メイクアップの効果はすごいものだと思う。先日、第90回アカデミー賞で日本人メイクアップ・アーティストの辻一弘氏がメイクアップ&ヘアスタイリング賞を受賞した。
かつて『ベンジャミン・バトンの数奇な生涯』では、老人として生まれ新生児として死んでいくベンジャミンを演じたブラッド・ピットのメイクでの変身ぶりにとても驚いたが、これも辻氏の手によるものだった。そして、今回は『ウィンストン・チャーチル ヒトラーから世界を救った男』で、ゲイリー・オールドマンをチャーチル首相そっくりに変身させた。特殊メイクには見えない、自然な仕上がりの特殊メイクをつくり出せる辻氏の技術は本当にすばらしいものだ。
ビジネスシーンでは化粧が不可欠
さて、世界をリードする政治家や経済界の大物たちが人前に出るときは血色よく、生き生きとして見えるようにメイクアップをしているのをご存じだろうか? もし、彼らが寝不足の青白い顔をして現れたら、まわりに好印象を与えることもできず、また、発言の説得力も半減してしまうだろう。
女性は身だしなみとして化粧をする習慣があるが、ビジネスシーンで成功したいなら男性も化粧をすべきかもしれない。顔にアイシャドウや口紅など色物をのせるだけが化粧ではない。肌をきれいに保つこと、眉の形を整えて印象をよりよくするなど、自然に見え、好感度をアップする化粧技をぜひ覚えたいものだ。
『お化粧のひみつ』(宮原美香・漫画、清水めぐみ・シナリオ/学研プラス・刊)は、なぜ化粧をするのか?からはじまり、化粧の力のすべてを教えてくれる一冊なので、ぜひ読んでみてほしい。
化粧のはじまりは信仰や魔よけだった
そもそも人間はなぜ化粧をするようになったのだろう? 古代エジプト人は目のまわりに黒いふちを描いていたが、これには2つの意味があったという。1つ目は太陽の光の反射を少しでも防ぐためで、現在、スポーツ選手が目のしたに“アイブラック”を入れているのと同じだ。そして、もうひとつの理由は信仰のため。
古代エジプト人は「太陽は神さまのシンボル」と考えていて、その太陽が人の体の中では「目」にあたり、目には神さまが宿っていると信じていたのよ。だから目を大切にし、まわりを黒くぬっていたらしいの。
(『お化粧のひみつ』から引用)
また、口紅の色に赤が多いのにも理由があり、赤は魔よけの色としてよく使われていたそうだ。誰かのねたみや恨みのこもった視線が災いを招くという考え方は世界中にあり、その視線は目、鼻、口から入ってくると言われていた。
そこで、そんな悪い視線が入らないように、まよけの赤を顔や目のまわりにぬったり、口紅としてぬって…(中略)当時のお化粧は、まよけをして病気や死を防ぐためのものだったんだね。
(『お化粧のひみつ』から引用)