ネットサーフィンをしていると、「このサイトの安全性が確認できません」または「警告:このサイトはあなたの個人情報を抜き取る恐れがあるかもしれません」という表示に出くわすことはないでしょうか。
ネットと信頼の切り離せない関係
続いて出てくる「それでも接続しますか?」のメッセージのあとに「はい」とクリックすることをためらう人も少なくないかもしれません。なぜならば、そのサイトを100%信じることができないからです。
なぜそのような表示が出るかは、さまざまな理由があるので一概には言えません。優良なサイトでも条件が重なるとそのようなメッセージが出てしまうこともあるそうです。
私たちは普段、ネットサーフィンでいろいろな情報を得ることができ、無料で便利に使っていますが、それは個人情報が流出する危険や、不快な情報や画像がいきなり現れることはないと信頼しているからなのでしょう。
シェアと信頼の関係
昨今、シェアリングエコノミーというものが話題になっています。個人が所有しているものを不特定多数の人とシェアするというシステムです。
たとえばライドシェアは、同じ行き先に向かう車に同乗させてもらいガソリン代などをシェアするものですし、ホームシェアは、家の中の使っていない部屋を貸し出しその賃料を受け取るというものです。世界的にはそれを仲介して手数料を取るUberやAirbnbという企業が大きな利益をあげています。
どちらもオンラインでシェアする相手を探して選ぶのですが、一見、これはかなり危険な行為です。一般常識で考えれば、面識ない人の車に乗ったり家に泊めてもらうだなんて、かなり勇気のいる行動です。けれど、インターネットの発達はそれを可能にしました。
かつて『シェア』(NHK出版・刊)という本も出したレイチェル・ボッツマンの新作『TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか』(日経BP社・刊)は、その信頼についてかなり深く考察しています。
レーティング=信頼の世界
本書では、信頼の指標としてレーティングがあると述べています。確かに私たちは飲食店を探す時などにレートを気にする時があります。
大勢の人が美味しかった、対応も良かったと好評価のお店には安心していくことができるし、これを信頼というのならそうでしょう。逆に評価が低いお店のことは少し心配に思うかもしれません。
もしかしたらその評価は集団票で底上げされているものかもしれないし、100%レートが正しいわけではないのですが、どうしても数字として目の前に出されると、それを信じてしまいがちなのです。
本書では、今やなんにでもレーティングがあるとまで言い切っています。言われてみれば、オークションやフリマサイトを利用する時も、見知らぬ人から中古品を買うのだから普段だったらためらうものですが、レートが高い人だったら信頼し、時には高い品を購入することもあります。ネットの中では高レートが信頼の証のようです。
警戒されるのは評価が今までない人で、ベビーシッターサイトでは、1件のレビューもない人はレビューがある人よりもシッターを頼まれる確率が半分だとも書かれていました。
今後、個人間マッチングやシェアリングはさらに進むことが予想されています。その時に頼りになるのはやはりレーティングや実績になるのでしょう。
マッチングアプリを利用して恋人を見つける人もさらに増えるでしょうし、より確かで総合的な信頼の指標も必要になってくるでしょう。最終的に決めるのは自分自身。より個人の責任感が問われる時代になっていくのだと思います。
【書籍紹介】
TRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したか
著者: レイチェル・ボッツマン(著)、 関 美和(訳)
発行:日経BP
新しい「信頼」がビジネス、経済、社会を動かす! 政府や企業、マスコミへの不信感がこれほど強いのに、他人の口コミで宿泊先やレストランを選び、知らない人が運転する車を頻繁に利用するのはなぜだろうか? 前作『シェア』で共有型経済を提唱した著者が、急激なパラダイムシフトのなかで企業・個人がデジタル時代の「信頼」を攻略する仕組みを解説。