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2018/3/6 6:00

あなたがそのランチを選んだのはなぜ? 人間は必ずしも合理的な行動をしない「行動経済学」の不思議

先日、久々に大学時代の友人と集まる機会があった。場所は、とある有名な炭火焼きダイニング。少し人数が多かったため、事前に希望するメニューを店側に伝えておく必要があった。

 

ランチメニューは全部で3種類。Aランチ1,380円、Bランチ1,980円、Cランチ2,380円だ。

 

さて、みなさんなら、どれを選ぶだろうか。

 

31750737 - closeup of woman's hands holding fork and knife. young girl looking at food in restaurant

 

一番安いAランチを選んだ者はいなかった

私の場合、通常ランチにあてる金額は高くても1,300円。できれば1,000円以内におさえたい。ワンコインランチがベストだ。その基準から考えると、Aを選ぶのが妥当である。

 

だが、考えた。一番安いコースを選んで、他の友人たちがBやCを選んでいたら、なんだか気恥ずかしい。それに、メニュー内容を見たら、Aは味気ないが、Bならコスパが良い気がする。

 

少し悩んだ結果、Bランチに決めた。

 

そして当日。皆が選んだ結果は、Bランチ7名、Cランチ3名。やはりAを選んだ者はいなかったのだ。

 

だが、もしもAランチとBランチの2択だったらどうだろうか。「Bは高いな」と感じて、Aを選ぶ者も出てきていたに違いない。かくいう私も、間違いなくAを選ぶだろう。「Bランチの方がコスパが良い!」などと思ったにもかからわず。

 

実は、この行動の裏には「行動経済学」が潜んでいる。『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』(佐藤雅彦・菅俊一・原作、高橋秀明・画/マガジンハウス・刊)から、いくつか覗いてみよう。

 

 

ノーベル賞も受賞した「行動経済学」とは

これまでの経済学は、「人間は必ず合理的な経済行動をするもの」という前提で構築されてきた。しかしながら、非合理な選択や行動をすることが往々にしてあるのだ。「行動経済学」とは、そんな従来の経済学では説明しきれない人間の不可思議な行動を、心理学的視点から解明しようとする新しい学問。昨年のノーベル経済学賞を受賞したリチャード・セイラー氏の研究テーマとしても一躍話題となった。

 

ランチの話に戻ろう。

 

私たちは、3つの選択肢を提示されると、一番下や一番上を回避して、できるだけ無難な真ん中の選択をしようとする傾向(極端回避性)があるのだという。だから、2択であれば「高い」と感じたBランチを、3択になると評価が変わって選んでしまうことがあるのだ。

 

行動経済学による言動は、ほかにも多々ある。イチロー選手は、国民栄誉賞を二度辞退している。この行動も、行動経済学によって説明できるという。一体どのような理由なのだろう?

 

 

イチロー選手が国民栄誉賞を辞退した理由

私たちは通常、報酬があればやる気もアップするものだ。けれども時として、報酬があることでモチベーションを下げてしまうケースがある。この、自分が好きでしていた行動(内発的動機)に、報酬(外発的動機)を与えられることによってやる気がなくなってしまう現象を「アンダーマイニング効果」という。

 

漫画では、はじめは自分が楽しいから落書きをしていた子どもたちが、ある日から落書きをするとおじいさんがお小遣いをくれるようになり、いつのまにか落書きの目的が報酬にすり替わっていった。その結果、おじいさんからお小遣いがもらえなくなったことで、子どもたちは好きでやっていた落書きをやめてしまった……という話。

 

「イチロー選手は、早すぎる名誉はその後の動機を低減あるいは消滅させる恐れがあることを、直感的に知っていたのだった」とは原作者の佐藤氏。こんなところにも、行動経済学が潜んでいた。

 

 

同じ100円でも、母数が違えば価値が変わる

何か物を買うとき、少しでも安いお店を選びたいと思うのは皆同じ。たとえば、同じトイレットペーパーが目の前の店では398円、信号を渡った先の店では198円と200円差で売られていたら、迷わず安い方の店で買う人が多いのでないだろうか。

 

だがこれが、8万円するオイルヒーターだったらどうだろうか。目の前の店は8万200円、橋を渡った先にある店では8万円で売られていたとしたら。「200円の差なら、目の前の店でいいか」と思う人は、少なくないはずだ。

 

このように、全体の母数の大きさによって、同じ金額を大切に扱ったり邪険にしたりと、勝手にその価値を変えてしまうことを「感応度逓減(ていげん)性」と呼ぶそうだ。

 

ほかにも、『行動経済学まんが ヘンテコノミクス』には、さまざまな行動経済学の例が面白おかしく漫画化されている。

 

たとえば、自動券売機で5,000円の切符を買ったとき、おつりを取り忘れて現金5,000円を無くした場合と、切符を無くしてしまいもう一度買い直した場合では、同じ5,000円の損失なのに後者の方が損だと感じる「心の会計(メンタル・アカウンティング)」。

 

「合計金額が2,000円以上だと送料無料!」という言葉に釣られて、当初買う予定でなかった物まで買ってしまう「無料による選好の逆転」など、まさに「あるある!」と膝を叩きたくなるものばかり。

 

この行動経済学をうまく取り入れれば、ビジネスや対人関係にも活かせるかもしれない。「人間とは、かくもヘンテコな生きものなり」という佐藤氏の言葉通り、人間の経済行動の真実と理論を覗いてみてはいかがだろうか。

 

 

【著書紹介】

 9784838729722

行動経済学まんが ヘンテコノミクス

著者:佐藤雅彦・菅俊一・原作、高橋秀明・画
出版社:マガジンハウス

人は、なぜそれを買うのか。安いから? 質がいいから? 否。そんなまっとうな理由だけで、人は行動しない。そこには、より人間的で、深い原理が横たわっている。この本には、その原理が描かれている。漫画という娯楽の形を借りながら。

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