もう15年以上前になりますが、社会人1年目、岩手から東京へ上京した日のことは今でも忘れずに覚えています。新居のある小岩駅に降り立ち、新しい日々にワクワク。とにかく気合も十分でしたし、明るい未来しかない! そんな気分でした。しかし、半年もすればエネルギーも切れて、学生時代から付き合っていた人にもフラれ、ダメな自分と向き合う日々。そう、春は誰もが無理しちゃう時期なのです!!(笑)
もし、私が小岩駅に降り立つ前に『がんばらないことをがんばるって決めた。』(考えるOL・著/KADOKAWA・刊)を読んでいれば、余計な気合を入れることなく、エネルギー不足になることもなく、過ごせていたかも? そんなことを思ってしまいました。今回は、新生活これから頑張るぞー! と気合の入りまくっている人にこそ読んで欲しい一冊をご紹介します。
「みんな、演じているんだよ。会社の一員を。」という、先輩の言葉
Twitterフォロワー10万人を超える、著者の考えるOLさん。20代の現役OLさんで、2020年8月にツイートした内容に15万以上のいいねがつき、話題となりました。
今日も会社に行けなかった。まあいいか。生きてるし。
— 考えるOL (@thinkingoodol) August 24, 2020
心のモヤモヤや葛藤をやわらかな言葉でツイートされていて、ちょっと疲れた時に眺めると、どんどんハートを押してしまう自分が……(笑)。この『がんばらないことをがんばるって決めた。』は、そんな考えるOLさんのツイートをベースにしたエッセイで、4つの章にわけて書かれています。
その中に、新入社員時代のエピソードも綴られているのですが、営業職で働いていたとき、取引先さんに怒られてしまったり、あまりの辛さに泣きたくなったり、うまくいかずもがいていたこともあったそう。そんなことを先輩に相談すると、こんな回答があったと書かれてありました。
どうして先輩たちは、こんなつらい思いをしても涼しい顔して仕事していられるんだろう?
あるとき、先輩に思い切ってきいてみた。そうすると「みんな、演じているんだよ。会社の一員を。」と、教えてくれた。
(『がんばらないことをがんばるって決めた。』より引用)
これは私も太めの付箋を貼ってしまったくらい共感! 怒られているのは、自分ではなく、会社の看板を背負った私。「私が悪いんだ……」「もっと私が頑張らないと〜」と思うのですが、なんだかんだで社員なのだから、“株式会社〇〇の私”なんですよね。
36歳を過ぎた私も、いつの日からか、自然とそう思えるようになりましたが、新人のころはそれもわからず、がむしゃらに自分の力だけでなんとかしようとしていました。「あぁ〜これを新卒時代に読んでおきたかった!」と感じたのでした。
どうやったら「自己肯定感」は上がるの?
社会に出ると、ぐいぐい下がってしまう「自己肯定感」。
私は価値のない人間なんだ……、こんなこと思うのは私だけ……、と自己肯定感が下がっていくと、自己表現もできなくなってしまいます。そんな悩みを抱える人もたくさんいるようで、2018年に内閣府が発表した「我が国と諸外国の若者の意識に関する調査」によると、日本の若者の自己肯定感が低いなんて結果も出ています。
どうやったら自己肯定感って上がりますか?
考えるOLとしてTwitterを始めてから、一番多く質問されたことだ。
私もたくさん悩んできたからこそ、そんな質問にはまっすぐにこう答えたい。
「自分を大切にしてくれない人とは離れる」ことだ。
(『がんばらないことをがんばるって決めた。』より引用)
自己肯定感が低いから上げよう! と無理するのは禁物。どうしたら自分らしくいられるか? そんなことを考えながら、自分に合った場所に移動するのが大事なんですね。
考えるOLさんの言葉は、悩んでいる人だけでなく、無意識に自己肯定感が下がる場所にいる人もハッとさせられる、そして元気になるような言葉がたくさん散りばめられていますよ。
逃げや負けなんてことはないよ
「でも、それって逃げることじゃないの?」と思う人もいるでしょう。『がんばらないことをがんばるって決めた。』の最後にはこのような言葉が書かれてありました。
雨が苦手なら、大きな屋根の下に。
暑さが苦手なら、緑道の涼しい木陰に。
逃げているのではない。自らの意思で、咲ける場所を探すことも立派な努力だ。
(『がんばらないことをがんばるって決めた。』より引用)
今までは、どんな場所でも頑張っていればなんとかなる時代でした。
先行きが不明瞭な現代においては、頑張れる場所を探すことが何より大事なのだと感じます。一度の人生、何を頑張りたいのか? 誰と頑張りたいのか? 頑張ることがダメなのではなく、本気を出せる場所や自分の居場所を見つける努力がまずは大切なのだと思います。
今悩んでいる方だけでなく、希望に満ちた新入社員の方にも、転ばぬ先の杖だと思ってぜひ『がんばらないことをがんばるって決めた。』を読んで欲しいです。今すぐにはわからなくても、わかる時がきっと来る、役立つ言葉がたくさんある、そう感じさせてくれる一冊でした。
【書籍紹介】
がんばらないことをがんばるって決めた。
著者:考えるOL
刊行:KADOKAWA
今日も会社に行けなかった。まあいいか。生きてるし。Twitterで15万人が共感。不幸なわけじゃない、でも毎日どこかモヤモヤする…そんな社会人に贈る、ありのままの人生をゆるやかに生きるためのヒントがつまったエッセイ。