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2022/6/29 21:45

自分の頭で考えてますか?『見下す力』で”壁の時代”を生き抜く術を学ぶ

コンパートメンタライゼーションという言葉がある。いくつもの小さなグループを作り、お互いの横のつながりを断ちながら独立させる、コンパートメントで仕切られたような形の組織という意味だ。

 

壁の時代

「独立自己帰結型バブル的組織」みたいな言い方もできるだろうか。コンパートメンタライゼーションは諜報機関とか軍事関連機関の中で用いられることが多い。他のグループとの関係性が希薄になるため、同じグループのメンバー間の絆はぐっと強く深くなる。そういう環境に身を置く時間が長くなるにつれ、やがて自分のグループが世界のすべてとなり、それ以外のものに対する興味がなくなっていく。

 

今の日本の姿は、まさにこういう形になっている。そう語るのは『見下すことから始めよう』(山田玲司・著/KKベストセラーズ・刊)の著者、山田玲司氏だ。無数に存在するグループは、世代感覚を基にした属性という壁で分割される。本書は、現代日本を“壁の時代”と定義し、風俗史や時代精神を軸にしながら論を進めていく。

 

ノリについていけないやつは出禁

今の時代、満足のいく暮らしを送っていると思っている人たちは圧倒的少数だ。そんな世の中になってしまった理由は何か。ディストピアめいた時代を少しでも楽しく生きるためにはどうしたらいいのか。著者は次々とテーマをぶつけてくる。70年代の日本人は公害や労働格差、受験戦争や自殺など、社会のダークな要素に対する意識が高く、知恵をしぼって解決しようという気概もあった。しかし、時代と共に共通意識は徐々に変化していった。

 

ところが、80年代に入りバブル景気に向かっていく中で、世間はその「問題」を語らなくなっていった。「社会問題を考える」というのが「ダサいこと」になったのだ。そして、「すべての問題」は温存され、肥大化し、ある日牙を剥いた。

『見下すことから始めよう』より引用

 

筆者にとっての80年代は大学入学から就職、そして最初の転職という流れの時代だった。確かに、あのころ上の世代の人たちはすべて浮かれていた。時代ならではのノリについていけず、漠然とした危機感を覚えていた人たちは、どんな場であっても“出禁”のような扱いを突き付けられたような気がする。

 

=見下すことの意味=

そして1991~1993年にかけての時期、バブルが崩壊した。同時に、すでに芽が出始めていたコンパートメンタライゼーションの進化を加速させるウィンドウズ95というツールが現れた。

 

問題が解決されることのないまま、進歩したのはインターネットのインフラだった。この技術は人々を「自分だけの世界」に連れ出すことになった。お茶の間でみんなで観ていたテレビはその役割を終え、情報は各個人が選択し、交流する時代になった。つまり、自分の興味のないモノや人は「世界から消えた」のだ。

『見下すことから始めよう』より引用

 

こうしてできた“壁の時代”は、以降30年近くも続いている。もうそろそろ、外側に目を向けてもいい頃かもしれない。だからこそ、山田氏は言う。

 

まずは、これまで信じて「従わされてきたモノ」を一度切り離して、すべてを「見下す」ことから始めてみよう。考えずに従っていても大丈夫だった時代は終わろうとしているのだ。

『見下すことから始めよう』より引用

 

 

現代日本史のコンテンツ

章立てを見てみよう。

 

プロローグ:「壁」の時代

第1章:壁を知る
第2章:壁を作る
第3章:壁の外に出る
第4章:壁を壊す

エピローグ:「安心」という罠 「不安」という燃料

 

山田氏は、本書で「現代日本のコンテンツをめぐるクロニクル」を中心的に描いたと語っている。たしかに、「オタク/マイルドヤンキー」「メンヘラ」「エヴァンゲリオン」「アバター」といった時代を彩るさまざまなキーワードが使われ、巻末には時系列的にまとめられたチャートが示されている。こうした流れやチャートで、それぞれの時代を自分ごとの年代記としてとらえてみるのもいいだろう。

 

「中二」のシンボリズム

とあるインターネット辞書には、「中二病」という言葉の語感についてこんな文章が記されている。“思春期の恰好つけたい年頃の少年少女にありがちな、空想や自己愛や全能感が生み出す、奇矯で珍妙な言動や嗜好のこと”

 

どの世代の人であっても、中二病的体験はあるはずだ。ただ、生きる時間が長くなるにつれてその感覚は少しずつ剥がれていく。特に懐かしくはないが、あえて否定する気にもならない。ただ、何らかのきっかけで皮膚感覚を伴いながら甦る。

 

周囲を見回してみてください。同じ世代も上の世代も、そしてちょっと下の世代も含め、あまりにもつまらない大人が多いと感じることはありませんか? 妄信しているものはありませんか? そして、「見下すべきもの」はありませんか? そのあたりを確認したり、中二病的感覚を追体験したりする意味でも、じっくり読み込みたい一冊だ。

 

【書籍紹介】

 

見下すことから始めよう

著者:山田玲司
刊行:KKベストセラーズ

現代日本は、ある特定の「世代」しか知らないコンテンツであふれている。各世代は「壁」によって分断され、その世代の中でも、気に入らない人種や理解できない人種との間には「壁」が生まれている……。特に年上世代は、若者たちを理解しようとさえせずに「当たり前」や「昔の常識」を押し付け、「同調圧力」で若者たちの人生を奪おうとしている。こんな時代をどう生き延びていけばいいのだろうか? まずは、これまで信じて「従わされてきたモノ」を一度ブロックして、すべてを「見下す」ことからはじめてみよう。考えずに従っていても大丈夫だった時代は終わろうとしているのだ。

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