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2022/6/3 21:10

ソニーを超えるのはソニーだ! 進化したノイキャンヘッドホン「WH-1000XM5」を試した

約2年ぶりにアップデートを遂げた、ソニーのワイヤレスヘッドホン“1000Xシリーズ”の最新モデル「WH-1000XM5」をレポートします。史上最強を更新したノイキャン性能、新開発のドライバーによるハイレゾ再生の実力とは!?

↑ソニーのアクティブノイズキャンセリング機能を搭載するワイヤレスヘッドホンのフラグシップ「WH-1000XM5」

 

最新機種のWH-1000XM5はここに注目!

春以降から街に、旅に出かけられる機会が少しずつ増えました。電車やバス、飛行機など乗り物による移動を選ぶ際には、周囲の騒音をシャットアウトしながら音楽や映画、ゲームなどコンテンツの音に集中できるノイズキャンセリングヘッドホンを備えたいところです。

 

ソニーの1000Xシリーズはその消音性能、ハイレゾ再生にも対応する高音質が2016年の誕生以来、国内から海外まで多くのファンを魅了してきました。

↑ソニーの最新オーディオ技術を満載するWH-1000XM5

 

最新第5世代となるWH-1000XM5は、以下4つの特徴がポイントになります。2020年9月発売の第4世代機からのアップデートにも要注目です。

1.新たに専用設計したハイレゾ対応30ミリドライバー
2.シリーズ史上最強を更新したノイキャン性能
3.大胆な変貌を遂げたデザイン
4.AIにより高音質化した通話性能

 

新開発のドライバーで音はどう変わった?

それでは最初のテーマである「サウンド」からチェックしていきましょう。

 

WH-1000XM5には30ミリ口径の新開発ダイナミック型ドライバーが搭載されました。本機まで、1000Xシリーズはずっと40ミリ口径のドライバーが採用されてきました。口径サイズを小さくしながら、低音から高音までスムーズにつながるサウンドが新しいドライバーの特徴であるとソニーは説明しています。

 

ハイレゾオーディプレーヤー、ウォークマンの上位機種に使われている高音質な部品や“はんだ”なども投入されています。また基板のレイアウトを最適化したことにより、音の明瞭度が上がりました。主に音の広がりや定位感の向上にも貢献しています。

 

WH-1000XM5もまた、ソニーのハイレゾワイヤレス再生を実現するBluetoothオーディオ技術「LDAC」に対応します。LDAC接続が可能な「Xperia 1 IV」と組み合わせてハイレゾ音源を聴いてみました。

↑LDACに対応するスマートフォン、Xperia 1 IVと組み合わせて試聴しました

 

ボーカル、ピアノにギターなど楽器のメロディが映えます。中音域の肉付きがとてもよく、声や楽器の音色、輪郭線、質感などが鮮やかに感じられます。高音域は雑味がなく透明。爽やかな余韻が楽しめます。アップテンポなジャズはドラムスのハイハットやシンバルが刻むリズムの粒立ちがとてもよく、軽やかな印象です。

 

そして低音は重心が低く、鋭く深く沈み込みます。演奏の足もとがしっかりと安定しているので、音場の立体感もまた鮮烈です。大編成のオーケストラやジャズバンドの楽曲を聴くと、奥行きの深い音場の広がりに圧倒されました。

 

新設計のドライバーは口径が10ミリほど小さくなりましたが、パワーや解像感の不足は一切なく、それどころか緻密な情報の描き込みとダイナミックな鳴りっぷりの良さが、第4世代機を超えてまた極まりました。

 

フラグシップの1000Xシリーズにふさわしい、Hi-Fi志向のプレミアムサウンドです。音質の魅力だけでも、WH-1000XM4からの買い換えも含めて、いまノイズキャンセリングヘッドホンを買うなら新しいWH-1000XM5を選ぶ価値があると思います。

↑長時間リスニングにも適した快適な装着感を実現したイヤーパッド

 

1000Xシリーズ史上最強のノイキャン性能

続いてノイズキャンセリング機能をチェックします。とかくノイズキャンセリングヘッドホンやイヤホンはその消音性能の「強度」に注目が集まりがちです。飛行機の中など、騒々しい場所で自分が腰を落ち着けてコンテンツを楽しみたい時には、周囲の雑音が完璧に消えてくれた方が良いかもしれません。

 

ただ、ポータブルオーディオ機器であるワイヤレスヘッドホンは街を歩きながら使うことも多々あります。ソニーの1000Xシリーズは適度に強力な騒音性能と、必要なシーンでは周囲の環境音もクリアに、コンテンツの音と違和感なくミックスしながら聴ける「外音取り込み」の性能との“バランス”を重視してきました。

 

新機種のWH-1000XM5はソニーが独自に開発したSoCである「V1」から、ノイズキャンセリング専用の処理回路「QN1」を切り分けて両方を搭載。より賢く、きめ細かなノイズキャンセリング処理ができるようになりました。

↑統合プロセッサー「V1」と、アクティブノイズキャンセリング機能に特化したプロセッサー「QN1」

 

ヘッドホンに搭載するマイクはマーク4の計4つから、マーク5では計8つに増えています。集音性能が高くなっただけでなく、それぞれのマイク信号をふたつのプロセッサーが賢く処理することにより、ヘッドホンの装着ズレや気圧の変化など、条件の変化を常に検知して最適化する「オートNCオプティマイザー」を新設しています。

 

WH-1000XM2から搭載された「アダプティブサウンドコントロール」も継承しています。ペアリングしているスマホのセンサー情報を頼りに、ヘッドホンを装着するユーザーが止まっている時/歩行している時/走っている時/電車に乗っている時を自動判別してノイズキャンセリングと外音取り込みのレベルを自動で切り換えます。

