先日、小3の息子が学校から帰宅するなり、「携帯が欲しい」と言い出した。なんでも、隣の席の女の子がキッズケータイを持っていて、いろいろ話を聞いてきたらしい。
「ママが仕事でいないときも連絡とれるし(いまはSkypeを使っているが、私が着信に気づかないことが多い)、あったらいいな…」との言葉に少々心が揺れ動いたが、なんとか「まだ必要ないね」という結論に至った。だが、キッズケータイを、いや、もはやスマホを持たせる日は、そう遠くないのかもしれない。
子どもを持つ親がいつかは直面する「何歳からスマホを持たせるか」問題。
なぜこれほどまでスマホデビューに関して心がざわつくかというと、近年特に目立つSNSやネット絡みの犯罪に巻き込まれるのでは…という不安からだろう。
大阪の小6少女誘拐事件は記憶に新しい。この週末も男子中学生が誘拐された事件が起こった。いずれも、SNSのアプリやオンラインゲームを通じて知り合ったことがきっかけだという。
といっても、これらは氷山の一角。現実には、ニュースとして報道されていない同様のトラブルが無数にあるようだ。
小学生の45.9%がスマホを使いこなす時代
内閣府が今年2月に発表した『平成30年度青少年のインターネット利用環境実態調査』 によると、スマホを利用している小学生は45.9%、うち35.9%が自分専用のスマホを持っているという結果が出ている。
当然、年齢が上がるにつれてスマホ利用者は増え、自分専用のスマホ所持率も上がる。中学生では70.6%がスマホを利用し、うち78%が自分専用のスマホを所持。高校生では、97.5%がスマホを利用、そのうち99.4%とほぼ全員が子ども専用のスマホという現実だ。
これほどまでにスマホデビューが低年齢化しているとは。我が家も他人事ではない。できるだけスマホを持たせる年齢を遅くする? いや、正直難しいだろう。では、あらかじめ我が子にネットリテラシーをしっかり教え込むしかない?
そんな私の心中を察するかのような、子どものスマホ問題で戸惑う親のサポートとなる一冊を見つけた。『親が知らない子どものスマホ』(鈴木朋子・著/日経BP・刊)である。イマドキの中高生たちのSNSやネット事情について、詳細に說明してくれている。
闇雲にスマホを規制するよりも、子どもたちの「今」を知るほうが早い。私もこの本で、10代の子どもたちを取り巻くスマホ事情について学んでみた。
スマホネイティブ世代は、コピペより「スクショ」!
今の子どもたちは、生まれたときからスマホが普及していたスマホネイティブ世代。彼らの日常は、ポケベルからピッチ、ガラケー、スマホと、まさに激変の時代を過ごしてきた私(40歳)にとってさまざまな驚きがあった。
なかでも個人的に「なぜ!」と衝撃だったのが、中高生は相手に教えたいサイトのページを伝えるとき、URLを送るのではなく、そのページをスクショ(スクリーンショット:スマホなどの画面を画像として保存すること)するのが常、ということ。
スクショで教えてもらっても、そのページにアクセスすることができないじゃん! また検索するなんて面倒くさいよ! というのは、もはやおばさんの感覚なのだろうか…。
鈴木氏の分析によると、若い世代はWebブラウザをあまり使わないという背景が関係しているようだ。10代に使用頻度が高いのはYouTube、LINE、Instagram、Twitter。これら動画アプリやSNSのアプリにはシェアする機能(ボタン)がついているので、URLや投稿内容をわざわざコピペする機会がほとんどないからだろうと述べる。
また、多くの子どもの場合1か月のデータ通信量に限りがあり、URLを貼り付けてシェアすると、通信制限がかかっている友人がなかなか読み込めない。でも、貼り付け画像なら我慢できる程度の速さで見られる、という相手への思いやりも、スクショが主流である理由のひとつらしい。
