都市部で生活していると、鉄道を利用することが非常に多い。一方で、世の中には利用しにくい駅も存在する。列車の本数が少ない、最近ブームのローカル線でしょ? いやいや、そんな生易しいものではないのだ! なんと、列車に乗るホームにたどり着くことすら容易ではないという、とんでもない駅があるのだ!
鉄道以外では到達が難しい駅
“秘境駅”という言葉をご存じだろうか。
牛山隆信氏が広めた用語で、その特徴としては、駅周辺に民家がない、列車本数が少ない、1日の利用者数が極端に少ない、鉄道以外の手段でアクセスすることが難しいなどが挙げられる。
秘境駅は全国各地に点在している。なかでも天竜川に沿って険しい山道に線路が敷かれたJR飯田線は、秘境駅の宝庫として鉄道ファンに人気の高い路線だ。旅行雑誌の定番『旅の手帖/2016年7月号』(旅の手帖編集部・著/交通新聞社・刊)にはそんな飯田線の秘境駅がいくつか紹介されているので紹介しよう。
飯田線は秘境駅のメッカ
“キングオブ秘境駅”の一つが、田本駅だ。何しろ、徒歩15分、しかも山道を下っていかないとホームに着けないというから恐ろしい。しかもその道は舗装されておらず、電車に乗るというよりは山菜採りに行くための道のようだ。日本屈指の狭く険しい“駅前通り”と言っていい。
ホームは崖と川に挟まれた場所に建設されていて、駅のホームとは思えない。しかも、駅名標がオレンジのカラーということは、日本の大動脈である東海道新幹線を運行するJR東海が運営している駅なのだ。大勢の人で賑わう新幹線駅と、山間に佇む飯田線の秘境駅、あまりのギャップに唖然とさせられてしまう。
結婚式が行われた秘境駅
小和田駅は、なんと駅舎内で結婚式が行われたこともあるユニークな駅。かつては、駅周辺に集落があったため、駅舎には駅員もいて切符販売の窓口もあった。しかし、佐久間ダムの建設による人々の離村に伴い無人化され、秘境駅になってしまったのだ。
駅舎は昭和初期に完成した木造。そして静岡県、愛知県、長野県の3県の県境に位置する山間にあり、夜になると暗闇に包まれる。「旅の手帖」には夜の写真が掲載されているが、夜にこの駅に1人で降り立つのはかなり勇気が要りそうだ。
青春18きっぷで訪問がオススメ
格安旅行には欠かせない、JRの普通列車が乗り放題になる冬の青春18きっぷが発売されるシーズンが間近に迫っている。秘境駅はぜひとも青春18きっぷで訪問したい。なお、秘境駅は北海道や東北にも多い。これからのシーズン、極寒の秘境駅で雪まみれになりながら一人で過ごすというハードな旅も悪くないかもしれない。海外旅行にいくよりも、遥かに非日常的な気分を存分に楽しめるはずだ。
(文:元城健)
【参考文献】
旅の手帖/2016年7月号
著者:旅の手帖編集部
出版社:交通新聞社
今月号は「青春18きっぷ」の大特集です。今年は北海道新幹線が開通し、新たに「北海道新幹線オプション券」も登場しました。そのオプション券を使った道南・道央の旅を楽しんだり、来年春に登場予定のJR東日本とJR西日本の豪華列車のコースをちょっと先取りしてみたりと、全24のモデルコースをご紹介。JR全線掲載、絶景車窓コメント付きの「全国鉄道路線図」のとじ込み付録もついてます。
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