているアメリカのメーカーで、リボン式はヘッドホンに向いていると考えて、このヘッドホンを製品化したといいます。インピーダンスは0.2Ωになるため、通常のヘッドホンアンプでは駆動できず、専用のアダプターを使ってパワーアンプと接続して駆動する方式を採用。ハウジングは開放式で、耳の横にぶら下げる方式で側圧ゼロというユニークな装着方法になっています。アルミ振動板はユニット式になっていて劣化や破損した場合は交換できるそう。

↑インターフェイスと呼ばれるアダプター経由でパワーアンプと接続する

 

試聴では福山雅治の曲を聞きましたが、耳元でささやきかけられるようなリアルなボーカルに対して伴奏はスピーカーで聞くように耳の左右の離れた位置から聞こえてきます。ヘッドホンと言うよりはスピーカーに近い音場感。それでいてボーカルはすごく近いのです。情報量は多く楽曲のニュアンスまで再現されますが、静電型のようにドライで粒立ちのいい音ではなく、なめらかでウォームな音色でした。販売するかどうか検討中とのことですが、もし販売するなら価格は45万円ぐらいになるとのことです。

 

このほか、静電型イヤースピーカーで知られるSTAXからは新モデル「SR-L500MK2」と「SR-L700 MK2」が登場。

↑静電型イヤースピーカー「SR-L500MK2」と「SR-L700 MK2」

 

↑トップイングが扱うSPIRIT TORINOがパッシブラジエータ搭載の「The Radiante」を初公開

 

↑Noble Audio「Khan」は超高域用にPIEZOドライバーを採用したハイブリッドモデル

 

AIを利用して個人の耳に最適化したサラウンド感を実現

クリエティブが披露したのが「Super X-Fi ヘッドホン ホログラフィ」と名付けた技術で、スマホで撮影した耳と顔の画像を専用サイトに送信。するとAIエンジンが、その人に最適化した音場を再現してくれます。USB接続のヘッドホンアンプ、USB接続ヘッドセット、Bluetooth/USB接続のヘッドセットの3製品が展示販売されていました。

↑左がUSBヘッドセット「Creative SXFI AIR C」、右がワイヤレスヘッドセット「Creative SXFI AIR」

 

↑ヘッドホンアンプ「Creative SXFI AMP」は直販価格1万6800円

 

その場で専用アプリを使って耳を撮影してSuper X-Fiを体験したのですが、サラウンドの映画、ステレオ録音の音楽、モノラル録音のボーカルのどれもが予想外に自然な音場感で、頭の外に広がりました。特に人の声がやや前方から聞こえてくるのに慣れると、通常の2ch再生がひどく不自然に感じるほどでした。主にゲーム用に開発された技術のようですが、さらに音質がブラッシュアップされればオーディオ用としても普及するかもしれません。

↑専用アプリで撮影した左右の耳と顔のデータからAIが最適の音場補正値を決定

 

finalが3万円から7万円の異なる構成の3モデルを提案

finalブランドからB Seriesという新開発のドライバーを使った新しいシリーズのイヤホンが登場します。B1、B2、B3と呼ばれるモデルは、それぞれが異なるドライバー構成を採用しています。ハウジングは耳を圧迫することなく保持できるデザインで、MMCX端子を使ったリケーブルに対応、B2はOFCケーブル、B1とB3はシルバーコートケーブルが付属します。

↑B Seriesは3モデルがセットで試聴できるため長蛇の列ができた

 

実勢価格約7万円の「B1」はダイナミック型とBA型のハイブリッドで解像度が高くバランスのいい音を狙ったそうです。「B2」はBAのシングルドライバーで実勢価格約3万円、全帯域が自然でなめらかな音になります。「B3」はBA型の2ドライバーで実勢価格約5万円、全帯域で高解像度、特に高域の表現が得意なモデルだそうです。試聴した感じでは、「B2」の音場感と音像定位の良さが印象に残りました。低域を欲張らなければハイコスパな「B2」がお買い得だと思いました。

↑「B1」のハウジングはミラーフィニッシュの多面体で宝飾品のように美しい

 

↑DITAのフラッグシップモデル「Dream XLS」も開発中、実勢価格約25万円を予定

 

シンガポールからダンパー機能を搭載したステルスソニックが上陸

ナイコムが4月24日から販売を開始した新ブランドが、Stealth Sonics(ステルス・ソニックス)です。カスタムイヤモニを得意とするメーカーですが、まず、ユニバーサル型イヤホン3モデルが発売されました。ダイナミック型とBA型のハイブリッドの「U2」(2万9800円)。4Way4BA型ドライバーの「U4」(5万7800円)。そして4Way9ドライバーの「U9」(11万800円)になります。全てのモデルに共通する特徴はフェイスプレートに設けられたStealth Dampingと呼ばれる低域をコントロールする膜のような機構で、これが個性的な低音を生んでいます。また、どのモデルもネットワークレスで、個々のドライバーが接続されています。

↑「U9」は9ドライバーとは思えないほどコンパクトなハウジングに収まる

 

各モデルには色違いのフェイスプレートが1セット付属しますが、これとは別に低域の特性をコントロールするためのフィスプレートもあるようです。リケーブルにも対応しています。「U4」のガツンと来る低域が衝撃的でした。それでいて解像度も高く、ホットな音色を聞かせてくれました。

↑色違いのフェイスプレートが付属している

 

↑ミックスウェーブの人気ブランドCampfire Audioからは新モデル「IO」が登場

 

↑「IO」はBA型の2ドライバーでハウジングはアルミ合金製、実勢価格約3万5000円