最近「老い」を感じることが増えてきました。35歳なので先輩方からはまだまだ若い! と言われるのも承知ですが、5年前とは明らかに違う自分の心と体は、確実に老いているのだと実感する機会が増えています。
テレビでも「人生100年!」なんて高らかに言われちゃうもんだから、ここから40年、50年生きるとしたらどうなるんだろう?と考えることも増え、老いについてもっと知りたい! と『ひとりで老いるということ』(松原 惇子・著/SBクリエイティブ・刊)を手にしてみると、知らなかったことだらけで目からウロコがボロボロ落ちる衝撃を味わいました。
この『ひとりで老いるということ』には、著者の松原さんが自分より先輩の80代90代の方々に徹底取材を行った内容が書かれてあり、老後のリアルな生き方が紹介されています。
リアルな老後をイメージできますか?
著者の松原さんは1947年生まれで、おひとり様の方。これまでも『女が家を買うとき』や『老後はひとりがいちばん』など女性ひとりの生き方に関する著書を多く出版されています。私はこの『ひとりで老いるということ』で初めて出会ったのですが、のんべんだらりと生きてきた自分にグサグサと言葉が突き刺さり、「読みたくても読むのが…読み進めるのが怖い……」とビクビクしながら読みました。
どんな話が掲載されているかというと、子どものいない女性が親戚と養子縁組をした話、有料老人ホームで新しく恋人作ってラブラブな生活をしている話、90歳でも仕事をしている女性の話、詐欺に騙されてしまった人の話などなど。決して怖い話が載っているわけではないのですが、自分の想像を超えてくる内容ばかりなので、「老後のイメージがわかないなー」と思っている人には超おすすめです。また「はじめに」で、著者の松原さんはこんなことも語っています。
既婚未婚にかかわらず、子供がいるいないにかかわらず、人はひとり。オギャーと大きな声をあげて暗闇から外界に出てくるときはひとり。
そして、最期も、ひとりで外界に別れを告げ、暗闇の中に入っていく。
(『ひとりで老いるということ』より引用)
「ひとりで老いる」というと、どうしても未婚だったり、パートナーに先立たれた「ひとり」を思い浮かべてしまいますが、どんな人でもみんな老いるも死ぬもひとりなのだと気付かされました。
老いが嫌だといっても抗えないし、死にたくないと思っていてもそれはいつかはやってくる……じゃあどんなシチュエーションであろうと「ひとり」でも大丈夫な力を、日ごろから養っていこうじゃないか!! 妙な気合いも入ってしまった言葉でした(笑)。
相続する人がいない場合、財産は国庫へ行くって本当?
私が読んでいて思わず「えっ!?」と、声をあげてしまった一節をご紹介しましょう。
ご存知だと思うが、親やきょうだいも子供もいないおひとりさまの場合、遺言書がないとすべての財産は国に没収されるからだ。
(『ひとりで老いるということ』より引用)
ご存知じゃない!
そんなこと誰も教えてくれなかったじゃない〜! これを高校の授業で教えてくれていたら(もしかして教わっていたのでしょうか……汗)人生計画も色々と変わっていたかもしれないなぁ〜なんて思ってしまいました。
例えば私より先に旦那さんが亡くなって、私も死んでしまうと子どもがいないので、誰に相続するかを決めておかなければいけません。手元にあるお金を使い切って、0円でこの世を去れれば最高かもしれませんが、そんな計画的に人生を終えられるはずはない……ってなんとなくわかっていることですよね。遺言書なんていらないだろう〜くらいに思っていましたが、残る予定のある財産があるなら、知っている誰かにあげたいし、国に没収されるくらいなら、違うことに使いたいなぁ〜なんて考えさせられました。「ひとり」で老いていくと決心しても、難しい世の中の仕組みになっているんですねぇ。まだまだ勉強が必要ですね。
孤独を愛する力を持つ
切ない気持ちになってきたところで、もっと切なくなるようなことをお伝えしましょう。
誰もが、人間である以上、孤独だ。理由もなく寂しくなったり、電話が鳴らなくて寂しくなるとき、「自分はなんて孤独なのだろう」と、暗い気持ちになるものだ。まだ、生命体が若いときは、忙しさで紛らわすことができるが、老いが孤独を加速させる。何もしないでいたら、家から一歩も出ずに孤独地獄の中で息絶えることになりかねない。
(『ひとりで老いるということ』より引用)
そんなの嫌だぁーー!!!!!!
しかし、読み進めていくと、松原さんはその「孤独」とどのように向き合うべきかのヒントも与えてくれます。
寂しいなあと言ってないで、感謝の言葉を使うようにしたら、力が湧くはずだ。ひとりを満喫している90歳の方は、毎晩寝る前に、自分の体の部位に手をあてて、「ありがとう、心臓さん」「ありがとう、膝さん」と感謝を捧げるそうだ。そうすると体が喜ぶのがわかり、明日も楽しく生きようと思うのだそうだ。皆さん、努力しているのだ。孤独を味方につける自分なりの言葉のマジックを持っているのだ。
(『ひとりで老いるということ』より引用)
なるほど。「ひとり」=「孤独」と嘆いて悲しく切ない気持ちのままでいるのではなく、「ひとり」の時間を楽しめるような心がけが日ごろから大事ということなんですね。これは「老い」だけではなく、コロナ禍で自粛せざるを得ない状況の生き方にも通じるような気がします。この状況を苦しい、辛いという気持ちに押しつぶされて前に進めなくなってしまうのではなく、少しでも前向きになれるような気持ちを自分で作り出せるかが鍵のように感じました。
時間が止まらない限り、生まれた日から老いや死からは逃れられません。わかっていることを改めて知ることで、見えてくる新しいこともあるはずです。ヒントを探したい方は、ぜひ一度読んでみてください。きっと読んで良かったと思えることがあるはずです。
【書籍紹介】
ひとりで老いるということ
著者:松原惇子
発行:SBクリエイティブ
年老いた自分はどう生活しているのか? 夫(あるいは妻)に先立たれ、たったひとりで生活しているのか? それとも老夫婦二人で老々介護状態か? もしかしたらボケているかも? 生活費は足りてるのか? 体は不自由になっていないか? 未来の自分の姿を知るのはちょっと怖い。知れば知るほど、歳を重ねるのが嫌になるかもしれないし、知れば案外怖くなくなるかもしれない。そこで、SSSネットワーク(ひとりの老後を応援する会)代表の松原惇子さんは、「だったら未来の自分の姿を知ろうじゃないか」と思い立ちました。たくさんの90歳を取材して得た松原さんの結論は、「90歳の自分は、いまの自分の生き方で決まる」ということ。不安を吹き飛ばし、「いまを元気に生きよう!」と勇気をもらえる1冊。
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