東芝から薄型テレビ“レグザ”シリーズの2017年新製品が発表されました。今回は従来の液晶テレビだけでなく、初めて大型の有機ELテレビがラインナップに登場。いずれも骨太なモデル揃いの新製品について、詳細をチェックしていきましょう。
有機EL&液晶、新しいレグザの上位モデルは全5機種
まずはラインナップの内訳と、それぞれの発売時期・価格の情報はこちらの通りです。
・65X910(65型)/3月上旬発売/オープン価格(市場想定売価90万円前後)
・55X910(55型)/3月上旬発売/オープン価格(市場想定売価70万円前後)
・65Z810X(65型)/2月上旬発売/オープン価格(市場想定売価63万円前後)
・58Z810X(58型)/2月上旬発売/オープン価格(市場想定売価42万円前後)
・50Z810X(50型)/2月上旬発売/オープン価格(市場想定売価35万円前後)
今回から「東芝レグザの高画質」を代表する2つのフラグシップシリーズが展開されることになります。東芝では有機ELと液晶、どちらかが上位という位置づけではなく、それぞれデバイスの特徴を活かした高画質をアピールしていく方針を示しています。例えば映画や音楽ライブなど、部屋を暗くして映像に没入しながら楽しみたいコンテンツは有機ELレグザ、地デジなど日常的に視聴するテレビ番組なら液晶レグザといった具合に、それぞれの強みにフォーカスしていくと、どちらが自分の楽しみたい映像にマッチしているのか自ずとみえてくるのではないでしょうか。
ちなみに5モデルはすべて4K/HDRに対応しています。HDRの技術方式はUltra HDブルーレイやNetflix、ひかりTVなどの配信系コンテンツなどに多く採用されている「HDR10」と、放送系の主流になると言われている「HLG(Hybrid Log Gamma)」のふたつがサポートされています。
有機ELテレビ専用の高画質処理エンジンを1から設計
テレビにとって最も大切な映像の「画質」を制御するエンジンは、有機ELテレビ専用にチューニングした高画質処理エンジン「OLEDレグザエンジン Beauty PRO」を新開発。X910シリーズに搭載しました。
ポイントは有機ELディスプレイの特徴をとことん生かすこと。有機ELは「自発光型」と呼ばれ、素子に電圧をかけると発光して明るさや色を再現するディスプレイデバイスです。バックライトの明滅を制御する液晶ディスプレイに比べて、深く沈みこむ黒色や明部の煌めき感の再現力に長けると言われていますが、その有機ELならではの特性を伸ばしつつ、映像の階調感をよりきめ細かく引き出すことが新製品の開発テーマになったそうです。明部・暗部の繊細な表現力を高める「ローカルコントラスト復元」は新しい有機ELレグザが備える特徴的な独自技術のひとつです。
映像のノイズ感をさらに低く抑えるために、映画など24フレーム/秒のコマ数で収録されている映像が入力された場合には、レグザが得意とする映像の精彩感を際立たせる超解像技術を2度念入りにかける「熟成超解像」も新しい機能です。
今度のレグザは、有機EL・液晶ともに「人の肌を美しく再現できるテレビ」であるところも要チェックです。映像全体を瞬時に解析して、画面に“肌色”が表示された場合には、明るい部分の白トビを抑えて、肌の質感や正確な色の階調性を再現する「美肌リアライザー」を採用しています。好きな俳優やアイドルが登場する映画やドラマがよりいっそう楽しく見られそうですね。
スポーツ番組など動きの激しい映像を視聴する場合は、動画の「ホールドボケ」(フレームが連続表示される映像の、前のコマが脳内にホールドされて残像として感じられる現象)を解消するために、60p/24pそれぞれの映像に最適なタイミングで黒画面を挿入して、キレのあるクリアな映像に仕上げる「ハイクリア」「ハイモーション」駆動の機能も有機ELレグザに採用されました。
ネット配信系の映像コンテンツが入力された場合、インターネットの通信量が変化しても都度最適な超解像処理をかけて高精細な映像に整える「ネット映像オートピクチャー」も、流行のNetflixなどVODサービスで映画やドラマを楽しむ際に有効な機能です。
HDRの映像信号が入力された場合、明暗の階調感をきめ細かく再現するだけでなくワイドで自然な色彩も蘇らせる「広色域復元プロ」や、ディープラーニングのアルゴリズムを駆使しながら映像の種類をシーンごとに解析、画質を自動で最適化する「AI深層学習シーン解析高画質」は、半導体やソフトウェア開発のノウハウに経験豊富な東芝のレグザならではの高画質化技術です。