さらには、「長文をスクショで相手に送る」という若者ネット文化まで生まれているのだとか。鈴木氏が取材した女子高生は、質問の回答をiPhoneのメモアプリでまとめ、読みやすく改行や見出しまで入れた画面をスクショで送ってきたというから驚きだ。いやいや、それ打ち直すの大変だし、テキストデータで送ってよ! と思ってしまうのだが。
「スマホネイティブの若者の考え方や行動様式は、パソコン世代とは明らかに異なる」という鈴木氏の主張に、「さもありなん!」と首を激しく縦に振ったエピソードだ。
「不幸の手紙」や「バトン」は令和時代にも健在
何もかもが進化しすぎていて、もはや共感できるものがないかと思いきや、じつは昔も今も変わらない点もある。
たとえば、「この手紙を受け取った人は、同じ内容の手紙を一週間以内に10人に送らなくてはいけません」といった不幸の手紙。少し時代が進むと、「このメールを24時間以内に10人に転送しないと…」というチェーンメールになった。そして現在は「このメッセージが回ってきた人は、1時間以内に10人以上送らないといけません!」などと、LINEでメッセージが回っているそうだ。
また、かつてmixiなどで流行った「指名された人は以下の質問に答えて、次の人を指名してね」というバトン。現代では、LINEのタイムラインやInstagramで同様のバトンが展開されているらしい。
理解できないことばかりではないことに、少しホッとした。だが、共感できるからといって安心もしていられない。バトンの質問内容によっては、学校名などの個人情報が含まれることも多々あるからだ。公開範囲などに気をつけておかないと、どこで悪い大人に目をつけられるかわからない。
LINEのステータスメッセージ(ステメ、と略すらしい! 知らなかった!)も若者の交流の場になっているらしいが、ここでもプライバシーに関する投稿は控えなくては危ない。Twitterのプロフィールにも、出身校や在籍している部活動、進学予定の大学名などまで詳細に書いている子が多いようだ。
たしかに、ある程度の情報を晒すことは、同じ趣味を持つ仲間や新生活前に友人が見つかるという良い面もある。けれども、瞳に写った風景から住んでいるエリアを特定できてしまうこのご時世、こんな個人情報ダダ漏れでは、SNSをきっかけに犯罪に巻き込まれるケースが多発しているのも納得だ。
親子でルールを決める。そして、親も積極的に情報を得ること
世の中に蔓延る犯罪は、予想通りに起こることなどまずない。とりわけネットに関する犯罪に関しては、「うちの子は大丈夫」と過信してはいけない時代にきている。
当然だが、子どもにスマホを持たせるときは、必ずルールを設ける。それも、親が一方的に決めたものではなく、親子で話し合って決めたものを。そして、親はフィルタリングサービスについて設定を学ぶこと。さらには、子どもがなにかトラブルに遭ったとき、すぐに状況を理解できるように、子どもたちに人気のアプリなどは少し触っておいたほうが良いと鈴木氏。イマドキの若者の流行りを理解することは、子どもの安心・安全にも繋がっているのかもしれない。
ただ恐れていても、なにも防げない。子どもとスマホの付き合い方を考えるには、我が子がスマホで何をやっているか、どんなことに夢中になっているかを知ること。そのうえで、適宜対策を考えること。近い将来、子どもにスマホデビューをさせようと検討している親はもちろん、すでに持たせているご家庭も、『親が知らない子どものスマホ』は必読の一冊だ。
【書籍紹介】
親が知らない子どものスマホ
著者:鈴木朋子
発行:日経BP
入学前にSNSでつながる中高生。心の内はLINEの「ステメ」に書く。今はLINEで行われる「不幸の手紙」。「自画撮り被害」に潜むネットの闇。Instagramが新たないじめの温床に? “エアドロ痴漢”にご用心!入学直前、夏休み、文化祭…危ないのはいつ? トラブルの「兆し」を見逃さない! 学校生活“要注意”イベントカレンダー付き。10代のスマホライフを理解するための用語収録。