『ハートの言葉』(学研プラス・刊)は、心理占星術研究家の鏡リュウジさんが古今東西の著名人の名言の中から、ハートに響くものを集めたものだ。ひとつひとつの言葉には、どこかにハートのマークが入っているロマンティックな写真が添えられている。その中から励まされる言葉を選んでみた。
人を救う言葉、潰す言葉
日本には「言霊」という考えかたがある。言葉には魂がこもっていて、良い言葉を使うと良いパワーを得られるともされてきた。確かに言葉には力がある。気がきく人が使うと落ち込んでいる人を励ましたり癒したりすることもできるし、配慮がない人が使うとその人を傷つけたりさらに落ち込ませることにもなりかねない。
鏡リュウジさんは本の中で「言葉という天使は、見えない翼でぼくたちのハートからハートへと飛び回り、そしてときに、沈みがちなぼくたちの魂をふるい立たせてくれるはずです」と解説している。そして「言葉がときに人を動かし、人生まで変えてしまうことがあります」とも。確かに映画などでも大切な言葉を聞いた途端、主人公が何かを悟り、駆け出していくシーンがよくある。
言葉は無料の贈り物
言葉の素晴らしいところは、お金がかからないということだ。傷つき悩んでいる友人に対し、金欠で何も贈り物ができない状態だとしても、心のこもった言葉で励ますことはできる。そしてその言葉で友人が少しでも元気になるのなら、それは素晴らしい贈り物なのだ。
私はSNSで意地悪なコメントを書き込まれ悩んでいる人に時々相談される。心ない人や、嫉妬に駆られた人が、その人に対し、重箱の隅をつつくような書き込みをしてくることがあるのだ。誤解を解こうと返信すると、さらにその倍くらいのコメントが戻ってきて、やりとりは全然終わらない。
そんな時、私はよく儒学者である伊藤仁斎の「仁者は常に人の是を見る。不仁者は常に人の非を見る」という言葉を伝える。志が高い人は人の良い面を讃えるし、志が低い人は人の欠点ばかり非難しがちだという意味だ。これを読むとほとんどの人が納得し、論争を中断する。「争わない」と選択したことによってSNSで神経を消耗することはなくなるのだ。
喪失感を希望に変える
また、私自身が離婚経験者だからか、友人知人の中で離婚をすると私に報告してくる人が多い。離婚直後は気分がハイになり、明るく「飲もう!」などと言ってくる人も、月日が経つと沈みがちになる。なぜあんな結婚をしてしまったんだろう、人生の無駄だったのではないだろうか、人に知られるのが恥ずかしい、などという負の感情が次から次へと湧いてくるのだ。
こんな場面にぴったりの名言が『ハートの言葉』の中にあった。『ドン・キホーテ』を書いたスペインの作家・セルバンテスの
「ひとつのドアが閉まったときには、また別のドアが開くもの」
である。
また、『月と六ペンス』を書いたイギリスの作家・モームの
「人生とはおもしろいものです。何かひとつを手放したら、それよりずっといいものがやってきます」
という言葉もいい。喪失感でつらい時も、未来に素敵な出会いがあると信じ、前を向いて生きることが大切なのだと思う。
ゆったりと幸運を待つ
離婚したての人は、次のパートナーを焦って探しがちだ。中には寂しさや不安から周囲に反対されるような人と急いで再婚し、さらに苦しむ人もいる。マレーシア初代首相のアブドゥル・ラーマンは
「木を植えたらすぐに実をつけると思う人もいます。けれど、本当は、木が育って実をつけるまで、少し待たなければいけないのです」
という言葉を残した。
この人とならうまくやっていけるかもしれない、と感じた時、一気に結婚へと駒を進めようとする人はとても多い。もちろん時にはスピードも大切だけれど、機が熟していなかったら青い実を食べることになる。食べごろになるまで落ち着いて、幸せを育てていく心の余裕が必要なのだろう。
【書籍紹介】
ハートの言葉
著者:鏡リュウジ(著)、長嶺輝明(写真)
発行:学研プラス
人気占星術研究家・鏡リュウジ氏が選ぶ、心で読む名言集76。歴史にきらめく名言と、可愛いハートの写真で綴るフォトブック。眠れないとき、迷ったとき、誰かを好きになったとき……、きっとあなたを支えてくれるはず。