「試合に負けて、勝負に勝った」というフレーズがあります。しかし、本心では「試合に勝って、勝負でも勝ちたい」と望んでいるはずです。
目標を達成するためには「勝利」は欠かせません。勝ち続けなければ、野心や願いを叶えることはできないのです。
勝つために「覚悟」を定義する
元競輪選手の松本整さんは、長年にわたって独自の勝負哲学を作りあげました。
競輪選手としての生涯獲得賞金は約11億6千万円。43歳のときにGI最高齢優勝記録を更新しています。松本さんが勝ち続けてきた実績です。
数々の勝負を制してきた競輪選手の経験をまとめた『勝負に強い人がやっていること』(松本整・著/ウィズワークス・刊)によれば、勝つためには「覚悟」が必要だそうです。
‘‘覚悟の重さとは、
自分の目標達成のために、何をどれだけ犠牲にできるか?
ということで測れます。‘‘
(『勝負に強い人がやっていること』から引用)
時間や労力を引き換え(犠牲)にして、はじめて「覚悟」と言えます。気まぐれや思いつきで「覚悟を決めた!」と声に出して言うだけでは、なにも変わらないのです。
「負けぐせ」を放置すれば勝負弱くなる
勝ち続けてきた松本さんでさえ、勝機を逃すときがあります。それは、非情になりきれなかったときです。
‘‘勝つ展開のレースで勝ちを逃すと、肝心なときに勝機を逸する癖がつきます。‘‘
(『勝負に強い人がやっていること』から引用)
大きな賞金がかかっていないレースで、前を走る選手を気づかってしまい、強引に追い抜くことができず、松本さんは二着や三着に甘んじてしまったことがありました。
つまり、勝負どころで100%の実力を出さないことを選んでしまったわけです。
「実力が足りない」「練習が足りない」以外の理由で負けるのは、勝負の本質からはずれています。「負け」から学ぶためには、常に全力で勝負すべきです。
チャンスをつかむための生活習慣
数々のレースを制してきたベテラン競輪選手でさえ「運をつかみ取れるかが最後の関門」だと言っています。
松本さんは「繰り上がり優勝」をしたことがあります。一着の選手が追い抜き失格になったことにより、二着だった松本さんが幸運をつかみました。
スポーツ新聞は「棚ぼた優勝」と報じましたが、松本さんは「これまでの努力が報われた結果だ」と、ますます自信を深めました。
なぜなら、誰よりも激しくトレーニングしてきたという強い自負があったからです。
‘‘いつ何どき、チャンスが来てもつかみ取るための準備が必要です。
そのための努力は努力の枠を超え、プロにとっては、当たり前の生活習慣というところまで高めてしまう必要があります。
そうすれば、もう努力ではなく生活そのものとなります。‘‘
(『勝負に強い人がやっていること』から引用)
勝負強さとは、生活習慣によって作られるものです。
普段の努力が足りなければ、いざ幸運がおとずれたとき「ただのラッキーかも……」と弱気になってしまい、自信につながりません。
負けているときの過ごし方
不調のときに「なぜ勝てないのか」を思い詰めて、それでも答えが見つからなければ、ネガティブ思考の迷宮におちいります。
‘‘不調は、不調になってからが悪いのでありません。
その前の好調時に既に原因が作られているのです。
好調時に、何かちょっとした無理をして勝ちにいってしまうことで、どこかのバランスが崩れだすことが原因の場合がほとんどです。‘‘
(『勝負に強い人がやっていること』から引用)
競輪選手の場合、フォームのバランスが悪いにもかかわらず、たまたま勝ち続けてしまったせいで、その誤ったフォームを「心地よい」と感じることがあるそうです。
ベテランの勝負師である松本さんは、スランプのときには「ジタバタせずに、客観的に自分を見つめ直すべき」と、アドバイスしています。
(文:忌川タツヤ)
【参考文献】
勝負に強い人がやっていること
著者:松本整
出版社:ウィズワークス
二宮清純氏推薦! 不惑を過ぎてさらに進化を加速させた男が初めて披露する「必勝のメソッド」。これは「勝利の秘伝書」でもある。2012ロンドン五輪、2016リオデジャネイロ五輪自転車競技日本代表総監督・松本整。「中年の星」として一躍注目され、45歳の最高齢記録でG1優勝を果たした元トップ競輪選手。年齢を重ねても、松本氏が常に勝ち続けてこられたのは、努力の結果というだけではない。そこには、松本氏ならではの、考え抜かれた「勝負哲学」が存在していたのだ。勝負や競争に弱いと感じている人、自分自身の目標が決まらない人、いつも運に見放されていると感じる人にお薦めの本。
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