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お金
2023/4/21 21:30

お金を稼ぐのに必要なのは投資技術や情報分析ではない。マインドセットだ!! 『サイコロジー・オブ・マネー』

フリーランスという立場になって30年近くが経った今でも、夜中に目が覚めた時に脳裏をよぎる恐れがある。それは、青色申告会に開業届を出した日と変わらない。

ふとした瞬間に訪れる恐れ

フリーランスという働き方には何の保証もないし、前の年と全く同じレベルの収入があるかもわからない。毎年確定申告できっちりした数字を出すことになるので、ある程度は安心できるのだが、それでも漠然とした恐れにとらわれることがある。

 

いや、夜中だけじゃない。テレビを見ている時であれシャワーを浴びている時であれ、ふとした瞬間に訪れる思いに、しばらくの間とらわれたままになってしまうこともある。決してポジティブではないので、こうしたことは極力少なくしたい。そんな筆者にピンポイントに刺さった一冊を紹介する。

 

富のマインドセット

『サイコロジー・オブ・マネー』(モーガン・ハウセル・著、児島修・訳/ダイヤモンド社・刊)には“一生お金に困らない「富」のマインドセット”というサブタイトルが付けられている。筆者はこれまで、お金に関するさまざまな本を読んできた。その数は、世間一般のアベレージを軽く超えていると思う。

 

著者ハウセル氏がサイコロジー・オブ・マネーと呼ぶものは、「何を知っているか」よりも「どう振る舞うか」が重要になる“ソフトスキル”だ。投資テクニックや金融情報分析に代表されるハードスキルに対し、ソフトスキルという言葉で表されるのはずばり“人間心理”にほかならない。この本には、その人間心理を最大限に活かしながらお金との賢い付き合い方を探っていく方法が記されている。

 

異なるレンズを通した異なる見え方

全20章から成る本書には、お金とうまく付き合って大きな財産を残した人、間違って破産した人、成功した人も失敗した人もたくさん出てくる。お金に関する成功と失敗を決定づける要因は何なのか。

 

つまり私たちは、それぞれの体験に基づいた、異なるレンズを通して世界を見ているのだ。誰もが、世界の仕組みを理解していると思っている。しかし、一人ひとりは世界のほんのわずかな部分しか経験していないのである。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

童話を読んでいるような寓意性

実在する/した人たちの生き方を通して投資や貯蓄といった経済行動を解き明かしていくフォーマットは、グリム童話とかイソップ童話を読んでいるようなイメージだ。たとえば、「お金持ちがとんでもないことをしでかすとき」というサブタイトルが付けられた第3章「決して満足できない人たち」に、次のような文章がある。

 

要するに、他人と収入を比較してもきりがないということだ。比較をしている限り、誰も頂上には到達できない。これは決して勝つことができない戦いだ。唯一、勝てる方法は、最初から戦わないことである。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

「そんなこと考えたこともない」と言い切れる人はいないんじゃないだろうか。自分と比較すべき対象は、昔の姿であれ今の姿であれ、そして将来の姿であれ、あくまで自分でしかない。完全に異なる存在である誰かと自分を比べること自体がナンセンスなのだ。

 

究極の自由とは

さらに紹介していこう。第7章「自由」には、給料や収入と自分の関係にまつわる次のような一文がある。

 

どんなに高い給料よりも、どんなに大きな家よりも、どんなにステータスのある仕事よりも、「好きなときに、好きな人と、好きなことができる」生活を送れることのほうが、人を幸せにするのである。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

今の筆者には特に刺さる言葉だ。こういう風に生きたいからあえてフリーランスという働き方を選んだのだから、時折脳裏をよぎる妙な雑音に心を折られるなんて、そもそも間違っている。

 

目に見えないものの金融的価値

第8章「高級車に乗る人のパラドックス」からは、次の一文を紹介したい。

 

真の富とは目に見えないものだ。富とは、購入しなかった高級車であり、買わなかったダイヤモンドである。身につけていない時計、着ていない服、乗らなかったファーストクラスの座席である。富とは、目に見えるものに変換されていない金融資産のことなのだ。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

書くだけなら簡単だ。そう言う人もいるだろう。しかし、超有名ベンチャーキャピタルのパートナーであり、アメリカで最も利用者の多い投資アドバイスメディアおよび『ウォール・ストリート・ジャーナル』紙でコラムニストを務め、『ニューヨークタイムズ』紙からの受賞歴がある人物が綴ると、リアリティとして完全に自分に投影することはできないものの、かなりの説得力が宿る言葉となる。

 

「何を知っているか」ではなく「どう振る舞うか」

この本の実用性の高さは、すべてのエッセンスが詰め込まれた第19章「お金の心理」に集約されている。著者ハウセル氏は語りかける。

 

私はあなたに具体的なアドバイスをするつもりはない。普遍的な真理を教えたいのだ。

『サイコロジー・オブ・マネー』より引用

 

著者ハウセル氏がサイコロジー・オブ・マネー=ソフトスキルと呼ぶものは、“お金に関する普遍的な真理”という言葉にも置き換えられる。重要なのは「何を知っているか」ではなく、「どう振る舞うか」だ。これだけ冷静なトーンで語りかけられると、耳を傾けないわけにはいかない。

 

【書籍紹介】

 

サイコロジー・オブ・マネー

著者:モーガン・ハウセル
発行:ダイヤモンド社

世界が絶賛! 超話題のマネー本がついに上陸。破産した大富豪と10億円もの資産を築いた地味な清掃員。2人にあった違いとは? 資産を築けない人の特徴、そしてお金を手にし続けるために大切なマインドセットを紹介する一冊。もうこれで、一生お金に困らない!

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