僕はかれこれ20年以上、文章を書いたりする仕事をしている。全然仕事がない時代もあったが、この仕事をやめようと思ったことはなく、なんとなく続いている。
根気がないからここまで続けてこられた
よく周囲の人(主に会社に勤めている人)からは、「そういう才能があったから続けられるんだね」となどと言われる。しかし、才能があるのかといわれるとそんなことはないと思う。
僕より文章がうまい人なんてたくさんいるし、もっといろいろな企画を出してヒットさせていたり、専門知識が豊富な人などもいるわけだ。
僕はどちらかというと、なんでも屋。いろいろなジャンルの原稿を書く。もちろん得意不得意はあるけれど、さまざまな分野の人に会えたり、知らないことを知ることができるので、あまり専門的な分野へのこだわりはない。
もともと飽きっぽい性格な上、ひとつのことを突き詰められるほど根気があるわけでもないので、こういう働き方が合っているのかもしれない。
日常と仕事は同一線上にある
僕は、仕事をしている以外はほとんど何もしない。遊びにでかけたりすることもあることはあるが、どちらかというと休みの日は寝てたら夕方なんてことも頻繁にある。
じゃあ、仕事が生き甲斐なのかというと、ちょっと首をひねってしまう。こういう生活を長いこと続けているので、日常と仕事が地続きになってしまっているようなのだ。
日常でちょっと興味があることなどにアンテナを張っておくと、仕事に結びつくことがある。ということは、「日常=仕事」みたいなものなのではないかと思う。普段ダラダラしていても遊んでいても、自分のなかでは知識や経験として貯まっていくので、あまり遊びと仕事を区別する必要がないと思っているのだ。
“仕事が生き甲斐”ではつまらない
『ポジティブ思考なんて捨ててしまいなさい!』(臼井由妃・著/学研プラス・刊)は、いわゆる自己啓発本のような感じだが、書いてあることはちょっと違う。見出しだけ見ていても
「成功法則」って、ムリ・ムチャをいうんです
努力しても叶わないことはあるんです
「自分の強みをみつけよう」という呪縛
「低俗だなぁ」と思うものに癒やされる
本当にくだらないことが、心の特効薬
元気すぎる人はイタい(『ポジティブ思考なんて捨ててしまいなさい!』より抜粋)
こんな感じだ。
実際読んでみると、自己啓発セミナーなどに通っている人がよく陥りがちな、「常に前向きで頑張る」「最短距離で成功をつかむ」みたいな内容はない。なんとなく「もっと肩の力を抜いていいんだよ」と言われているような感じだ。
そのなかで「仕事を“生き甲斐”にしてはいけません」という項目がある。仕事が大好き! 仕事をしている自分が好き! という人もいるだろうが、どうやらそれは間違っているようだ。
「ここまでは仕事、ここからは遊び」という線引きをなくしたほうが、人生は楽しくなります。だからといって、がむしゃらに仕事をしろということではありません。私から見ていて、「うわ、この人エンジョイしてるな。いつも楽しそうだな。ワクワクしてるな!」という人は、十中八九、こういう生き方をされています。
(『ポジティブ思考なんて捨ててしまいなさい!』より引用)
著者はどこまでが仕事で、どこまでが遊びなのかわからない状態だという。「すべてを遊びにしている」感じなのだ。
著者の価値観は、仕事でも遊びでも、「楽しければやる」「楽しくなければやらない」というもの。これならば、仕事と遊びの境界線が曖昧になり、「仕事が生き甲斐」という概念がなくなる。だから“仕事が生き甲斐”にならないのだ。
逆に言えば、“仕事が生き甲斐”と言っているうちは、まだまだ肩に力が入って仕事を楽しめていないということ。「仕事なのか遊びなのかわからないや、でも楽しいからいいや」となれば理想的だ。
お金を貯めるより、ストレスを溜めない生活
僕はまだそこまでの境地には達していないが、仕事は概ね楽しい。楽しくない仕事も、まあお金のためなのでやるけれど。
逆に、大人数の飲み会や、苦手な人が来る飲み会などはほとんど行かない。理由は「楽しくないから」。どうやら、この著者と同じような感性らしい。
僕は、なるべく日々のストレスが少なくなるようにしている。フリーランスでいるのもストレス(主に人間関係)をなるべく受けたくないという理由だし、あまり我慢もしない。食べたいものがあれば食べるし、買いたいものもお金があれば買う(後で後悔することもある)。
あまりお金が貯まる生活ではないが、心のストレスはほとんど溜まらない。ちょっと将来が心配だが、日々楽しく過ごしているのだから、まあそれはそれでいいのでは、と思っている。
(文:三浦一紀)
【文献紹介】
ポジティブ思考なんて捨ててしまいなさい!
著者:臼井由妃
出版社:学研プラス
「がんばることをやめよう」とさまざまな経営者やビジネスマンを見てきた元マネーの虎の著者が力説する、人生の「ネガティブ思考術」のすすめ。「作り笑顔なんてやめようよ」「ためいきの数を数えてみよう」…こんな言葉に一歩踏み出す勇気がわいてくる!
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