↑Sony Headphones Connectアプリから「アダプティブサウンドコントロール」を設定

 

新型ドライバーがより充実した低音を鳴らせるようになったため、音楽再生は従来よりも低いボリュームで、音の聴こえ方に厚みが感じられるかもしれません。

 

屋外でWH-1000XM5のノイキャンと外音取り込みを試しました。専用アプリ「Sony Headphones Connect」から、本体左側の「NC/AMB」ボタンで機能を切り替える設定が選べます。

↑本体側面の「NC/AMB」ボタンからノイキャンと外音取り込み機能を切り替えます

 

消音性能を屋外のカフェで試しました。ノイキャンオンの状態では、人の話し声やざわつきがグンと強力に抑えられます。音楽などコンテンツを再生してしまえば、ほぼ人の声は聞こえなくなるといっていいでしょう。誰かに話しかけられたときには、右側イヤーカップを手のひらで覆うようなジェスチャー操作で一時的に外音取り込みをオンにする「クイックアテンションモード」が便利です。周囲の環境音は、例えばコーヒー豆をひくグラインダーのノイズが、音楽を一時停止している状態でもほぼ完全に聞こえなくなりました。これは驚きでした。

 

コンテンツを聴きながらも周りの音に気を配りたい時には、アンビエントサウンド(外音取り込み機能)をオンにします。マイクの“ノイズっぽさ”が乗らない、クリアな外音取り込みのチューニングはさすがソニーです。ノイキャンと外音取り込み、どちらの機能をオンにしてもサウンドに心地よく集中できました。

 

筆者の場合、自宅で仕事をする家族もオンライン会議をしています。互いに仕事に集中したい場面で、相手の通話音声に邪魔されないようにノイズキャンセリングヘッドホンを身に着けていることもあります。ソニーの1000Xシリーズが各自用に1台ずつあると大変に心強いです。

 

大きく変わった本体とケースのデザイン

WH-1000XM5は、シリーズ初代のMDR-1000Xからデザインを大胆に変えています。

↑曲線を活かした柔らかなデザインになった本体

 

スライダーは無段階にサイズ調整ができるようになり、可動部のがたつきを抑えたサイレントジョイントによりスムーズなハンドリング性能を実現しています。外観も滑らかな曲線を活かしたシルエットに生まれ変わりました。側面タッチセンサー、ボタンなどの配置はマーク4からほぼ変わらないので、従来機種から買い換える方も操作はすぐに馴染めると思います。

↑がたつきを抑えたサイレントジョイントを採用するヒンジ

 

ヘッドバンドやイヤーパッドには通常の合成皮革よりも柔らかく、汗濡れにも強いソフトフィットレザーが採用されました。筆者の場合、メガネをかけたままヘッドホンを装着しても、イヤーパッドが耳のまわりに優しく馴染んでくれたので、フィット感はかなり安定していると思います。質量はマーク4から4g軽くなっており、約250gとなります。

 

筆者がWH-1000XM5のデザインについて一点馴染めないのは、従来機種まで採用されてきたスイーベル+折りたたみ構造が省かれてしまったことです。専用ケースにコンパクトに収納できることもマーク4までの魅力でしたが、マーク5が変形できるのはフラットな形状までです。ケースも頑張って薄型化しているのですが、縦横サイズが大きくなっているのでバッグの中の空きスペースを結構占めてしまいます。手荷物をコンパクトにしたい空の旅には、新機種の発売後も引き続き併売されるマーク4の方が向いているかもしれません。

↑変形機構がスイーベルのみになったヘッドホン。ケースも少しマーク4より大きくなっています

 

↑ケースの中にケーブルを収納するポケットがあります

 

AIのチカラで通話時のノイズも消す

WH-1000XM5は本体内蔵のマイクによるハンズフリー通話の音声品質にもこだわっています。口もとを狙って正確に集音できるビームフォーミングマイクを搭載。約5億サンプルを超えるデータによる機械学習を重ねてきたというAIにより、ユーザーの声とそれ以外の環境ノイズを分離するフィルターがとても成熟しています。

 

家族にマーク5を装着してもらい、テレビの真横や車通りの多い道からハンズフリー通話を試したところ、家族の声だけがはっきりと聞こえて、背景で鳴っているはずの音が聞こえなくなります。

 

「本当はこんなに騒音がある場所でしゃべっているんだよ」と、通話相手にWH-1000XM5の高性能を自慢することができない、おくゆかしい機能です。オンライン会議などビジネスシーンで本機を使えば、「いつも声がはっきり聞こえる人」としてあなたのイメージアップにつながることは間違いありません。

 

音質とノイキャン性能に確かな成長を感じる

ほかにもバッテリー性能はマーク4と比べて、ノイズキャンセリングオフ時の最大駆動時間が伸びていたり、急速充電はUSB PDに対応したことで、約3分間チャージすると最大3時間分のバッテリーが満たせるクイック充電機能が加わりました。

 

2022年5月末時点、オンラインのソニーストアではマーク5が4万9500円(税込)、マーク4が4万1800円(税込)で販売されています。性能的には既に完成度の高いマーク4を、音質やノイキャン機能の出来映えでさらに超えてきた最新のマーク5には7700円の価格差を超える価値があると筆者は思います。とはいえ新製品の購入を検討する際にはデザインや装着感、ケースを含む持ち運びやすさなども大事な決め手になります。ショップに展示されている実機を体験しながら、ぜひ比べてみてください。

 

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