本・書籍
自己啓発
2021/7/14 6:15

すべてを「あきらめる」と、ラクになる——プロ奢ラレヤーに教わる「抗わない」生き方

抗っている。まず、コロナ禍の閉塞感。次に、漠然とした不安。そして、言葉で表せないさまざまな焦り。特に理由もないのに、ベッドから出たくない朝がある。メンタルやられちゃってるのかと思う瞬間もある。とにかく、抗っている。

 

抗ってダメなら、あきらめるほうが効率的

なりたい自分とか理想とかにがっつりつながるような大げさなものじゃなく、ぐっと日常生活に近いところにある何かに向いている感情だ。この種の感情には個人差があるだろうし、ライフサイクルにかかわる部分もあるだろう。筆者の場合、ミッドライフクライシスにしては年齢が行き過ぎているから、更年期なのかな。それはそれで抗いたくなるが。

 

プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略―お金に困らず、ラクに、豊かに生きるには』(プロ奢ラレヤー・著/祥伝社・刊)は、何かと抗っている自覚があったらすぐに手に取るべき一冊だ。

 

夢なんか叶わない?

・お金がなくて、生活が苦しい人

・「何者か」になりたいけど、なれていない人

・しんどい労働はせずに、生きていきたい人

・プロ奢ラレヤーがどのように現在の生き方に行き着いたのか、その方法論を知りたい人

 

といった人たちを対象に書かれたこの本。まえがきに次のような一文がある。

 

夢は叶いません。というか、そもそも世界のあらゆる夢はほとんど叶っていません。なんなら、「99.9%」の夢は叶わない。そこに努力があろうが、「あきらめない」でいようが、現実的に99.9%の夢はいつだって幻なのです。

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

煽りのニュアンスも含め、魅力的な響きを感じる筆者には、すでに何らかのバイアスがかかってしまってるんでしょうか?

 

プロ奢ラレヤーとは?

著者の“プロ奢ラレヤー”さんとは、どんな人なのか。フォロワー数ざっくり10万のTwitterアカウントを介して寄せられる「奢らせてください」リクエストに応え、ご飯を奢られることを主な活動としている。世間一般で普通と思われているものすべてに縛られることを嫌い、靴下も履かない。というか、履けない。

 

3年半前、当時19歳だった僕は、まず「労働」をあきらめました。「バイトするくらいなら、メシなんていらない!」「公園で寝て、だらだらしてるほうがずっとマシ!」「働いて食う焼肉より、働かずに食う雑草だ!」

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

そして物価の安い国へ行って(!)ホームレスをしたり、現地で作った友達にご飯を奢ってもらったり、ゴミ箱から拾ったハンバーガーを漁ったりする生活を送った。ここまで読んで、すでに半ギレ状態になっている人がいるかもしれない。でも、ちょっと考えてほしい。プロ奢ラレヤーさんは、他人の目にどう映ろうが、自分というものを明らかにしていく過程に共鳴する人たちにご飯を奢ってもらい、そうしたライフスタイルから得るものをまとめて本にした。世間的には間違いなくネガティブに映るだろう自分のあり方を実現するため、わざわざ国外に出ていくというアクロバティックなポジティブさもある。

 

トレードオフ・ベースの生き方

次にあきらめたのは、「家」だ。

 

フォロワーの家に泊まればタダでいいじゃん! 外よりも100倍は優雅!! タダなのに暖かい! 涼しい! Wi-Fiもあって、風呂も入れる! これで家賃も0円になりました。プライドも、完全に0です。

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

労働も家もプライドも、あって当たり前のものであるはずだ。そういうものをあきらめる背景にあるものは何なのか。

 

「あきらめる」ということ―これはどこか「悪いこと」として扱われる節があります。しかし、それはきれいごとです。あきらめることなくして、得られるものはありません。

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

ならばプロ奢ラレヤーさんの生き方は、究極のトレードオフということになる。筆者は、こうしたやり方が間違いだとは思えない。

 

プロの凄み

章立てを見てみよう。

 

・なぜ、あきらめると人生得するのか

・あきらめたくないものに気づくための9ステップ

・あきらめにくい6つのハードル

・実践編 あきらめめチャレンジ

番外編 「あきらめる」以上に何か欲しい人へ

 

しがみついているものが多い人ほど、本書の内容に対する違和感が膨らんでいくだろう。読み進めていくうちに違和感ばかりが膨らんでいくのか。あるいは「あきらめること」を受け容れるスペースが広がっていくのか。

 

ひとつ明確に言っておきたいのは、ありとあらゆる世間体をあきらめているプロ奢ラレヤーさんの言動が完全に一致していることだ。出版契約の締結も、靴下を履くのと同じくらい嫌だったらしい。

 

しかし、この本の印税をもらうためには「契約書」という鳥肌ゾーンを突破しなくてはいけません。契約、ケイヤク、けいやく………。……というわけで、この本の印税はあきらめます。編集者さん、そんな感じでよろしくどうぞ。印税、いりませーん。

『プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略』より引用

 

これがプロの凄みですよ。

 

【書籍紹介】

プロ奢ラレヤーのあきらめ戦略 お金に困らず、ラクに、豊かに生きるには

著者:プロ奢ラレヤー
発行:祥伝社

絶対に働かない彼は、なぜ生活に困らないのか—。才能、スキル、何もいらない。ただ「あきらめる」だけ。どんな時代でも通用する生存戦略を大公表!

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