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2022/2/22 6:15

なぜ、英語がうまくならないのか? それは英語独特の”考え方”を理解していないから!?『英語の思考法』

NHKの朝ドラ『カムカムエヴリバディ』が “やり直し英語”のきっかけとして熱い支持を受けている。ラジオ講座テキストの売上も好調なようだ。

 

英語学習もリモートが主流化

コロナ禍で生まれたさまざまなもののリモート化は、英語の勉強にも訪れた。PCはおろかスマホだけで完結する対面オンラインレッスンが主流になっている。このやり方なら、完全にプライベートな空間の中で、グループレッスンにありがちな恥ずかしさを感じることもなく進めていくことができるだろう。

 

各種SNSには、今も「こんなに短い期間でペラペラになれる」的な英会話レッスンの広告があふれている。そうなれる人も、もちろんいるにちがいない。ただ、絶対的なパーセンテージがどのくらいかというと、話が変わってくると思うのだ。

 

言語の文化背景を掘り下げる

英語学習も最新フォーマットに乗せたほうが効率的なのかもしれないけれど、それがオールマイティであるとは言い切れない気がする。昔ながらの学習法を心地よく感じ、学習効果を上げていく人もいるのではないだろうか。

 

外国語を身につけようとする際には、その言葉が使われている国の文化的背景を知ることが重要だ。最近の英語のオンラインレッスンには、ドラマを通してマスターを目指すというカリキュラムも目立つ。世代感覚に合致した、最大公約数的な学習法なのかもしれない。ただここでは、最近のトレンドとはちょっと異なるアプローチで質の高い情報を提供してくれる一冊を紹介したい。

 

暗記を単純作業にしないための工夫

英語の思考法 話すための文法・文化レッスン』(井上逸兵・著/筑摩書房・刊)の著者・井上逸兵氏は社会言語学と英語学が専門の大学教授だが、英語を「勉強する」のではなく「身につけようとする」という表現を使う。その方法論は、文法と文化レッスンを軸に進められる。文化レッスンはともかく、文法という言葉に拒否反応を起こす人がいるかもしれない。本書のスタンスは明確だ。

 

「日本の英語教育は、文法ばかり勉強して『英会話』ができない」という話をよく耳にする。親のカタキのごとく悪しざまに言う定型句だ。だが、それは半分合っているが半分間違っている。英語教育論は本書の目的ではないが、文法や慣用句など、教育現場では「暗記物」とされそうなことがらが英語のコミュニケーションの根幹に関わることをわかっていただくのが本書の目論みだ。

『英語の思考法』より引用

 

文法や慣用句は、確かに「暗記物」という言葉でくくられることが多い。その一方で、暗記という言葉の響きだけで思考がシャットダウンしてしまう人もいるだろう。本書は、アレルギーを感じがちな人が多い暗記にまったく異なる角度から視線を向けようとする。

 

「わかりかた」の道案内

こんな文章もある。

 

英語の文法や慣用表現は、「英会話」と核心においてつながっている。むしろ、この英語の核心を理解しなければ、やみくもに「英会話」の修行の旅で放浪することになる。なにごとにもコツというものがある。それを体得することが上達への最短ルートだ(近道というものがあるかは疑問だが)。本書はその「わかりかた」の道案内である。もう一度言おう。文法や慣用表現はコミュニケーションとつながっている。

『英語の思考法』より引用

 

どのような章立てで「わかりかた」の道案内をしてくれるのか。

 

序 章 英語の核心

第1章 英語は「独立」志向である

第2章 英語は「つながり」を好む

第3章 英語にも「タテマエ」はある

第4章 英語の世界は奥深い【応用編】

第5章 英語を使ってみる【実践編】

 

 

「英語では誰もが対等」「日本人が苦手なIとyou」「「つながり志向」の英語」「謝らない英米の謝罪事情」「英語は相手を追い詰めない」「断るにも戦略が要る」など、情景を思い浮かべやすい項目が各章に並ぶ。

 

日本との根本的な違いへの解答

まえがきでも触れられている通り、本書の核は暗記物と形容されるものだ。しかし実際に読んでみると、暗記感はまったくない。何かを覚えるという行いを強いられている気もしない。もうひとつ、紹介しておきたい文章がある。

 

さまざまな英米系の国々の人たちと接していても、あるいは日常、英米の映画、動画、小説、物語に触れていても、根本的なところで日本とは違い、かつそれが一貫して違うということを体感している人は多いのではないだろうか。本書がそのような人たちの謎へのひとつの解答であることを望む。楽しんでいただけたなら筆者としてこれ以上の喜びはない。

『英語の思考法』より引用

 

ひと言では表現しにくい“謎”に対する解答を明確な形で示してくれるし、楽しみながら英語を身につけていく工程を掘り下げてくれる一冊。これから本格的に取り組もうとしている人の目にも、もちろんやり直しを試みる人の目にも、とても新鮮に映るだろう。

 

【書籍紹介】

英語の思考法

著者:井上逸兵
刊行:筑摩書房

学校、ビジネス、英会話ーこんなに勉強しているのに、いつまでたっても自然な英語がしゃべれないのはなぜ?それは日本語にはない英語コミュニケーション独特の「考え方」を理解していないから!「独立」「つながり」「対等」という三つの核心をキーワードに、様々なシチュエーションでの会話やマナーを豊富な具体例とともに徹底解説。英語をマスターするにはまずは思考から!テレビ・ラジオなどで人気の著者が上達への道を伝授する。

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