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2021/4/4 9:30

日本のディズニーランドの入園料は安い? 世界との価格差に驚き!~注目の新書紹介~

書評家・卯月鮎が選りすぐった最近刊行の新書をナビゲート。「こんな世界があったとは!?」「これを知って世界が広がった!」。そんな知的好奇心が満たされ、心が弾む1冊を紹介します。

 

「安い!」と喜んでばかりはいられない!?

今というわけではなく、もう5~6年前からですが、海外によく行く友人が日本に帰ってきてしみじみ言うのは「日本の外食は安いのに、どこで食べても美味しい!」。ヨーロッパやアメリカ、東南アジアの国々では、日本と同じくらいかそれ以上の値段でも、味とサービスにはかなりバラツキがあるとか。

 

思えば、牛丼300円、ミラノ風ドリア300円、天丼500円、無限にお肉が出てくるしゃぶしゃぶだって2000円ほど。それで店内も綺麗でサービスも行き届いているのだから、考えてみればすごいことです。

しかし、これが一概にいいとは言えないようで……。本書『安いニッポン 「価格」が示す停滞』(中藤 玲・著/日本経済新聞出版・刊)は、そんな安すぎる日本の実態に迫る1冊。

 

著者は、日経新聞の記者・中藤 玲さん。新聞連載をまとめた内容となっています。もともと中藤さんが2019年にソウルで、おみやげ用の韓国食器を買おうと現地のダイソーを訪れたところ、3000ウォン(約280円)や5000ウォン(約470円)だったため、「日本の価格が突出して安くなっているのでは?」という問題意識を抱いたといいます。

 

日本のディズニーランドはかなり割安!?

第1章は「ディズニーもダイソーも世界最安値水準」。海外と日本の価格差の実態とその理由に迫ります。たとえば、ディズニーランドの入園料は日本の8200円(1デーパスポート)に対して、フロリダは約1万4500円。パリは約1万800円、敷地が狭い香港でも約8500円と日本を超えているそうです。

 

ダイソーにしても基本価格はアメリカが約160円、タイは約210円、イスラエルは約320円……。それでも現地では安さと日本ブランドで人気だとか。

 

この価格差は長年続いた日本のデフレが原因。企業が価格転嫁するメカニズムが破壊され、値上げできず儲からないため、賃金も上がらず、結果消費も増えない……という悪循環が続いていると本書は指摘します。

 

第2章「年収1400万円は『低所得』?」もショッキングな内容でした。東京・港区の平均所得はおよそ1200万円。これは私からすれば羨ましい金額ですが、サンフランシスコではなんと「低所得」に分類されるというから絶句……。

 

サンフランシスコに住んでいる日本人経営者への取材が載っていましたが、3ベッドルームあるアパートメント(日本でいうマンション)の家賃は約47万円。食費は宅配費込みで、近所のカフェの朝食(BLサンドイッチ、サラダ、コーラ)3700円、昼食のとんこつラーメンとギョウザ3700円、夕食は日本でもおなじみの「シズラー」のステーキとケーキで6400円と、1日の食費は優に1万円を超えるとか。確かにこれでは年収1200万円でも足りないかもしれません。

 

有名IT企業の本社と隣接するサンフランシスコならではという気もしますが、アメリカ全体で見ても、30代IT人材の平均年収は1200万円以上。日本は30代IT人材は平均年収約520万円……。かなりの差があります。

 

日本型雇用は、年功序列で雇用が安定しているなどいい面もあるのですが、優秀な人材を海外企業に取られて競争力が失われるのが難点。確かに収入差がこれだけはっきりしていると、海外企業に分があるでしょう。

 

第3章「『買われる』ニッポン」では北海道・ニセコへの海外投資やアニメ会社の買収など、日本に流れ込む外資の実態に迫り、第4章「安いニッポンの未来」ではコロナ後の経済を予測しています。

 

もともと新聞記事だったこともあって、取材とデータのバランスが程良く読みやすいのが特徴。普段あまり触れることのない、世界の物価と日本の現状がよくわかります。

 

モノの価格も賃金も企業の価値も安くなってしまったニッポン。グローバル社会になり、日本のいいところは残しながら、世界的な水準も保たなければならない。かなり難しい時代になってきた気がします……といいつつ、100円ショップで「これで100円なの!?」と、かわいい文具やデザインのいい雑貨を嬉々として買っている自分がいます(笑)。

 

【書籍紹介】

安いニッポン 「価格」が示す停滞

著者:中藤玲
発行:日本経済新聞出版

日本のディズニーランドの入園料は実は世界で最安値水準、港区の年平均所得1200万円はサンフランシスコでは「低所得」に当たる…いつしか物価も給与も「安い国」となりつつある日本。30年間の停滞から脱却する糸口はどこにあるのか。掲載と同時にSNSで爆発的な話題を呼んだ日本経済新聞記事をベースに、担当記者が取材を重ね書き下ろした、渾身の新書版。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

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