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2020/4/7 18:00

「ネオクラシックカメラ」に似合うMFレンズを探せ! 「U3万円」から始める交換レンズ選び

ミラーレスには軍艦部が平らなレンジファインダー的デザインと、一眼レフ的デザインの2種類があります。万能に使えるのが一眼レフタイプ、より趣味性の高いのがレンジファインダータイプという棲み分けがあり、なかでもクラシックレンズが似合うのが、FUJIFILMとOLYMPUSのミラーレスです。

 

今回は先日、私が購入したFUJIFILM「X-E3」に似合うMF(マニュアルフォーカス)レンズをレンズ専業メーカーから選んでみようという企画です。FUJIFILMのXマウントを供給しているレンズ専業メーカーは数少ないのですが、ハイコスパで金属パーツを多用して作りもいい、焦点工房が輸入する七工匠(7Artisans)というメーカーの交換レンズを見つけました。ここから6本のレンズをセレクトして、2回に分けてご紹介します。

↑EVFを搭載してMFのピントが合わせやすいFUJIFILM「X-E3」と七工匠の交換レンズ

 

180度撮れる対角線魚眼レンズ「7Artisans 7.5mm F2.8 Fish-eye II」

カメラ好きなら1度は興味を抱いたことがあるに違いない魚眼レンズ。レンズのカーブが魅力的、見えるモノすべてが写ります。物欲に負けて購入しても意外に出番の少ないレンズなんです。しかし、2万2000円なら迷わない。APS-Cサイズのミラーレス専用設計、金属フード一体型でレンズはアルミ合金製です。何とレンズキャップも金属製でこれがまた渋い味を出しています。重さは約280g。FUJIFILMのミラーレスに付けると11mm相当になります。

↑魚眼レンズとは思えないコンパクトなサイズです。フードは固定式でズレる心配がなく金属製なので質感もいいですね

 

↑付属の金属製レンズキャップ

 

↑ピントリングの無限遠から1mの距離がほとんどピントを合わせなくても撮影できます

 

【作例】最短撮影距離12cmで普段はピント合わせも不要!

MFレンズの楽しみといえば、自分でピントリングを回してピントを合わせることですが、急いでいるときはシャッターチャンスを逃がす原因にもなります。そこで活用したいのが被写界深度を使ったパンフォーカス。被写界深度とは、レンズに絞り値が記載された線があり、その範囲にピントが合うという意味です。パンフォーカスは手前から奥までピントが合った状態を示します。

 

例えばF16という数値が両側にあるので、右側に無限遠マークを合わせると、左側の数値が0.4になったとしましょう。このレンズはF16まで絞れば40cmから無限遠までピントが合った写真が撮れることを意味します。広角レンズほど被写界深度は深く、絞り込むほどピント合う範囲は広くなります。AFレンズがなかった時代は被写界深度を使ってスナップ撮影していました。もちろん、いまでもスナップ撮影には有効な手段です。魚眼レンズの被写界深度はすごく深いのでF5.6で1mに合わせればピント合わせ不要で使えます。ピント合わせが必要なのは接写するときぐらいでしょう。

↑ビルの狭間にある釣り堀です。広いので広角レンズでも、なかなかその全貌を収められませんでした。魚眼レンズがあればどんなに広い風景でも、その全貌を入れて説明できます

 

↑最短撮影距離は12cmなので近景から遠景まで収められます。手前の花にテントウムシがいたので慌ててピントを合わせて撮影。右下に指が写ってしまいました。魚眼レンズ“あるある失敗例”です

 

↑お洒落なカフェでモデル撮影しても、エッシャーのだまし絵のように窓枠がぐにゃぐにゃに写ります。予想のつかない写真が撮れる。これもまた魚眼レンズの醍醐味といえます

 

正統派超広角18mm相当のお散歩レンズ「7Artisans 12mm F2.8」

一眼レフを手に入ると望遠レンズが欲しくなるもの。メーカー側もズームレンズが何倍ズームかを競い合っていますが、望遠鏡のように遠くのモノが大きく見える効果はインパクト抜群なものの、実際に撮影すると広角レンズを使う機会の方が多いことが分かってきます。

 

いまではスマホの標準レンズは28mmですが、銀塩時代の標準レンズと言えば50mmでした。広角は35mm、28mmと24mmは上級者向けの広角、20mは超広角レンズと呼ばれ特殊レンズでした。それが普通の人の限界で、18mmなどは「ニコンの世界」という豪華版レンズカタログで眺めるだけの存在だったのです。このカタログ本の最初に出てくる超広角レンズが15mmF5.6でした。画角は110度あって、デメキンのようなレンズなのでフードは固定式、フィルターが使えず、切り替え式の専用フィルターを内蔵していました。

