近ごろはコスパだけでなくタイパが重要視されるようになりました。タイパとはタイムパフォーマンスの略語で、かけた時間に対する効果のことを意味します。このタイパを良くするには、どうしたらいいのでしょうか。
時間をトクするということ
格差社会と言われているなか、時間は平等です。たとえば4分かかる遊園地のジェットコースターに乗る際、お金持ちもそうでない人も、同じように4分間を消費します。3時間待ちの行列であった場合も、公平に3時間を消費して並んで待つしかありません。
しかし、3000円を払えば行列の先頭に行けるという優先チケットが売り出されたらどうでしょう。お金持ちや、時間に余裕のない人は、その優先チケットを購入し、待ち時間を省略することができます。その場合彼らはお金の力で3時間をトクしたことになります。
時間には限りがある
最近はできるだけ時間を短縮することが重要視されています。「時短」というワードもしばしば使われています。「働きかた改革」でも労働時間の短縮が呼びかけられていました。確かに、何かにかける時間が短くなれば、その分、浮いた時間で他のことができて有意義です。
『限りある時間の使い方』(オリバー・バークマン・著/かんき出版・刊)は時間について、さらに深く向かいあっている本です。人間に与えられた時間は80歳まで生きたとしたら約4000週しかないので、その限られた時間をどう生きるかという「人生と時間」について、先人の知恵も交えて考察しているのです。
スマホをモノクロにする
本には、小さなことに気を散らさずに快適に暮らす方法が紹介されています。なかでもスマートフォンを白黒モードにするというのには驚かされました。実際に試してみたのですが、さまざまな色で主張していたアイコンたちが、モノクロの世界になった途端一気に静まりかえったように感じたのです。
モノクロにしただけで、スマートフォンにはとても落ち着いた雰囲気が漂い、それと同時に私の心のざわつきも少なくなった気がしました。これからも、作業に集中したい時はモノクロモードにしようと思います(iPhoneの場合、「設定→アクセシビリティ→画面表示→カラーフィルタ」でモノクロになります)。
時間を詰め込まない生きかた
時間を有意義に使うことと、タスクや作業を詰め込むこととはまた別のことなのだと、本の中では繰り返し述べられています。確かに、浮いた時間でまた仕事を増やしてしまったら、休むことはできません。
この本の著者は、イギリスの新聞記者であるオリバー・バークマンさんですが、エピソードのひとつとして日本の高野山での出来事を取り上げています。かつて真言宗の僧侶を目指し、ここで修行をしたアメリカ人男性がいたそうです。
現実に集中するということ
彼は冷水を浴びるという水行に耐え続けていたのですが、ある日、精神を集中させれば苦痛が減るということに気づいたそうです。現実をしっかり受け入れたうえで水を浴びることが大切だったのです。
著者は、この水行のように私たちは現実に向き合い、やるべきことに集中するべきだと主張しています。私たちの周りにはネットやテレビやゲームなど、気を逸らすことができるものがたくさんありますが、そちらに逃げてはいけないのだと。
逃げないことこそタイパ
確かに私たちはやらなくてはならないことに気づかないフリをして、ダラダラとスマートフォンをいじってしまうことがありますが、それは、時間を無駄遣いをしているようなものです。やるべきことをさっさと終わらせることこそ、タイパが良くなる最も効果的な方法なのかもしれません。
本の中では、自分が本当にやらなくてはならないこととはなんだろう、という深い問いかけまでもがされています。自分が時間を浪費していないか、そして時間を大切に使うにはどうしたらいいか、改めて考えてみるには、この本はとてもいい機会になるはずです。
【書籍紹介】
限りある時間の使い方
著者: オリバー・バークマン
発行:かんき出版
アダム・グラント、ダニエル・ピンク、カル・ニューポート他、NYタイムズ、WSJ絶賛の全米ベストセラー! 人生は「4000週間」限られた時間をどう過ごすか!?