『天才科学者はこう考える――読むだけで頭がよくなる151の視点』(ジョン・ブロックマン・編、夏目大、花塚恵・訳/ダイヤモンド社・刊)という書籍がある。
この書籍は、一流の研究者や思想家などだけが入会することができるオンラインサロン「エッジ」の会員である151人が、あるテーマに沿って書いたコラムが収録されている。そのテーマは
人々の認知能力を向上させうる科学的な概念は何か?
(『天才科学者はこう考える――読むだけで頭がよくなる151の視点』より引用)
というもの。簡単に言えば、「世の中のことを理解するために使える、信頼できる考え方やものの見方」という感じだ。これについて、151人が論じているのが本書だ。
天才科学者が世の中をどうやって見ているのかがわかる
「科学的な概念」と謳われているが、実際には科学だけではなく、経済学や哲学、倫理学、法律学など、あらゆる分野を分析した活動から生まれる考え方も含まれている。読んでいくと「ああ、そういう考え方もあるのか」と思うものも多い。
さすがに151人がどんなことを書いているのかをここで列挙するのは難しいので、できれば実際に読んでもらいたい。この世界をどうやって見るのか、そして未来はどうなっていくのかということについて、立ち止まって考える機会が得られるはずだ。
科学はいずれ否定されるものである
本書に出てくる151人の多くは、科学者だ。そして、その多くが同じことを語っている。それは、「科学はいずれ否定されるものである」と認識している点だ。たとえば、ジャーナリストであるキャサリン・シュルツは以下のように記している。
「過去の時代の科学理論の多くは、のちの時代に誤っているとわかった。だから、私たちが正しいと信じている科学理論も、多くがいずれ否定されるのではないか」
(『天才科学者はこう考える――読むだけで頭がよくなる151の視点』より引用)
実践神経学者のジェラルド・スモールバーグはこう書いている。
科学においては例外はひとつも許されない。どの理論も容赦なく訂正されていく。誤りが見つかればそこから学ぶ。どれほど神聖とされた理論であっても、いつ訂正されるか、無効になるかわからない。その状態が永久に続くのである。
(『天才科学者はこう考える――読むだけで頭がよくなる151の視点』より引用)
物理学者のローレンス・クラウスはこう記している。
だが本当は、不確実性は科学にとって「核」と言ってもいいほど大切な要素である。
(『天才科学者はこう考える――読むだけで頭がよくなる151の視点』より引用)
これらをまとめると、我々が今信じているさまざまな科学的な理論や法則というものは、実は正解ではなく、もしかしたら間違っているかもしれないということ。そして、それを認めて新しい事実で上書きしていくことこそ、科学者の役目なのだということだ。
過去には地動説や地球平面説が信じられていた
我々は、学校などでさまざまなことを学ぶ。しかし、それらをそのまま信じてしまうのは危険だ。せいぜい「今の時点ではそういうことになっている」という認識が正しい。
たとえば、500年くらい前までは地球が宇宙の中心で太陽やその他の惑星が地球を中心に回っているという「天動説」が信じられてきた。また、地球は球状ではなく平面であるという「地球平面説」というものも信じられていた時代がある。
もちろん、現在は衛星写真などによりそれらは否定され、地球は球状で、太陽の周りを回っているということが解明されている。しかし、それですらもしかしたら違うのかもしれない。現時点ではそういうことになっているだけで、本当はもっと違う可能性だってある。
絶対にたどり着けない真実に近づく努力をするのが優れた科学者
先に登場したキャサリン・シュルツは、優れた科学者についてこう述べている。
絶えず真実に近づく努力をしながらも、絶対的な真実にたどり着くことは永遠にないと理解している。
(『天才科学者はこう考える――読むだけで頭がよくなる151の視点』より引用)
我々は、自分が見聞きしたものをとりあえず自分の中の真実として認識する。そして、それ以外のものは信じない。一方、科学者は、目の前に自分の認識と異なるものが提示されたら、それを分析して確認する。その結果が、これまでの理論と矛盾していてもそれを受け入れていかなければならない。
我々もそのような視点を持つことで、現在、そして未来を認知する能力が高まるのではないだろうか。
【書籍紹介】
天才科学者はこう考える――読むだけで頭がよくなる151の視点
著者:ジョン・ブロックマン(編)
発行:ダイヤモンド社
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