 

7Artisansの12mmは、重さわずか290gでφ63×67mmのコンパクトサイズで18mm相当の超広角レンズ。多くのミラーレスの標準ズームレンズの広角端は28mmか24mmなので、これはズームでは見られない超広角といえます。被写体深度を使えばピント合わせ不要なので、スナップ撮影にも最適です。最短撮影距離は20cm。レンズはアルミ合金で金属製の固定式フードが付いています。

↑超広角なのに控え目な花形フードが渋い。こちらも金属製で固定式。金属製のレンズキャップも付属します。残念ながらフィルターは使えません

 

↑F16まで絞ると40cmから無限遠までピントが合います。F8でもパンフォーカスが効いてピント合わせ不要でバンバン撮れます

 

【作例】広い所も狭い所も広々と撮れる

絞り込むと写真の四隅が暗くなる周辺光量落ちも楽しめます。渋めの発色のクラシッククロームモードを使用。ビルが台形に変形しているのは超広角レンズ特有のパースペクティブの強調によるものです。これはカメラをあおると強調されるので、歪みを出したくない場合はカメラの水平と垂直に気を付けましょう。EVFにグリッドか水準器を表示させるのがマルです。

↑超広角レンズ特有のパースペクティブの強調によりビルが台形に

 

広々とした公園を超広角で撮ることで、ポツンと花見をするカップルの孤立感を強調できました。28mmがスマホの標準レンズとなった現在、広角が24mmでは物足りません。20mmか18mmくらいは欲しいところです。

↑桜の木など風景では超広角でも歪みが目立ちません

 

水平垂直に気を付ければモデルを撮影しても違和感はありません。人物は端に入れると歪みやすいので、なるべくレンズ中央に収めます。このように引きがない室内などで役立つレンズです。遠近感が強調されるのを利用して、足を長く見せることもできますよ。

↑超広角で人物を撮るときはなるべく中央に

 

1本は欲しい、明るい標準レンズ「7Artisans 35mm F1.2」

iPhone11Proの望遠レンズの焦点距離は52mmです。銀塩時代は標準レンズの画角だったのですがいまでは格上げされています。この35mmも「X-E3」に取り付けると52mmになるのでやや望遠に感じられます。歪みが少なく遠近感は自然な印象。そして、ズームレンズでは実現できない開放絞り値F1.2という明るさがポイントです。絞り値が明るいほど背景がボケるので主役を強調しやすくなります。邪魔者はボカせとばかりに画面構成も簡単にできますし、F8まで絞ればパンフォーカスでスナップもOK。風景から人物まで撮れる万能レンズといえるでしょう。最短撮影距離は35cm、重さは150gです。

↑鏡胴が短くレトロな雰囲気が漂う。開放絞り値F1.2とは思えないコンパクトなレンズ。ピントリングには指がかりがあり持ちやすく、またデザインのポイントにもなっています

 

↑金属製レンズキャップ付属というのがニクいですね

 

↑F8まで絞ると1mから無限遠までピントが合います

 

↑今回のレンズの中で最もレトロなデザインのレンズです。いろいろなデザインのカメラに似合いそう

 

【作例】普通に写って誰にでも使いこなせる

私も普段、52mmというレンズは使っていないので、これ1本しかないと思うと最初は戸惑いました。思ったより画角が狭く感じます。やはりもっと広角をメインにして、このレンズは望遠寄りとして使った方がいいでしょう。クセのないレンズなのでポートレートに向いています。広角は歪みやすいので、明るい標準レンズで人物を撮る方が失敗しません。建物も歪まない。35cmまで寄れるので料理やスイーツも撮れますね。

↑太陽が入るぐらいの逆光ですが、意外にゴーストが出ません。鳥が飛んでいた瞬間をパンフォーカスで捉えました

 

↑クラシッククロームで撮ったトタンの外壁。色褪せた感じが実際以上に強調されて昭和な雰囲気が漂いました。建築物を撮っても自然な遠近感と歪みのない絵が撮れます

 

↑モデルとの距離感は広角より離れるので、人によってはこの方が取りやすい距離かもしれません。ポートレートレンズと呼ばれる85mmまで望遠になると私には距離感がありすぎて会話しにくくなると感じます。52mmのボケは独特ですが悪くはありません

 

次回は25mmF1.8、55mmF1.4、60mmF2.8 Macroレンズが登場します!

 

モデル/こうやもゆ

撮影協力/ペンギンカフェ(Penguin café)

 

【フォトギャラリー(画像をタップするとご覧いただけます)】

 

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