本・書籍
2021/8/8 6:30

無印良品の「コオロギせんべい」はえびせんの味? コオロギが世界を救う~注目の新書紹介~

私は無印良品の「不揃いバウム」やバターチキンカレーが好きでよく無印良品の商品をチェックしているのですが、最近気になっているのが「コオロギせんべい」。コオロギのパウダー入りのえびせんのようなお菓子で、SNSでも話題になっています。

 

コオロギは地球にやさしくヘルシーな食材

一度は食べてみたいと思っていたところに、今度はドンキホーテでコオロギラーメンなるものを発見! どうやらコオロギフードがちょっとしたブームのようです。

最強の食材 コオロギフードが地球を救う』(野地 澄晴・著/小学館新書)は、コオロギの可能性を教えてくれる一冊。著者の野地澄晴さんは発生・再生生物学の研究者で徳島大学学長。コオロギフードブームを支えるひとりです。

 

野地さんとコオロギの出会いはおよそ25年前。擬態する昆虫としてマレーシアのハナカマキリを研究していた際、エサとしてコオロギを注文したのがすべての始まり。カマキリの飼育には失敗したものの、コオロギの実験生物としての可能性に気付き、それ以来徳島大学ではコオロギの研究を続けてきました。この実績が徳島大学発のコオロギベンチャー企業「グリラス」にも活きています。

 

コオロギはえびせんに最適!?

第1章「人類の課題:環境悪化と食糧不足」では、なぜ昆虫食なのか、なぜコオロギなのかの理由が語られます。近年、地球温暖化の原因として問題視されているのが、牛のげっぷやおならなどに含まれるメタンガス。

 

その点、昆虫はCo2の排出量が牛のような大型家畜に比べてごく少量で済みます。昆虫のなかでもコオロギは約30日で発育し、雑食性で飼育も簡単。しかも高タンパクで低糖質と、栄養源としてのメリットも大きいとか。

 

徳島大学で繁殖させているのは石垣島などに生息するフタホシコオロギ。一年中産卵するので増える速度が早く、理論上では1000個の卵を理想的な環境で飼い、すべての成虫を繁殖に回すと1年後には約477兆匹になる計算だそうです。コオロギの繁殖力恐るべし。これを味方に付けない手はないですね。

 

2章では、徳島大学でコオロギベンチャーが立ち上がった経緯と無印良品の「コオロギせんべい」商品開発のエピソードが紹介されます。

 

国立大学が法人化されて以降、研究費の不足に悩んでいた徳島大学はクラウドファンディングに挑戦しようと食用コオロギのプロジェクトを立ち上げました。この「コオロギプロジェクト」の記事を見た「無印良品」を運営する良品計画から声がかかり、コオロギ・パウダーを練り込んだ食品を作る運びとなったのです。

 

しかし、そこには大きな壁が……。コオロギ・パウダー入りの食品を作ってくれる食品会社が見つからない!? 実は食品に関わる業者にとって昆虫はタブーな存在。通常の食品製造ラインに昆虫の痕跡が少しでもあると不良品になってしまいます。あちこちの会社から断られるなか、唯一引き受けてくれたのがえびせんの会社だったというわけです。

 

実際にコオロギせんべいの味はえびせんに近く、「香ばしくて普通に美味しい」「手が止まらなくて完食した」との書き込みがTwitterでも見られました。

 

コオロギせんべいの話題以外にも、国内外のコオロギビジネスの動向や、骨再生治療にも使える医療材料としてのコオロギの有用性など、勉強になることばかり。「こんなに食べるものがあるのにコオロギなんて……」と思っている人は、この本を読むと、「なるほど、コオロギもありだな」と思うようになること請け合いです。

 

【書籍紹介】

『最強の食材 コオロギフードが地球が救う』

著者:野地澄晴
発行:小学館

2021年5月、世界で食糧危機に瀕している人口は1億5000万人超。こうしたなか脚光を浴びているのが「昆虫食」、なかでも食用コオロギだ。高タンパク・低糖質で繁殖力の強いコオロギの研究をいち早く始めた徳島大学長の野地澄晴さんがその実状を解説する。「コオロギせんべい」の販売から、新型コロナウイルスのワクチンへの応用、延命や再生医療への活用まで、まさに地球を救うと言っても過言ではない、その可能性を探る。

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【プロフィール】
卯月 鮎
書評家、ゲームコラムニスト。「S-Fマガジン」でファンタジー時評を連載中。文庫本の巻末解説なども手がける。ファンタジーを中心にSF、ミステリー、ノンフィクションなどジャンルを問わない本好き。

 

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