新宿歌舞伎町の、西側の入り口。西武新宿駅の真向かいに、老舗のカプセルホテルがあった。今から30年以上前、筆者はこのホテルにあるスポーツサウナの飲食スペースで深夜番のバイトをしていた。シフトは午後11時から午前8時。夕礼を終わってフロアに出ると、そろそろお客さんが入り始めている。でも、本当のピークが始まるのはJR・各私鉄ともに終電が出てからだ。
高い時給以上のもの
筆者がこのバイトを選んだ第一の理由は、1380円という当時としては破格の時給だった。飛行機のチケット代金50万円を少しでも早く稼ぎ出さなければならなかったので、週5で働いた。ただ、飽きやすい筆者の気持ちを切れさせなかったのは高い時給だけではなかった。前述の通り、毎夜出逢う人たちの魅力が大きかったのだ。
それに自分で言うのも何だけど、筆者は思う以上に接客業に向いていたのかもしれない。バイトを始めて1ヵ月経った頃から、毎朝5時から8時までの間に来店される飲食店経営者のみなさんから、「うちの店で働かないか」的な言葉をかけられるようになった。
その中に、40代のサーファーっぽい男性がいた。バイト仲間の話では、歌舞伎町で何軒かホストクラブを経営しているらしい。ちょっと心が動いたことは否定できない。でも、結局話は出ただけで終わりになり、いつの間にか立ち消えた。今思えば、失礼なことをしてしまったと思う。
ただ、この原稿で紹介する本をあの頃に読むことができていたら、自分から何らかの具体的な行動に出ていたはずだ。
“強運な人”のプロフィール
『強運は「行動する人」だけが手に入れる』(信長・著/学研プラス・刊)の著者である信長さんは、新宿・歌舞伎町のホストクラブ「Club Romance」の代表取締役だ。それだけではない。ビジネス書作家、講演家としても活躍されている。巻末のプロフィールにちょっと惹かれる部分を見つけたので、紹介しておきたい。
早稲田大学教育学部卒業。学生時代から家庭教師、塾講師の傍ら、ホストの道に入る。当初は体重90kg以上で女性とまともにコミュニケーションができず、指名もゼロが続いたが、入店4か月目で初めての指名を取ると、一気にナンバーワンとなる。その後、歌舞伎町の有名店「Club Romance」に移籍。現在までに通算28回ナンバーワンを獲得。
『強運は「行動する人」だけが手に入れる』より引用
いろんなシーンが頭に浮かぶ。早稲田大学教育学部の学生が家庭教師や塾講師のバイトをするというのは、ごく当たり前だ。でも、その“傍ら”ホストの道に入った過程の背景にはどんなシーンが積み重ねられていたのか? そして、指名ゼロから通算28回ナンバーワン獲得というすごい振れ幅には、どんなシーンが積み重ねられていたのか?
ひとつだけわかっているのは、信長さんが常に“行動する人”だったということだ。