2020年のCESでは、様々なオーディオメーカーが新製品や新技術を展示しており、今年のオーディオ業界のトレンドをいち早く感じることができました。特に、これまでのトレンドアイテムだった「完全ワイヤレスイヤホン」にノイズキャンセリング機能を付与したモデルが各社から登場し、2019年に発売され大ヒットとなったアップル「AirPods Pro」を追随する姿勢を見せています。
また、ソニーが独自の立体音響技術「360 Reality Audio」を自社開発の自動運転車に搭載すると発表したように、「モビリティとオーディオ」の関係に新展開が。このほか、オーディオブランドであるJBLがゲーミングヘッドセット「QUANTAM」シリーズを発表するなど、e-sports分野におけるオーディオメーカーの展開にも注目です。
テクニクス/パナソニックから完全ワイヤレスイヤホン登場
パナソニックのプレミアムオーディオブランドであるテクニクスが、初の完全ワイヤレスイヤホン「EAH-TZ700」を発表しました。テクニクスらしい音へこだわりが盛りだくさんで、アクティブ・ノイズキャンセリング(ANC)機能も搭載しています。北米モデルの予価は279(約3万円)ドルと発表されていますが、日本での導入時期は未定。
アクティブ・ノイズキャンセリング機能はフィードフォワードとフィードバックのハイブリッド方式に加え、アナログとデジタルの回路でノイズを打ち消す「Dual Hybrid ANC」が大きな特徴。外音取り込み機能も抜かりなく載せています。
10mm口径のドライバーによるサウンドは肉付きが良く、低音の量感も充実しています。試聴した製品が試作機でしたが、発売までに中高域がもっとブラッシュアップされて、テクニクスらしいバランスの取れたサウンドに仕上がってくるものと思います。
また、送り出し側の機器の種類を問わず、左右独立の信号を受けて再生できる機能を備えているそうです。チップセットの種類も公開されていませんが、送り出し側がSnapdragonシリーズのSoCを載せたスマホに限られないとパナソニックの開発担当者が説明していました。
本体のリモコンはタッチセンサー方式。IPX4相当の防滴性能を搭載し、内蔵バッテリーで約6.5時間の連続音楽再生が可能。カラバリはブラックとホワイトの2種類が揃います。日本でも発売されれば話題をさらいそうです。
パナソニックブランドからも完全ワイヤレスイヤホン2種類が登場します。特に、ANC機能を載せた「RZ-S500W」が179ドル(約2万円)とお手頃。3万円台のアップル「AirPods Pro」を脅かす存在になれるのでしょうか。
オーディオテクニカ「QuietPointシリーズ」からもNCイヤホンが
オーディオテクニカからも初のANC機能を搭載した完全ワイヤレスイヤホン「ATH-ANC300TW」が発表されました。北米市場向けの価格は229ドルから249ドル(約2.7万円)。春ごろに日本を含む世界各国で発売予定です。
本機はANC機能を搭載する同社のQuietPointシリーズ初となる完全ワイヤレスイヤホン。開発者が「日常使いの快適さにもこだわった」というANC機能の効果は、実機で試してみると何より音楽再生を優先した自然な消音効果を実感できます。消音効果は3段階から選べて、最も強いAirplaneを選択すると展示会場の喧噪がすっと静まりかえりました。耳の中にぐっと圧をかけられるような不自然なプレッシャーもありません。
ドライバーの口径は5.8mm。振動板にはDLC(ダイヤモンドライク・カーボン)コーティングをかけて、滑らかでつながりの良いサウンドに仕上げています。音質も解像感と力強さのバランスが取れていて、特に人の声が滑らかで耳に馴染みます。聴き疲れしないQuietPointシリーズらしいリスニング感が特徴です。
純正のConnectアプリでイヤホンの設定を変えたり、外音取り込み機能の「ヒアスルー」が選択できます。とっさに話しかけられたり素早く周りの音に耳を傾けたいときには、イヤホン本体のリモコンをタップして外音が即座に取り込めるクイックヒアスルーもあります。どちらもマイクに由来するノイズがなく、ふだん使いの機能として活躍しそうです。