2175年。今から百数十年後の未来では、技術はどのくらい進歩して、人々はどのような暮らしをしているのでしょうか。漫画『AIの遺電子 Blue Age』(山田胡瓜・著/秋田書店・刊)では、2175年の日常が描かれています。どのような暮らしが想定されているのか覗いてみました。
2022年の現状
2022年の現代では、多くの文化が「配信」という形でまとめられ始めています。映画も音楽も書籍もすべてネットで配信され、聴き放題、見放題、読み放題などというサブスクリプションスタイルも増加しており、人々は以前に比べるとかなり格安に文化を楽しめるようになっています。
また、メタバースやオンライン会議システムが活用され、家にいながらにして多くの人と交流できるようになりました。医療の現場でもオンライン診療や再生医療を活用した施術が行われるようになり、人々はより快適に暮らせるようになっています。
2175年はどんな世界?
『AIの遺電子 Blue Age』の舞台は、2175年の病院です。この世界ではヒューマノイドという、人間にかなり近いロボットがヒトと共に暮らしています。病院にはヒューマノイド科というロボット専用の窓口もあるほどです。
この世界では、ヒューマノイドもヒトは、一見するだけでは判別できないくらい似ています。ヒューマノイドもヒトと同じように老化する肉体で暮らしていて、寿命もあるからです。とはいえ、ヒューマノイドは体調が悪化したら新しい体に脳を入れ替えることができるので、ヒトよりも少し便利そうです。
ヒトがロボットに恋をする
『AIの遺電子 Blue Age』の世界では、ヒトがロボットに恋をすることがあります。ヒューマノイドには人間に近い喜怒哀楽の表現も存在するため、ヒトは恋愛感情を抱きやすいのでしょう。現代でもボーカロイドとの結婚を真剣に考えるヒトが出始めていますが、今後さらにそうした傾向が強まるのかもしれません。
スティーブン・スピルバーグ監督の映画『A.I.』も、ロボットとヒトの共生社会を描いたものでした。そこでは、ヒトとヒューマノイドが一緒に生活しています。本書でもヒトの赤ちゃんと共に育てられるヒューマノイドの赤ちゃんが出てきます。ヒューマノイドの出現によって、社会や家族の人間関係はより複雑になっているのです。
電子書籍にも絶版が出る
作中に、電子書籍で絶版になった本を紙の書籍で見つけるというシーンがあります。2175年の世界にも紙の書籍は存在しているのがうれしかったのですが、電子書籍のほうは絶版になり、読めなくなってしまう場合があるようです。
2022年の現代では、電子書籍が絶版になるというような表現は聞いたことがありません。しかし、ある日突然販売が中止になっている本は時々見かけます(諸事情で配信が停止されているのか、それとも絶版なのかはわかりません)。未来では絶版がもっとはっきり頻繁に行われ、絶版電子書籍にプレミア価格が付くかもしれません。
未来の感染症はネット経由
2175年にもウイルスによる感染症の流行はあります。しかしウイルスとは、コンピューターウイルスのことです。PCがウイルス感染するように、ヒトもヒューマノイドも違法サイトなどにアクセスした際にウイルス感染をしてしまうのです。ひとたび感染すると自分の意思とかけ離れた行動をして迷惑をかけることがあるため、ウイルスが駆除された後も周囲からは冷酷な差別を受けてしまいます。
漫画に描かれた2175年では、意外なほどに人々はリアルに対面し、交流していました。むしろ2022年のほうが自宅からオンライン会議に参加していて未来的かもしれません。けれど、現代にはヒトとデートするヒューマノイドはまだいません。孤独を感じながらひとり暮らしをしている人も多いので、登場が待たれます。
【書籍紹介】
AIの遺電子 Blue Age
著者:山田胡瓜
発行:秋田書店
2175年、ヒューマノイドも治す研修医・須堂光は、AIを診て、ヒトを見る。子供を授かり喜ぶ母親、電脳ウイルスに感染されたとされる少年、医療用ユニットに入り生き長らえるAIを嫌う頑固な老人…。様々な患者と向き合う至極のストーリー5篇を収録。超大型アップデートを遂げた、『AIの遺電子』シリーズ最新作!