忙しいときにレンジで“チン!”するだけで食べられる、便利な冷凍食品。
私が子どものころ、冷食といえば、弁当の添え物という印象でしかなかった。揚げ物は水っぽいし、しっとりしすぎだった気がする。
それでも育ち盛りだったのでそれなりに満足はしていたものの、食感も味も、手作りに勝るものはないと思っていた。
近所の食堂のメシより冷食がうまい
ところが、ここ数年で冷食に革命が起こっている。
格段においしくなったのだ。
1人暮らしをしていたときに重宝した、日清食品の「Spa王」などの冷凍パスタはハッキリ言って下手なイタリア料理店よりもおいしい上に、コスパいい。
今の個人的なブームはチャーハンである。常に2~3袋は冷凍庫にストックしてある。一昔前の冷凍チャーハンを思い出していただきたい。全体的にライスが水っぽく、いかにも冷食という印象だったはずだ。
ところが、最近の製品は驚くほどパラッと仕上がる。味の素が発売した「ザ・チャーハン」は、うちの近所の中華料理店よりもうまい。これは決して誇張表現ではないし、私はメーカーの回し者ではない。素直な感想だ。ぜひ食べてみていただきたい。
冷食作りの鍵は、冷凍方法にあり
こうしたプレミアムな冷食は、比較的高価であるにもかかわらず売れているそうだ。そして、「餃子」「チキンカツ」など、高校時代に食べていた弁当のおかずもまた、味が格段に上がっているという。
なぜ、冷食のクオリティはこんなに上がったのだろうか? その謎を解き明かしてくれるのが、『冷凍食品のひみつ』(おぎのひとし、オフィス・イディオム・著/学研プラス・刊)だ。この本、表紙に描かれている女の子がやけにかわいく感じるのは私だけだろうか?
さてさて、本書を開いてみると、おいしさを保つための秘訣はたくさん紹介されている。なかでも急速冷凍という技術が進化したことがポイントらしい。読んで字の如く、急速に冷凍する技術のことだが、通常の冷凍とどう違うのだろうか。
食品の中には水分がふくまれていますが、ゆっくりと凍らせると水分のつぶがくっつきあって、大きな氷となり、食品の細胞を破壊してしまうんです。
その点、急速冷凍ですと、水が小さなつぶのまま氷となるため、食品の組織をこわさないんです。(『冷凍食品のひみつ』より引用)
冷蔵庫で生ものを冷凍することとは、同じようで、まったくの別物だということがわかる。急速冷凍すれば、おいしさはもちろん栄養価もそのまま保たれるため、一石二鳥なのだ。
手作り料理よりも冷食がおいしくなったら?
冷食の謎が解けて、ますますリスペクトを感じるようになった。冷食は便利すぎる。それでいておいしいとくれば、積極的に利用しない手はない。
このままの勢いで冷食が進化したらどうなるだろう。妻が作った手作りのおかずよりも、冷食が好まれるようになるかもしれない。そうなってしまったら、家庭内で様々な問題が発生しそうだ。しかし、本著ではこうも書かれている。
毎日の食事を豊かにするためには、生鮮食品と冷凍食品をうまく組み合わせて使うことも大事なんだから!
(『冷凍食品のひみつ』より引用)
なるほど。いくら便利だからと言って冷食に依存しすぎるのは、問題なのだ。本書には、冷食を使ったアレンジレシピがたくさん紹介されている。家族の絆を深め、健康的な生活を送るためには、バランスの良い食生活を送ることが大切といえるだろう。
(文:元城健)
【文献紹介】
冷凍食品のひみつ
著者:おぎのひとし、オフィス・イディオム
出版社:学研プラス
コロッケ、うどん、チャーハン、春巻…、便利でおいしい冷凍食品。毎日の食卓やお弁当になくてはならない冷凍食品だけれど、いったいいつごろからあるのかな、どのようにつくられているのかな…、そんな冷凍食品のひみつが、この本でよくわかるよ!