ものごとをポジティブに受け止める人と、ネガティブに受け止める人とがいる。同じ現象でも、受け止めかたによって大きく違う。
私の知人で「もう40歳なのに、まだ結婚できないなんて」と嘆く人がいる。その一方で「まだ40歳だし、きっとこれからいい人が現れるよね」と前向きな人もいる。同じ40歳でも受け止めかたによって、全然違う意味合いになってしまうのだ。
結婚というのはご縁で、決して数字ではない。10代で生涯の伴侶と出会う人もいれば、50代で結婚相手と巡り会えたという人もいる。結婚のタイミングは人それぞれ違うということは頭でわかっていても、ついつい人と比べて落ち込んでしまう人がいる。どうせならポジティブに物事を考えたほうが人生うまくいくのではないだろうか。
人の短所を探すか長所を探すか
ポジティブな考えかたで生きていると、人に対してもポジティブになれる。「仁者は常に日の是を見る。不仁者は常に日の非を見る。」という儒学者・伊藤仁斎の言葉がある。ポジティブな人は、人の良い面を積極的に褒めている。逆にネガティブな人は、人のアラに目がいき、批判ばかりしてしまいがちなのかもしれない。
『ポジティブ・インパクト まわりにいい影響をあたえる人がうまくいく』(ボブ・トビン・著/ディスカヴァー・トゥエンティワン・刊)は、「人生で一番大切なのは、ポジティブな影響を人に与えること」と説く本だ。そうすると、誰かのためになるだけでなく、自分も周囲の人から好意的に思われるようになるからだという。
誰もがポジティブな影響を与えられる
本書の最も素晴らしいところは、自分の居場所を変化させる必要がないということだ。今いる場所でポジティブ・インパクトを与える人になれるというところだ。
本書では、まわりの人に目を向け、今すぐ行動を起こすことを重要視している。「ポジティブな影響を与えることが仕事」だというのだ。言われてみると腑に落ちる。たとえばクリエイターは、自らが作り出した作品を目にした人に何らかのポジティブな影響を与えられる。起業家も、事業によって誰かにポジティブな影響を与えることが仕事だと言えるからだ。
ささいなことが大きな動きとなる
どんな人間であっても、周囲の人に笑顔を振りまき、誰かが困っている時に助けたり、悩んでいる時に励ますことができる。迷っている時に背中を押すこともできる。そうしたこともポジティブ・インパクトだというのだ。様々な人が様々な立場でこうした動きをしていれば、世界は良い方向に変化していけるのかもしれない。
気を配る余裕がないという人は多くいる。自分のことだけで精一杯だという。ただ、世界中の人が自分を優先してしまったら、世の中の秩序はあっという間に乱れてしまう。人はそれぞれ誰かを支えたり、誰かに支えられたりして生きているのだとしたら、まずは自分が人を支える側に回ってみよう、というのが本書の主旨なのだろう。
ポジティブのペイ・フォワード
「ペイ・フォワード」という言葉がある。自分が誰かから善意を受けたら、他の3人に善意を贈ろう、という試みだ。同名の映画では、そうすることで世界が変わるかもしれないと主人公は考えていた。「ポジティブ・インパクト」も、誰かにポジティブな気持ちを与えることで自分の周囲が大きく変化する、というのだから、近い感覚があるのだろう。
「自分はこんなに頑張っているのに認めてもらえない」という気持ちを抱いている人はとても多い。たいていの人は自分の頑張りを認めてもらおうと躍起になる。そうではなく、周囲の人をまず自分から認めて褒めることから始めるべきなのかもしれない。いつしかお互いを褒めあう環境が育ち、誰かが「いつも頑張ってますね」と認めてくれるようになるかもしれないからだ。この小さな積み重ねがやがて世界を変えるのかもしれない。
【書籍紹介】
ポジティブ・インパクト まわりにいい影響をあたえる人がうまくいく
著者:ボブ・トビン
発行:ディスカヴァー・トゥエンティワン
有意義で、人から尊敬され、認められる、幸福に満ちた人生を築くシンプルな方法。アメリカでトップコンサルタントとして活躍、慶應義塾大学で20年以上教えてきたトビン教授が語る今すぐできる簡単な73の方法。