本・書籍
2015/7/10 0:00

江戸の夏バテ対策飲料・甘酒の活用法

江戸時代、クーラーも扇風機もアイスクリームもない中、人々が夏バテ対策に飲んでいたのが、冷やし甘酒だった。実は甘酒はブドウ糖やビタミンB群、アミノ酸など豊富な成分が含まれ、今では「飲む点滴」とも言われてもいる。江戸時代の夏は、甘酒売りが通りを練り歩いていたという。『創業三八〇年の酒蔵がすすめる 福光屋の甘酒レシピ』には、ただ飲むだけではない甘酒の様々な活用法が載っている。

 

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甘酒には2種類ある

甘酒には2種類ある。ひとつは酒粕に砂糖を加えたもの。もうひとつは米に麹を足し、発酵させて甘くさせたもの。前者と後者では味も違う。冬に飲む温かい甘酒は多くが酒粕入りのもので、さらっとした飲み心地である。私は麹を発酵させたほうも飲んだことがあるけれど、非常に濃く、とろみがあった。豆乳などお好みの飲み物で割って飲むとちょうどいいし、シロップのように、カットしたフルーツの上などにとろっとかけても美味しかった。江戸時代に飲まれていたのは米と麹の甘酒だと当時の風俗が記述された本「守貞漫稿」に記されている。

 

マクロビオティックのお料理教室に通ったことがある。そこでは米と麹の甘酒でスイーツを作っていた。ヒエ、アワ、キビなどの雑穀と麹で作ったレアな甘酒もあった。ベジタリアンは砂糖の代用品として甘酒を使う。砂糖は身体を冷やすとされているので、ベジタリアンの中では避ける人が少なくない。そうなったときに頼りになるのが、ドライフルーツやさつまいもやかぼちゃや甘酒などの自然な甘み。甘酒でパンケーキやアイスクリームまでも作ってしまうのだ。

 

次の流行は甘い麹!?

本に出てくるレシピは、麹を発酵させた甘酒がメイン。砂糖を使っていない自然の甘みは応用が利く。時には焼き肉のたれにしてみたり、時には煮物に使ったり。昨年流行した塩麹は、麹に塩を足したものだけれど、甘酒は麹に米を足したものなので、麹と同じく酵素や乳酸菌も含んでいる。つまりは料理にも応用できるので、今日は塩麹、明日は甘い麹といった感じで使い分けることもできるだろう。

 

甘酒を料理に?と、一瞬意外な感じも受けるけれど、考えてみれば、焼肉のタレやコロッケにかけるソースも甘みがある。それと同じような使いかただと思えば納得もできる。しかも甘酒は優秀で、さまざまな料理にプラスすることができる。甘酒1本あれば、砂糖にもみりんにもうまみ調味料にもなるのだ。さらに肉や魚を柔らかくさせる効果もある。レシピも照り焼きや煮物、サラダのドレッシングやスープなど、たくさんのバリエーションがあり、甘酒の幅の広さに驚かされてしまう。

 

美髪や美肌まで……甘酒の効能

先日、酒粕と米麹で作られた甘酒に「目の下のクマ」「髪のツヤ」「朝の目覚めの良さ」の改善が見られたと発表された。甘酒に限らず、味噌、醤油などの発酵させた食品には、多くの健康的効果があると言われている。今回も研究によってそれが明らかになったわけだけれど、江戸時代の人はデータもないなか「甘酒を飲むとなんだか元気になる」と自分の身体でわかり、暑さ対策に飲んでいたというのだから、すごい。

 

個人的には甘酒に含まれているコウジ酸にも注目した。メラニン色素を抑制させ、シミやくすみを防ぐのだという。これもまた、日差しが強い夏にはありがたい効能だ。しかもこのコウジ酸を18ヶ月使用した人の88%もがシミが薄くなったという調査もある。40を過ぎていよいよシミが気になる年頃になった私、この夏は甘酒と共に乗り切ろうと思っている。今夜はレシピ本にあった「甘酒ラタトゥイユ」を作ってみようかな♪

 

(文・内藤みか)

 

 

【文献紹介】

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創業三八〇年の酒蔵がすすめる 福光屋の甘酒レシピ
著者:株式会社福光屋(著) 渡辺有子(著)
出版社:PHP研究所

ビタミン、アミノ酸、ブドウ糖が豊富で、江戸時代から栄養のある飲み物として飲まれてきた甘酒。実は、甘酒は砂糖やみりんの代わりに調味料としてもすごく使えます! ふだんのおかずから、スイーツやドリンクまで、甘酒を使ったレシピをたっぷり紹介。本書で使用する甘酒は、米麹から作る甘酒。よく「甘酒はアルコールが入っていてくせがあるから」「砂糖がいっぱい入っていそう」と、飲まれない方も多いと思いますが、みなさんが想像しているのは「酒粕甘酒」。米麹の甘酒はアルコール分ゼロなので、小さなお子さんからお年寄りまで安心して飲むことができます。金沢で380年以上の歴史を持つ老舗の酒蔵・福光屋と素材の味わいをいかしたシンプルなレシピが人気の料理家・渡辺有子さんのコラボレーションで、古くて新しい、しかも美容と健康にも最適なおいしいレシピがそろった一冊になりました。

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