ふとしたときに出てしまう「おなら」。
人前でしてしまうと、恥ずかしいものだ。
おならは、別名「屁」とも言う。言い方を変えても、基本的には同じものだ。女性などは、口にするのが恥ずかしいと思うかもしれない。しかし、実は「おなら」という呼び方は、「屁」を上品にしたものなのだ。
女房詞って知ってる?
「おなら」という言葉は、元々は女房詞(にょうぼうことば)だ。女房詞とは、室町時代に、宮中に使える女房たちが、彼女たちだけに通じる隠語として使い始めた言葉だ。
例えば、「しゃもじ」。ご飯をよそうときなどに使用するアレも、元々は「杓子」(しゃくし)というもの。では、なぜ杓子がしゃもじになったのだろうか。
『知って びっくり! ことばのはじまり物語』(汐見稔幸・監修/学研プラス・刊)に次のような記述がある。
あることばのはじめの一文字を取り、それに「もじ」をつける遠回しな言い方が、にょうぼうたちの間でたいへんこのまれていました。
(『知って びっくり! ことばのはじまり物語』より引用)
「恥ずかしい」を女房詞にすると「はもじ」、ゆかたのことは「ゆもじ」、髪の毛のことは「かもじ」となる。
杓子はこの法則に則ると、女房詞では「しゃもじ」となる。これが定着して現代にまで残っているのだ。
「おなら」は「屁」の女房詞
では、「おなら」はどのような経緯で生まれたのだろうか。実は、もうひとつの女房詞がある。それは、言葉の始めに「お」を付けて、語尾を省くというもの。
代表的なものに「おでん」がある。田楽(でんがく)に「お」を付けて「おでんがく」。そして最後の「がく」を省略して「おでん」。そう、おでんは女房詞だったのだ。
そして「おなら」。おならは「屁」と言っていた。しかし女房たちは「屁」という言葉を発するのを恥ずかしがったらしい。
そこで、直接「へ」と言わず、おならの音がしたときには、「今、鳴らしましたね」と言うことにしたのです。そして、この「鳴らす」に「お」をつけ、最後の「す」をはぶいてできたのが、「おなら」ということばだ、といわれています。
(『知って びっくり! ことばのはじまり物語』より引用)
以上のような経緯を知ると、「屁」に比べて「おなら」のなんと上品なことよ。
語源を知ると言葉への興味が深まる
本書には、そのほかにもさまざまな言葉も語源が載っている。いもり、やもり、こうもりの名前の語源や、「冷たい」の語源などは、とても興味深い。
普段何気なく使っている言葉も、その成り立ちを知ると、より意味深く感じられ、口にする喜びのようなものが感じられる。
もし、気になる言葉があったらその語源を調べてみてほしい。実は意外なところから来ている言葉かもしれない。
(文:三浦一紀)
【文献紹介】
知って びっくり! ことばのはじまり物語
著者:汐見稔幸
出版社:学研プラス
子どもに身近な「ことば・漢字」などの語源や成立のはじまりを、「漢字や四字熟語」「食べ物、生き物、からだ、あそび、あいさつ」「ことわざ、故事成語」などのジャンルに分けて、全部で55話の短くわかりやすいお話にした国語雑学読み物。
Kindleストアで詳しく見る
楽天Koboで詳しく見る
iBooksで詳しく見る
BookBeyondで詳しく見る
BookLive!で詳しく見る
hontoで詳しく見る
紀伊國屋書店ウェブストアで詳しく見る