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2023/8/19 11:30

分離するスピーカー、ソニー「HT-AX7」レビュー。ちっちゃい分身どこに置く?

↑ソニーのHT-AX7。ソニーストアでの価格は7万7000円(税込)

 

「立体音響」なる言葉をご存知でしょうか? 3Dオーディオと呼ぶこともありますが、これは音場を三次元的に捉える方式のこと。アップルの空間オーディオ、ソニーの360 Reality Audio、あるいはDolby Atmosなど、各メーカーが独自のシステムを提案しており、近年特に注目されている技術です。

 

右耳と左耳の2方向から聞こえているはずの音が、上や後ろなど、立体的な奥行きをもって感じられるのが立体音響の魅力。ただし、そのサウンド表現には技術的な難しさや、複数のスピーカーが必要になるなどの課題がありました。いわば映画館のような聞こえ方を再現するようなものですからね。

 

こうした課題を「スピーカーを好きな場所に置けるようにすれば良いのでは?」と、おもしろいアプローチで解決してきたのが、今回レビューするワイヤレススピーカー「HT-AX7」です。かなり独特な構造をしていますよ。

 

リアスピーカーを分離させて、立体的な音場を形成

↑一見するとスタンダードなワイヤレススピーカー

 

見た目こそシンプルでおしゃれなスピーカーですが、TOP画像を見てもわかるように、上部の円盤型の部分は取り外しが可能。つまり、オーバル型の本体(フロントスピーカー)+円盤型のリアスピーカー×2基の、合計3基のスピーカーが1つになっているんです。

↑天面はシリコンカバーで覆われており、再生や音量操作ボタンはカチッと押し込んで操作

 

使い方は一般的なワイヤレススピーカーと同様で、Bluetoothでスマホやタブレットと接続するだけ。映画鑑賞とも相性が良いため、テレビと無線接続するのもオススメです。

↑リアスピーカー設置部には充電端子が備わっている

 

フロントからリアスピーカーを取り外すと、その下には充電端子があります。フロント本体への充電はUSB Type-Cを使いますが、リアスピーカーへはフロント側から無線で給電するわけですね。バッテリー駆動時間はスピーカー全体で約30時間です。

 

リアスピーカー自身の裏側はこんな感じ。中央の丸い部分が充電端子で、本体の端子側に接触させると充電が可能です。

↑リアスピーカーの裏側には、電源ボタンやLRの向きが印字されている

 

↑インテリアのような優しい雰囲気を与えるファブリックカバー

 

フロントもリアスピーカーも、同色のファブリック素材で覆われています。ガジェット感が抑えられており、モダンなインテリアのようにも見えますね。

 

スピーカーのスペックは、フロントが49×71mmのドライバーを2基搭載、エンクロージャーはパッシブラジエーターを採用。リアスピーカーは60mmのドライバーを1基ずつ搭載し、エンクロージャーにはアコースティックサスペンションを採用しています。

 

前と後から音を出せば、それはもう確実に立体的

フロントとリアを分離させることによるメリットは、立体音響空間を即座に形成できること。映画館のような立体的な音響体験を、場所を選ぶことなく作り出せるのが最大の特徴です。

 

オフィシャルの動画では「ミニマルシアター」と銘打っており、ホームシアターのミニマル版を意識している感がありますね。ソニーは立体音響を形成できるスピーカーを数多く手掛けていますが、その多くは複数のスピーカー設置&購入が必要でした。HT-AX7なら、そうした複数購入が不要になるわけです。

↑リアスピーカーは頭の背後に置くのがベスト

 

たとえばこうして、ソファの背もたれにリアを配置し、自分の正面にはフロントを配置。この状態で音楽や映画を鑑賞すると、立体的な音響を感じられるわけです。ソファはテレビに向かって配置してあることが多いため、スピーカーをテレビと接続すれば、まさにミニマルシアターを構築できますね。

 

気になる音質は、音楽を再生すると音が正面からではなく全方位から聞こえる感覚があります。ジャンルによってはその効果がわかりにくいものもありますが、「普通のスピーカーとは違うな」という感じはしました。ちょっとした、包まれ感があります。

 

一方、音楽ではなく映画を視聴すると「効果音があちこちから聞こえる!」と、立体音響のウマ味をダイレクトに感じました。たとえば騎馬隊が突撃するシーンでは、蹄の音や剣戟の音などが四方八方から聞こえてきて、かなり映画館っぽい印象に。リアを背後に置いた場合と、あえてフロントに戻した場合とで比較してみましたが、格段に臨場感が違いました。

↑上向きではなく、あえて角度をつけて配置すると聞こえ方が変わる

 

リアから出る音は中低音がややカットされており、フロントから出ている音とチューニングが異なります。立体音響を作り出す「SOUND FIELDエフェクト」を、ボタンを押してオフにすると、フロントとリアとが同じ音を再生するようになります。こうなると部屋全体で同じ音が鳴ってくれるため、複数のスピーカーを繋ぐペアスピーカーのような使い方が可能です。リビングにはフロントを、キッチンにはリアを配置して、同じ音楽を楽しむといった使い方ですね。

↑スピーカー本体の持ち運びはスムーズ。あちこち設置してみて、お気に入りの場所を探すのも一興

 

従来のホームシアターのように、聴く場所を固定する必要がなくなったのは画期的。しかし、実際にフロントとリアをベストな場所に配置できるかは、ご家庭の間取りに左右されるでしょう。ソファがないお家もありますし、かといって床置きするのも気が引けるものです。

↑デスクの左右に置いても、一応の広がりは感じられる

 

たとえばデスクに置いて使うなら、無理してリアを背後に置かず、リスナーの左右、離れた位置に配置するという方法も。壁際に配置すると音が回り込んでくれるため、いくらか立体感は強まります。

 

タブレットでの映画視聴が特にオススメ。部屋全体を音楽部屋にすることも

HT-AX7はアプリでの細かいコントロール(低音の音量やリア単体の音量調整など)が可能なため、テレビよりもスマホやタブレットと繋ぎたくなります。しかし、映画を見るならテレビのような大画面で見たくなるのも事実。こうなると、アプリが使えてかつスマホよりも大画面であるタブレットとの接続がベストとなります。公式PVでもタブレットと繋いでいましたね。

↑デザイン性が高いため、ポンと置いていても絵になる

 

使い方としては、普段は一般的なポータブルスピーカーのように定位置に据え置いて、映画に没入したいときには、好きな場所にリアを設置してミニマルシアターを形成する、といった形が良いんじゃないかなと。普段から無理にリアを分離させて使おうとする必要はないでしょう。

 

一方で、音楽再生をする場合はフロントとリアを部屋の離れた場所に配置して、部屋全体をミュージックルームのようにするのもおもしろいですよ。これならリスニングポジションも問わないので、かなり気軽に使えます。低音をマシマシにすれば、かなりのパーティ感を醸し出せます。

 

などなど、HT-AX7はさまざまな使い方を提案できるスピーカーでした。3つに分割できるスピーカーがあったら、皆さんならどんな場所で鳴らしてみたいですか?

 

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