寝る前や移動中のちょっとした時間に、ネットニュースをチェックしている。あれって、自分がよく見る、もしくは一度でも見たキーワードのニュースが優先的に上がってくるのだろう。最近の私のニュースサイトには、関ジャニ∞、田中みな実、木下優樹菜関連の話題ばかりである。ちょっと偏りすぎなので、設定を変えなくては。
そして、思わずチェックしてしまうのが、Yahoo!ニュースのコメント欄、ヤフコメだ。
そこまで言う? という辛辣な意見や読むに堪えない批判も多いが、ですよねですよね! という超共感できる意見、なかにはそうくるか~という気づきをくれる意見も時折あって、サラッと目を通す分には面白い。
TwitterやInstagramなんかも、気になる投稿があるとその返信欄をつい確認してしまう。
とどのつまり、自分が興味を持っているトピックに、世間はどう反応しているのかが気になってしまうのだと思う。心のどこかで、無意識のうちに「共感」を求めているのかもしれない。
先日、実家に帰省したときに本棚にあった『立て板に泥水』(深爪・著/KADOKAWA・刊)。タイトルに惹かれて手に取ってみると、「ムカつくけど、うなずける。」という言葉が帯に記されていた。なんでも、「女性セブン」の人気連載が書籍化したものらしい。
女性週刊誌系にとんと縁がないので、恥ずかしながらこのような連載も、著者の深爪さんのことも存じ上げなかった。だが、自分の中の”共感したがり”が疼き、すぐにページを開いてみた次第だ。
フォロワー17万人超! 驚異の主婦・深爪
著者の深爪さんは、アルファツイッタラー(Twitter上で多くのフォロワーを抱え、発言に大きな影響力を持っているTwitterユーザーのこと)として名を馳せている方で、フォロワー数はなんと17万人を超えるという。聞けば、普段は「ただの主婦(本人談)」とのこと。
いくつか目次から見出しをピックアップしてみよう。
「不倫騒動で浮かびあがるベッキーの真の姿」「『君の名は。』に感動できない」「フジテレビ、おっさん説」「池の水を毎週抜かないで」「『流行語大賞』に知らない言葉が紛れているワケ」「子どもにシモネタを解説してはいけない」など、連ドラのこと、芸能スキャンダルのことから時事ニュースまで、主婦ならではの目線を持ちつつも、深爪流の痛烈な物言いでズバズバと斬っていく。
有名人の名前を伏せ字もせずに、あーだこーだ言いまくっちゃっていいの? と読んでいるこちらが不安になるほど、ぶっちゃけ話が続くのだ。
そして、結構なシモネタが織り交ぜられている。私など極度のチキン野郎なので、原稿を書くときに、どうしても実家の両親や旦那子どもの顔が浮かんでしまい、少しでも過激な話は全力で回避してしまう。ここまであけすけと書けるなんて、もはやリスペクトでしかない。
毒舌なのに不快感が漂っていないのは、何故か
実名入りであれやこれやとぶった斬っている深爪さんだが、読んでいて不快にならないのはなぜだろうか。
じつは本書の中に「炎上する人、しない人」というトピックがあり、そこでは「無駄に好感度の高い人は、少しでもイメージから外れた行動をすれば猛烈に叩かれてしまう。(中略)つまり、普段から裏表なくクズさを発揮していれば不倫してもお咎めなしになる可能性が高い」と述べられているのだが、そのセオリーでいくと、深爪さんは後者ということになる。
だがしかし、私は深爪さんの前情報ゼロで読み始めた一人であり、それでも不快感がなかったのだから、好感度云々だけでは人から反感を買う・買わないは測り切れないだろう。
ベタな表現になってしまって恐縮だが、深爪さんの文章には「そこに愛がある」から、批判も皮肉も受け入れられるし、面白いのかなというのが『立て板に泥水』を読了後の自論だ。「さもありなん!」というユニークな表現や言い回しも、なかなかクセになる。
「共感したがり」な私が至極共感し、さらには「世の中の揉めごとの大半は『自分が損をしたくない』が原因だと思っている」とか、「いくら『お年寄りのみなさんは熱中症に気をつけてくださいね!』と注意したところで、己に『お年寄り』の自覚がないので、自分に対するアドバイスだとは思わない、ということらしい」とか、大きな気づきも得られるので、なんだかお得にすら感じる一冊だった。
さすがにフォロワー数が17万人というレベルになると、「迂闊な発言をすればすぐに火が出る状態なので、最近は気楽にツイートがしづらい(本人談)」とのことだが、是が非でも今のスタイルを貫き通していただきたいと切に願う。
【書籍紹介】
立て板に泥水
著者:深爪
発行:KADOKAWA
「女性セブン」連載。芸能・ドラマ・人生・恋愛・エロ・SNS…ムカつくけど、うなずける。大人気ツイッタラーが贈る怒濤の痛快エッセイ!!