映像が浮いているように見えるデザイン
有機ELレグザは「フラッシュフロアスタンド」と呼ばれる、スタンドの高さを低く抑えて、パネルよりも前に出ない特徴的なデザインとしています。これにより、正面から見てディスプレイに表示される映像が最も映えるような効果を持たせています。スタンドは奥行き方向の長さをしっかり取って、ある程度の重量も確保しているので、ディスプレイが前のめりに倒れる心配もありません。スタンドは真ん中の位置から半分に分離するので、ディスプレイ側だけを壁掛け設置できるようにもなっています。
スピーカーはディスプレイの下側に、開口部を下に向かって正面からは見えないように配置したインビジブルデザインになります。左右2基のフルレンジスピーカーとシルクドームトゥイーターをマルチアンプで駆動する「有機ELレグザオーディオシステム」により、セリフが聴きやすく、効果音も迫力たっぷりのサウンドがテレビ単体で楽しめます。
液晶レグザの画質も一段と進化した
液晶レグザはZ20Xシリーズからデザインを大きく変えず、3種類の画面サイズもそのまま踏襲されました。でも中味は大きく変わっています。
画質処理のエンジンは新開発の「レグザエンジン Beauty PRO」。特に人肌のリアルな再現力を高めたことが大きな違いになります。技術的な仕組みは有機ELレグザと一緒ですが、液晶ディスプレイの特徴を最大限に活かせるように独自のチューニングが行われました。深い黒色の再現、明部の煌めき感なども4K/HDR映像の時代にふさわしい仕上がりを実感できます。
有機ELレグザにも搭載されている「アダプティブフレーム超解像」は、いつも視聴する地上デジタル放送のテレビ番組をより精彩感高く表示するため新技術です。一般的にテレビで放送される番組の本編映像とCMはそれぞれに異なるフレーム枚数の映像として収録されています。映画やアニメなど、コンテンツの種類によっても変わってきます。従来のレグザはディスプレイに表示する映像の精彩感を高めるために、複数枚のフレームを参照しながら超解像処理をかけていましたが、そのアルゴリズムが一段とブラッシュアップされました。テレビが入力された映像のフレーム周期を自動判定して、コンテンツごとに参照元のフレームを変えながら超解像処理をかけることで、映像のノイズやちらつきを抑えたクリアな映像を再現します。こちらのアダプティブフレーム超解像は新しい有機ELレグザ、液晶レグザがともに搭載している機能になりますが、特に地上デジタル放送のシャキッとしたキレのある映像を楽しむ際に高い効果を発揮してくれるといいます。
タイムシフトマシンなどスマートTV視聴機能もフル装備
X910シリーズ、Z810Xシリーズの5機種すべてが、外付けHDDをつないで最大6チャンネルのデジタル放送をまるごとキャッシュできる「タイムシフトマシン」を搭載しています。地デジ/BS・110度CSのデジタル放送から指定した6チャンネルは、めんどうな録画予約をしなくても、2TBの外付けHDDならば最大約80時間までキャッシュしておけます。古い番組は自動で上書きされるのでHDDの空き容量も心配なしです。
タイムシフトマシンの機能を応用して、テレビをつけた時にオンエア中の番組をはじめから見たくなったら、番組の先頭へ瞬時に戻して視聴できる「始めにジャンプ」も便利な機能です。キャッシュされた番組の一覧を表示する「過去番組表」から、お目当ての出演者を検索して逃さずチェックするという使い方もおすすめです。地デジ6局の現在放送中番組を、レグザの画面にまとめてマルチ画面表示しながら面白そうな番組を探せる「まるごとチャンネル」もマスターしたい機能です。
テレビをWi-Fi、またはLANケーブルでインターネットにつなげばNetflixなど様々な動画配信サービスが手軽に楽しめます。東芝がレグザのユーザーに提供するクラウドサービス「みるコレ」では、あらかじめよく見るスポーツのジャンルや、好きなタレントの名前を登録しておけば、録画された番組や動画配信サービスに公開されている関連動画を横断的に検索して、見つかった面白そうなコンテンツへすぐにアクセスして楽しめます。
2017年モデルのレグザは画質と機能、ともにスマートな進化を達成したフラグシップモデルであると言えそうです。これから4K/HDR対応のテレビに買い換えを検討している方は、ぜひチェックしてみることをおすすめします。