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2019/10/25 21:45

あおり運転している人は悪いと思っていない!!――『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』

あおり運転による事件が後を絶ちません。命に関わる事態になりかねない危険行為だとわかっているはずなのに、なぜ人はあおり運転という暴行に出てしまうのでしょうか。そして、それを止める方法はないのでしょうか。

 

あおり運転体験

そもそもあおり運転とはどういうものでしょうか。警視庁によると「運転中、前を走る車両の後ろにぴったりとつき、蛇行やパッシングを繰り返し威嚇をしながら走行する」などの行為を指すようです。

 

実は私自身もあおり運転の被害に遭ったことがあります。それは、夜間、山形県の一本道を走行している時でした。後ろから車間距離がほとんどないほどに車がつき、かなりのスピードであおってくるのです。私は助手席に座っていたのですが、ドライバーは都内在住の人間なので、走り慣れない暗い道を制限速度以上のスピードで走らなくてはならず、かなりの恐怖を味わいました。

 

左右が田んぼの一本道なので逃れることもできず、何分も山形ナンバーの車にあおら続けました。やっとの思いで脇の空き地に車を滑り込ませたところ、車は何も言わず走り去って行きました。おそらく地元の人が、品川ナンバーの遅い(というか本来は制限速度を守った通常の)運転にイライラしたのだろうと思いますが、ハンドル操作を誤れば田んぼに転落する可能性もあった、と今思い出してもゾッとします。

 

 

あおり運転をする人の言い分

脳科学者の中野信子さんが書かれた『シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感』(幻冬舎・刊)では、あおり運転をする人の心理が解説されています。なんとあおり運転の加害者は「自分が悪いことをしたという認識をまったく持ち合わせていなかった」ということなのです。

 

なぜかというと「自分だけは正しく、「ズルをしている」誰かを許せない。だから、そんなやつに対しては俺/私がどんな暴力を振るっても許される」という風に考えているのだとか。つまり、私にあおり運転をした側は「追い越しできない1本道をノロノロ走っているヤツが悪い。通行の邪魔だ」と考えていたのかもしれません。

 

 

あおり運転とDVの関係

このあおり運転をする側の言い分は、何かと重なります。それはDVの加害者の言い分と酷似しているという点。暴力をふるう男性は「彼女が間違っているのだから、自分が暴力を振るったことは間違っていない」という論理でいる人が多いのです。そしてあおり運転は人の命を危険に晒しているのですから、これもまた暴力のひとつです。

 

「日本におけるあおり運転の事例調査」によると2016年と2017年に送致されたあおり運転事件38件の加害者全員が男性でした。そしてDVも男性が加害者である割合がかなり多いのです(警視庁の調べによるとDV相談者の82.4%が女性です)。この性差について中野さんは「男性では特にテストステロンの分泌量が多いために、前頭葉が担っているブレーキ機能が脆弱になっていると、心ゆくまで他者を攻撃し、ボロボロに傷つけて快感を覚える」と解説しています。

 

 

あおり運転から逃げるのは難しい

実際に遭遇してみると、他に逃げ道がない場合、あおり運転から逃れることは大変難しく、恐怖と共にギリギリの運転をしなくてはならなくなります。私は田舎の一本道で被害にあったので、おそらく防犯カメラもないだろうし、車にドライブレコーダーも付いていなかったので、泣き寝入りするしかなさそうです。怖さでいっぱいで相手のナンバープレートを見る余裕もありませんでした。

 

中野さんは「暴走する「正義感」を止める方法」として「その方の気力・体力が衰えるのを待つ以外に、有効な方法が考えにくい」としています。ただ、こうして最近はあおり運転が大きく取り上げられるようになったので、人々が「あおると逮捕される可能性がある」と認識することで、悪質な行為が減ることを期待しています。

 

 

 

【書籍紹介】

シャーデンフロイデ 他人を引きずり下ろす快感

編集:中野信子
発行:幻冬舎

「シャーデンフロイデ」とは、他人を引きずり下ろしたときに生まれる快感のこと。成功者のちょっとした失敗をネット上で糾弾し、喜びに浸る。実はこの行動の根幹には、脳内物質「オキシトシン」が深く関わっている。オキシトシンは、母子間など、人と人との愛着を形成するために欠かせない脳内ホルモンだが、最新の研究では「妬み」感情も高めてしまうことがわかってきた。なぜ人間は一見、非生産的に思える「妬み」という感情を他人に覚え、その不幸を喜ぶのか。現代社会が抱える病理の象徴「シャーデンフロイデ」の正体を解き明かす。

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