時代劇を見ていると、街中を大勢のお役人たちが「したにー、したにー」と言いながら練り歩き、町民がそれを頭を垂れて見送っているというシーンがたまにある。
そう、参勤交代だ。
参勤交代って何?
参勤交代を簡単に説明すると、江戸時代、各藩の藩主を定期的に江戸に来させるという制度だ。当時の幕府は、各藩主の妻子を江戸に住まわせていた。いわゆる人質だ。そして藩主たちに、原則的に1年おきに江戸にやってきて政務をしながら居住することを義務付けていたのだ。1年後には、藩主は江戸から自分たちの領地へ帰っていく。
もともとは各大名が自主的に行っていたものだが、徳川家三代将軍、徳川家光のときに制度化。幕府が大名たちを統制する目的のほか、参勤交代をさせることで経済力を削ぎ、謀反を起こさないようにするといった目的もあったようだ。
見栄えをよくするためにエキストラを雇うことも
一方、大名たちにとっても、民衆に自分の藩の規模を披露する場でもあったようで、102万石の加賀前田家で最盛期4000人もの人が参勤交代に参加していたそうだ。
しかし、時代が進むに連れて各藩の財政も圧迫され、人数は減少傾向へ。そのため、行列の人数を確保するために宿場町などで現地のエキストラ「人宿」を雇ったりしていたらしい。
参勤交代は、いわば一種のパレード。やはり人数が多いほうが見栄えがいい。お金をかけずに見栄えをよくする方法として考えられのが人宿なのだ。
参勤交代1回のお値段、約7億円也
参勤交代の目的のひとつとして「経済力を削ぐ」というものがあると先ほど書いた。では、いったい1回の参勤交代ではどのくらいの費用がかかるのだろうか。
『超簡単 参勤交代』(ブルボンクリエイション・著/ブックビヨンド・刊)によると、以下のように記されている。
気になる参勤交代の経費は、旅籠賃、川渡賃、予約解消時の補償金、幕府要人への土産品などがあり、他にも他藩領地通過時に藩主への贈答品や代官・使者への下賜品なども含まれます。忠田忠雄氏の『参勤交代道中記』によれば、加賀前田家の文化5年(1808)の参勤交代での費用が紹介されており、家臣への貸し金まで含め総額銀332貫466匁余となっており、金で換算すると5541両、これを現在の貨幣価値で換算すると約4億3000万円となり、手間賃・労賃を含めると約6億9000万円にまで膨れ上がります。
(『超簡単 参勤交代』より引用)
1回の参勤交代で、約7億円もかかっている。しかし、藩の財政の割合から見ると約3%ほどということ。ただし、道中および江戸滞在時には貨幣での取引となるため、米の相場の変動により商人に借金をしなければならないことが多く、その利子で財政が圧迫されたというケースは多々あるようだ。
結果として、この参勤交代の制度が各藩の財力を低下させ、安泰な江戸時代になったことは歴史が証明している。
藩主専用トイレも運んでいた
なお、参勤交代にはさまざまな荷物が運ばれたという。家格の高さを示す道具のほか、趣味の道具、武器などだけでも相当な量になるようだが、そのほかに藩主専用の「厠駕籠」というものもあったようだ。
当時は公衆トイレなどない時代だけに、必要なものだったのだろう。いろいろな意味で、当時の参勤交代の大変さが伺える。
(文:三浦一紀)
トップ画像:国立国会図書館蔵
【参考文献】
超簡単 参勤交代
著者:ブルボンクリエイション
出版社:ブックビヨンド
参勤交代とは単なる大名が行列を組んで江戸と国元を行き来する江戸時代の儀式と思うなかれ。その実像がわかれば時代劇がグッと面白くなること間違いなし!!5W1Hでわかりやすく解説して、初心者から歴史通まで楽しめる1冊。
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