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2022/2/17 19:15

ワイヤレスイヤホンみたいな“目立たない補聴器”「Jabra Enhance」登場

デンマークのオーディオブランドJabra(ジャブラ)から、スマホとBluetoothで接続して音楽リスニングとハンズフリー通話が楽しめるだけでなく、耳の聞こえをサポートする補聴器としても使えるワイヤレスイヤホン「Jabra Enhance」が2月25日に発売されます。

↑耳の聞こえをサポートするワイヤレスイヤホン「Jabra Enhance」

 

Jabraの「目立たない補聴器」

Jabraといえば左右独立型の完全ワイヤレスイヤホン「Jabra Elite」シリーズが、国内の音楽ファンにも人気です。このJabra Enhanceは、“耳あな補聴器”として日本の医療機器認証も取得しています。40代以降から、耳の聞こえにくさを感じている軽度・中等度の難聴の方を対象としたデジタルデバイスとなっています。特殊な聴力強化機能を搭載しているため、販売価格は8万9000円とオーディオリスニング用の完全ワイヤレスイヤホンに比べると少し高め。ただし、医療機器として販売される補聴器なので、消費税のかからない非課税対象商品になります。

 

医療機器認定も取得したデバイスですが、Amazonのオンラインストアのほか、ビックカメラ、ヨドバシカメラの店舗とオンライン、および全国の補聴器専門店、補聴器を取り扱う眼鏡店、Jabraのオンラインストアで販売されます。

 

カラーバリエーションはダークグレーの1色。Jabraのオーディオリスニング用完全ワイヤレスイヤホン「Jabra Elite 75t」の約半分の本体サイズなので、耳に装着した状態でとても目立ちにくい外観になっています。

↑右がオーディオリスニング用の「Jabra Elite 75t」。左のJabra Enhanceは約1/2のサイズにコンパクト化しています

 

聴力強化・音楽・通話の機能を併せ持つ「3in1」

実は、Jabraは補聴器など医療機器のメーカーとしても世界的に有名なGNグループ傘下のオーディオブランドです。Jabra EnhanceにはGNグループが培ってきた補聴器など、聴覚支援を目的とする医療機器の開発技術、そしてJabraがコンシューマ向けのポータブルオーディオを展開するなかで得てきたノウハウが詰まっています。

 

イヤホンのデザインは、年齢の若い方も抵抗感なく着けられるように、オーディオ用のワイヤレスイヤホンに近付けています。筆者も実機を装着してみましたが、イヤホンが耳から飛び出さないサイズなので、いつも耳に着けっぱなしにしても良さそうです。

 

また補聴器でありながらBluetoothのA2DPオーディオ用プロファイルに対応しているので、スマホで再生する音楽やビデオの音声、ハンズフリー通話音声を聴く用途にも使えます。Jabraでは本機の特徴を、聴力強化・音楽・通話の機能を併せ持つ「3in1仕様のワイヤレスイヤホン」としてアピールしています。

↑音楽を聴いたりハンズフリー通話にも使えます

 

実際に着けっぱなしで使うとなれば、内蔵バッテリーのスタミナも気になるところです。Jabra Enhanceは1回のフル充電から、イヤホン単体で最長10時間の連続再生に対応しています。ケースによる充電を繰り返せば、最長30時間の連続使用にも対応します。イヤホン本体はIP52等級の防塵・防滴対応です。汗や雨に濡れても素敵を拭き取って使えば故障の心配はなさそうです。

↑Jabra Enhanceの充電ケース。最長30時間の連続リスニングに対応します

 

課題はペアリングして使えるスマホがiPhoneに限られること。対応デバイスはiOS 15以降をインストールしたiPhone 11以降の機種という条件も付きます。日本は海外に比べてiPhoneユーザーの割合が多いともいわれていますが、シニア層の方にはAndroid OSベースのシンプルスマホを使っている方も多いので、なるべく早くAndroidユーザーにも門戸を開くべきだと思います。

 

実機を体験:人の声がとてもクリアに聞こえるイヤホン

iPhoneとのペアリング方法は、通常のBluetoothに対応するオーディオリスニング用のイヤホンと少し違います。専用アプリのJabra EnhanceをiPhoneに入れて、ガイダンスに従ってセットアップを進めれば迷うことはないでしょう。「設定」の中に並ぶ「アクセシビリティ」から、「ヒアリングデバイス」として登録します。

↑iOSのアクセシビリティにヒアリングデバイスとして登録されます

 

ペアリングを済ませたらアプリを使って初期設定を行います。本機は補聴器なので、使い始める前にユーザーの耳にあった「聞こえ方」の調整が大事なポイント。設定はアプリのガイダンスに従えば迷うことなくできますが、イヤホンを耳に装着して、聴力検査のようにビープ音を聴きながら聞こえ方を調べていきます。とても小音量のビープ音を聴き分けなければならないため、静かな場所で初期設定を行う必要があります。

 

左右の耳ごとに約数分間の聴力チェックを行った後に、アプリから3種類に分かれているリスニングモードを選択します。「アダプティブ」は周囲の状況に応じて自動的に会話を聞きやすくするモード。「フォーカス」は正面にいる会話の相手の声にズームインして聴きやすくするモードです。もうひとつの「サラウンド」は周囲の音を多めに取り込んで聴きやすくします。基本の音量設定もアプリからできます。

↑Jabra Enhanceアプリからユーザーの聞こえ方に合うサウンドに調整したり、3つのリスニングモードに切り替えが可能

 

左右のイヤホンに2基ずつ、合計4基を搭載するビームフォーミングマイクにより、人の声がとても自然に再現されます。マイクの性能に由来する電気的なノイズ感がとても少なく抑えられています。賑やかなカフェで試してみましたが、周囲の環境音を抑えつつ、正面に向かい合いながら話す人の声が明瞭に聞こえてきます。

 

フィッティングはアプリで簡単。でもサポートが必要になる場合もありそう

一般的に補聴器は使用開始前後に、ユーザーの聞こえ方の程度に合わせたフィッティングを入念に行わなければならないデバイスです。Jabra Enhanceの場合、面倒な初期設定をモバイルアプリで簡単にできることを特徴としていますが、もしスマホを使い慣れていない高齢の方が使うのであれば、家族によるサポートも必要になるかもしれません。またユーザーの耳の聞こえ方をデバイスが解析して、自動的に聞こえ方を最適化する機能は搭載していないため、ユーザーの耳に合ったリスニング感になっているかどうかは、本人の自己採点に委ねられます。本機を長く、より心地よく使い続けるためには、購入後に通い付けの耳鼻咽喉科へ相談することもアリなのかもしれません。

↑専用アプリはシンプルな機能に抑えていますが、スマホに不慣れなユーザーが使う場合は、周囲のデジタルガジェットに明るい方が初期設定をサポートする必要があるかもしれません

 

オーディオ用イヤホンとしての使い心地はiPhoneと組み合わせてチェックしました。補聴器としての機能はオフにならないため、「やや強めの外音取り込み機能」をオンにしたまま音楽を聴くような感覚になります。従って屋外で使用すると、音楽と一緒に周囲の声もよく聞こえてきます。エンターテインメント用途にはやはりJabra Eliteシリーズのような遮音性能の高いオーディオリスニング用イヤホンがメインになると思います。Jabra Enhanceは通話音声がとても聞き取りやすいイヤホンだと思いました。

 

もしも耳の聞こえ方に自信がなくなってきたら、一度Jabra Enhanceを試してみても良いと思います。発売後に家電量販店の実機展示もチェックしてみて下さい。

 

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