本・書籍
2021/5/9 6:30

お笑い第一世代・いかりや長介と萩本欽一の凄み、第三世代・ダウンタウンととんねるずのカリスマ性~注目の新書紹介~

書評家・卯月 鮎が選りすぐった最近刊行の新書をナビゲート。「こんな世界があったとは!?」「これを知って世界が広がった!」。そんな知的好奇心が満たされ、心が弾む1冊を紹介します。

 

 

世代に特徴あり! あなたは何世代?

こんにちは、書評家の卯月 鮎です。新人類、ゆとり世代、さとり世代……。世代を表す言葉っていろいろありますよね。焼け跡世代、ポパイ・JJ世代、ロスジェネ世代なんてちょっと変わったネーミングもあります。

 

「○○世代」と言われて、当の本人たちは「そんなことない!」と思うでしょうし、個人個人はバラバラなのですが、なんとなく当たっているような気もするのが世代論の面白さでしょう。

 

お笑いの世界では、今、「第7世代」と呼ばれる若手がテレビを席巻しています。第七世代はあまりガツガツしていないのが特徴。昔ながらの「スキあらば前へ前へ」という笑いのスタイルとは少々違うようです。

そんなお笑いの世代論について、わかりやすくまとまっているのが本書『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』(ラリー遠田・著/光文社・刊)。ネタの傾向や、お笑いとテレビの関係性、芸人の気質など、世代ごとの変化を的確に分析・解説しています。

 

著者は東大卒業後、番組制作会社を経て、現在はお笑い評論家として活躍するラリー遠田さん。『教養としての平成お笑い史』『M-1戦国史』など、テレビ・お笑いに関する著書多数。お笑い評論家といえばこの人! という存在になりつつあります。

 

テレビにフィットした芸でスターに!

この本では、クレージーキャッツが活躍していた60年代以後に焦点を当て、「テレビ芸」というべき新たな笑いが発明されたところを起点として論をスタートさせています。各世代ごとに代表的な2組の芸人を取り上げ、彼らを中心に話は進んでいきます。

 

まず、第一世代はいかりや長介さんと萩本欽一さん。テレビで見せるための「テレビ芸」を極めたふたりです。メンバー5人のキャラを固めたうえで新ネタを作り続け、飽きられないようにしたドリフターズ。それまでの舞台を中心とした芸人が、ひとつのネタを磨いてきたのとは異なる手法が当たりました。

 

一方で、萩本欽一さんは一般人が何気なく口にする言葉の面白さに目覚め、素人いじりを編み出してテレビの王様に! テレビではプロの芸人の芸よりも、この手の自然発生的な笑いのほうがウケやすい。テレビの登場・普及とともに笑いの取り方も変わっていったのです。

 

続く第二世代は、ビートたけしさんと明石家さんまさん。毒舌で欺瞞を暴く「批評の天才」たけしさんは、「既存の権威を疑い否定しながらも、一方でその古い価値観に縛られ続ける団塊世代」であり、「真面目さを引きずっている」というのは興味深い分析です。

 

さんまさんは無邪気で明るく恋愛を謳歌する「しらけ世代」であり、テレビで軽妙に恋愛の話ができる芸人として人気になったというのも新鮮な視点でした。

 

「新人類世代」のとんねるず・石橋貴明さんとダウンタウン・松本人志さんの分析も「なるほど!」と思える内容。思想の重石がなく上下関係に縛られない新人類世代の彼らはいわゆる師匠を持たず、自分が面白いと思うもののみを追求していく……。

 

学問として確立されていない「お笑い史」は、どうしても書き手の思い入れが強くなってしまうもの。しかし、本書はカジュアルな読み口ながら、俯瞰的な分析が冷静になされ、紹介されるエピソードも芸人本人の著作などから引用されていて納得感があります。

 

テレビとともに歩んできた第一から第七世代。本格的な動画配信時代に移ってきた今、第八・第九世代はどのような芸人が人気者となるのでしょうか。楽しみです。

 

 

【書籍紹介】

『お笑い世代論 ドリフから霜降り明星まで』

著者:ラリー遠田
発行:光文社

「売れた」芸人たちの栄枯盛衰の物語。「世代」で読みとくもう一つの戦後史。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

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