最近は雑談をする機会が減ったので、「家の周りのカラスがうるさいなぁ〜」なんて独り言を言いながらネットで「カラス うるさい時期」と調べて「繁殖期なのか! なるほどね〜」と自己解決している私です。
みなさんはどんな日々を過ごしているのでしょうか? 少しずつ感染者数は減っているとはいえ、昨今よく言われる“アフターコロナ”の世界は、きっと2020年2月までの感覚とは変わった世界になるでしょうね。
中には、思っていた2020年と違った! と嘆いている人もいるかもしれませんが、そんな時にぜひ読んでもらいたいのが、ラジオパーソナリティとしても人気のあるジェーン・スーさんのエッセイ集『これでもいいのだ』(ジェーン・スー・著/中央公論新社・刊)です。この中には、こんな日々でも自分を認めてあげられる66のエッセイが綴られています。
GWは休めましたか?
今まで連休と聞くと連休前の大変さはあれど、「わーい! 休みだー」と喜んでいたのですが、今年のGWはいつもと違っていたためか、平日の延長のような気分で過ごしていました。何もしないのはもったいないから! と映画を見たり、ゲームをしたり、せっせと活動しまくっていたのですが、そのせいか「休んだ」という気があまりせず逆に損をした気持ちになったのです。
ジェーン・スーさんも『これでもいいのだ』の中で、何もしないという贅沢にソワソワしてしまうというエッセイを書かれていました。
そこでハタと気付く。私は休息にも生産性を求めている、と。
合理性や生産性を追求する平日からの解放が、休日であり休息の姿であるはずだ。充足ばかりが美徳ではない。休日の質を、出来高に求めてはいけないのだ。やはり、なにもしないことが一番だ。
(『これでもいいのだ』より引用)
『これでもいいのだ』は2020年1月に発売され、すぐ手にしました。読みながら「そうだよね〜」と付箋していたのですが、やはり人間は忘れる生き物なんですね。付箋をしたこともすっかり忘れて、GWを「何かしなくちゃ」に追われて過ごしてしまいました。
でも、こうして読み返して「やっぱり私は忘れちゃうんだなー」と思えたことも良い気付き。ポジティブに生きていきたいですな!
生きていればいいことがある?
『これでもいいのだ』の中で、一番好きなエッセイが「生きてさえいれば」。タイトルだけ読むとなんだか重そうに感じるのですが、人間ならオーディオの一時停止ボタンを押すような感覚で、少しの間だけ「生きること」を保留したいと思ったことはあるでしょう? という内容。
私も「死にたい!」なんて思ったことはないですが、嫌なことや面倒なことが起きた時、とりあえず消えたい! とか、明日大雨降ればいいのにとか思ったことがあります。もちろん先の見えない今の状況でも同じように考えている人もいるでしょう。そんな人に読んでもらいたい部分があります。
トンネルのなかを手探りで歩いていると、どこからともなく「生きていれば、いいことがあるさ」という声が聞こえてくることがある。若いころは「呑気なことを言うもんだ」と呆れていたが、あながち嘘でもないと思い直すようになった。
生きていれば、いいことがある。いや、いいことも悪いことも、等しく誰の身にも降りかかる。しかし、どんなに悪いことが起こっても、生まれる感情の種類はそう豊富ではない。
大失恋には、喪失感と自己否定と後悔と恨みが伴った。親の死には、悲嘆と絶望と虚無が生まれた。生涯に亘り不利益を生む理不尽なペナルティには、それらのブレンドに、強い怒りが追加された。深度に差はあるが、私の場合、種類はその程度。慣れる。ああ、これはパターンBの派生商品か、と自分をなだめることもできる。
(『これでもいいのだ』より引用)
一方で「いいこと」は常に新鮮なんだとか。つまり、悪いことも起きるけど、フレッシュで喜べる「いいこと」を味わうためには、なるべく多く生きていた方がいいよというお話なのです。
別の本にはなってしまいますが、私の大好きなレイザーラモンRG先生も『人生はあるあるである』という著書の中で、「人生はプラスマイナス0説」を掲げていて私もそれを信じて生きています。
嫌なことは生きていれば出てくるわけだから、その時に気持ちのやり場をどこにもっていけばいいかをパターン化することで、自分をなだめてあげることができますよね。今、悶々としてしまって「悪い」ターンになっているという人は、どんな感情なのか分析してみると冷静になれるかもしれませんよ!
「これでもいいのだ」と認められると生きやすい
他にも『これでもいいのだ』の中には、自営業者の孤独についてや餃子を食べに行った話、フランスと日本の生活の違いなど、まるでジェーン・スーさんと雑談をしているような気分になって「そうだよね」「わかるわぁ〜」「なるほどね」と言葉が出てしまうようなエッセイがたくさん掲載されています。
この本の中から好きなお話を見つけるもよし、今の自分が嫌だなーとか、「悪い」ターンの真っ只中だな〜とか、なかなかうまくいかないなぁと思っている人が自分を見つめるきっかけにするもよし。本の中ではありますが、ジェーン・スーさんを雑談相手に、日常の何気ないことに笑ったり、時には真剣に考えてみたりするのはいかがでしょうか?
読み終わったころには、「これでもいいのだ」と自分をちょっと好きになって認めてあげられるような日々を過ごせると思います。
【書籍紹介】
これでもいいのだ
著者:ジェーン・スー
発行:中央公論新社
思ってた未来とは違うけど、これはこれで、いい感じ。疲れた心にじんわりしみるエッセイ66篇。