世の中をじっくり眺めてみると、いろいろな不思議に出会う。「なんで?」と思っては見るものの、特に深く考えずにスルーしてしまっていることが多いが、よく考えてみるとやはり「なんで?」と思ってしまう。
最近僕が「なんで?」と思っているのが、コンビニにある小さな買い物かごだ。
子ども用だと思っていたが……
我が家の近くにあるコンビニに、いつごろからか普通の買い物かごのほかに小さな買い物かごが置かれるようになった。正直、大人が持つにはちょっと小さい。子ども用のかごに見えた。たしかに、ファミリー層も多いので子ども用のかごがあってもおかしくないが、どこにも子ども用ということは書かれていない。よく見れば、大人もその小さなかごを使っている。
最初は違和感があったが、何度も目にしている内に別に気にならなくなり、今では普通にその小さなかごを使っている自分がいる。「子ども用のかごなんだろう」ぐらいにしか思っていなかったのだが、実はその小さなかごには秘密があったようだ。
小さなかごは買いすぎ防止からの買い控えを防ぐためのもの
『なぜ崎陽軒のシウマイは冷たいのに売れるのか?』(中山マコト・著/みらいパブリッシング・刊)は、タイトルにあるとおり、ヒット商品がなぜ売れているのかについて考察した書だ。
温かいものがおいしいとされているシウマイを、冷たくてもおいしくした崎陽軒。「冷たくてもおいしいシウマイを作る!!」というアイデアと強い想いがあってこそ、今の成功につながっている。本書には、同じような事例がいくつも紹介されているが、そのなかにコンビニの小さなかごについても記されていた。
通常サイズの買い物かごは、スーパーマーケットで使われているものと同じ。普通に考えたら、買い物かごが大きいほうがついつい目に付いたものを入れてしまい、思わず買い過ぎちゃった、なんてことになるので、店側としてはありがたいはずだ。
しかし、この方程式はコンビニでは当てはまらない場合がある。それはコンビニは客単価が低いからだ。コンビニは定価販売の商品がほとんど。それをあれもこれもをかごに入れていると、最終的に「買いすぎだ!」と思って、本当に買おうとしていたものまで買わなくなる可能性が生まれてしまうからだ。極端な場合、「コンビニは高いからスーパーに行こう」となり、何も買わずに帰ってしまうかもしれない。
そういうことを避けるために導入されたのが、小さな買い物かごなのだ。
小さいサイズのバスケットだと、買いすぎてしまう心配がなくなります。一定以上は入らないわけですから、お客さんは安心していつも通りの買い物ができます。
(『なぜ崎陽軒のシウマイは冷たいのに売れるのか?』より引用)
小売店などは、お客さんにたくさん買い物をしてもらうためにいろいろアイデアを出したりするものだが、小さな買い物かごに関してはまったく逆の発想なのだ。
身近なところにビジネスチャンスの種が転がっているかも?
著者は、このようなちょっと違う角度から物事を考えることを「Think Different」と呼んでいる。あのスティーブ・ジョブズがよく口にしていた言葉だ。そして、それを実現するためには「工夫」が必要となる。その「工夫」について、著者は以下のように記している。
工夫は大事です。そして、工夫とは真似ではありません。
少し面倒な言葉を使うとすれば、本当の工夫とは、「カスタマイズ」であり、「アレンジ」です。(『なぜ崎陽軒のシウマイは冷たいのに売れるのか?』より引用)
何も突拍子もないことを考えろ、というわけではない。かといって、ただ真似をすればいいとうものでもない。既存のアイデアにヒントをもらい、それを自分なりに「カスタマイズ」して「アレンジ」していくこと。それが「Think Different」なのだ。
「Think Different」の種は身近に転がっている。あとは、それに気づけるかどうか。もしかしたら、僕たちの周りにはビジネスチャンスになるものがゴロゴロ転がっているのかもしれない。ちょっとでも疑問に思ったら、「なぜ?」と思い考えてみると、何かおもしろいアイデアが浮かんでくるだろう。まず考えてみること。それが重要なようだ。
【書籍紹介】
なぜ崎陽軒のシウマイは冷たいのに売れるのか?
著者:中山マコト
発行:みらいパブリッシング
他と同じことをしても売れない時代。特にビジネスの世界で常識や慣習を意識していてはどうしても他と同じになってしまう。しかし、崎陽軒のシウマイのように、他と違ったことをやって大ヒットした商品・サービスはたくさんある。今ある商品も、角度を変えてみるだけでまったく別の価値が生まれたり、世の中に受け入れられるものになる可能性を秘めているのだ。普通にしていたらなかなか気づかない発想の転換について、マーケター中山マコトが数々の成功事例をひも解き、指南する。